馮銓

馮銓（ふう せん）：激動の時代を生き抜いた官僚・能書家

馮銓（1596年 - 1672年）は、明末から清初にかけて活躍した官僚であり、優れた能書家としても名を残しています。字は振鷺といい、その生涯は激動の時代を象徴するかのようです。

若き日の才能と挫折

馮銓は、涿州（現在の河北省）の出身で、父は万暦17年の進士である馮盛明でした。父から学問の手ほどきを受け、書道に優れ、若くしてその才能を発揮しました。当時、周延儒と並んで美少年として知られていたと伝えられています。18歳で科挙に合格し、進士となります。翰林院に進み、将来を嘱望されますが、同僚との不和、さらには父の投獄という困難に直面します。

魏忠賢への傾倒と権力掌握

遼陽が後金軍に占領された際、父が責任を問われ投獄されるという危機に陥ります。馮銓は、同僚に助けを求めますが、冷遇されます。窮地に陥った馮銓は、宦官である魏忠賢に助けを乞い、その同情を得て父を救うことができました。この一件以降、馮銓は魏忠賢に忠誠を誓います。

魏忠賢の信任を得た馮銓は、天啓5年（1625年）には、策謀をめぐらし、熊廷弼を処刑に追い込みます。その後、礼部左侍郎、東閣大学士と異例の速さで昇進し、国政を担う立場となります。しかし、魏忠賢一派の崔呈秀との対立により、翌年には職を解かれてしまいます。免職後も恨み言一つ言わなかったとされています。

没落と清朝への仕官

魏忠賢が失脚すると、馮銓もその連座により、懲役3年の判決を受けます。しかし、明朝が滅亡すると、清朝の摂政王ドルゴンの招きに応じ、清の大学士に任命され、再び政界に復帰します。

清朝での活躍と晩年

清朝では、『明史』編纂の総裁を務めるなど、文化事業にも貢献しました。その後、『清太宗実録』の編纂にも携わり、太傅、太子太保と位を重ねました。ドルゴンの死後、一時失脚するものの、後に太師に任じられ、その才能を高く評価されます。晩年は、その功績を称えられ、文敏と諡されました。康熙11年（1672年）に病没しました。

まとめ

馮銓は、明末から清初の激動の時代を生き抜き、それぞれの王朝で要職を歴任した稀有な人物です。その生涯は、時代の流れに翻弄されながらも、自らの才覚と処世術を駆使して、権力の中枢で活躍した姿を示しています。特に、明朝での魏忠賢への傾倒、清朝でのドルゴンへの仕官という大胆な転身は、後世の歴史家たちに様々な議論を呼んでいます。

参考文献

『崇禎長編』
『明史』
『清史稿』
『造化元鑰』

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