騎西城

騎西城は、埼玉県加須市騎西地域に位置する日本の城です。その歴史は古く、築城時期は不明確ながらも、上杉氏配下の太田氏によって築かれたという説があります。かつては「私市」とも表記され、「根古屋城」や「山根城」とも呼ばれていました。現在では、残存する土塁が「騎西城土塁跡」として加須市の指定史跡となっています。

概要

騎西城は、東西約400メートル、南北約400メートルの規模を持ち、西端に本丸と二の丸が南北に配置され、東には天神曲輪、馬屋曲輪、そして二つの丸と呼ばれる曲輪が続きます。東端の丸には大手門が設けられていました。城郭全体の規模は東西約255メートル、南北約210メートルです。1987年と1988年の発掘調査で、本城との間の堀が全国的にも珍しい障子堀であることが明らかになりました。現在、高さ約3メートルの土塁が唯一の遺構として残っており、「私市城阯」の石碑が建てられています。

歴史

築城から廃城まで

騎西城の歴史は、1350年頃に戸室親久が城主を務めたとされることから始まります。15世紀には、古河公方足利成氏と上杉氏の勢力争いの舞台となり、佐々木氏が城を守っていました。その後、小田顕家が城主となり、忍城主成田親泰の子、助三郎（朝興）を養子に迎えます。

1560年、長尾景虎（上杉謙信）が関東の北条勢を攻略する際、朝興も兄の成田長泰と共に参陣しましたが、後に長泰が上杉氏に反旗を翻し、朝興もそれに同調します。1563年、上杉輝虎（謙信）は騎西城を攻め、城主の成田助三郎（朝興）が自害または降参したとされ、城は焼き払われたと言われています。その後、1574年に上杉謙信は再び騎西城を攻撃し、徹底的に焼き討ちしました。

1590年、豊臣秀吉による小田原征伐の際、騎西城は戦うことなく降伏し、北条氏滅亡後は松平康重が城主として2万石を領しました。その後、大久保忠常を経て、子の忠職が城主となりましたが、1632年に忠職が美濃国加納城へ移封となり、騎西城は廃城となりました。

模擬天守の建設

現在、騎西城として広く知られている天守風の建物は、1974年に建設された模擬天守です。実際の騎西城は平城であり、天守は存在しませんでした。この模擬天守は、城下町としてのイメージを定着させるために建設されたもので、当初は婦人会館として利用されていました。現在は、郷土史料展示室として活用されており、特定のイベント時のみ一般公開されています。

出土品

騎西城跡からは、茶の湯文化を物語る多くの遺物が出土しています。特に、15〜16世紀には瀬戸焼や美濃焼の天目茶碗が多数見つかっており、当時の武士たちが風流な遊芸や教養を身につけていた様子が窺えます。16世紀末から17世紀前半には、黄瀬戸鉢や志野向付、織部黒沓茶碗など、様々な桃山陶器が出土しており、茶の湯が広く浸透していたことがわかります。また、十六間筋兜は、鉢や吹返などが着いた状態で発見された珍しい例で、当時の戦国武士の姿を今に伝えています。

信仰・民俗

騎西城跡の発掘調査では、信仰に関する出土品も多数発見されています。護符や呪符、舟形、位牌、銅鋺、数珠などがその例です。また、井戸状遺構からは、四角柱型の蘇民将来符が5体発見されました。これは、武塔神と蘇民将来の伝説に由来するもので、疫病除けの信仰を表しています。騎西城の蘇民将来符は、八坂神社や信濃国分寺などでも祀られているものと同じ種類です。

騎西（私市）城武家屋敷跡墓址

騎西城武家屋敷跡からは、戦国時代と推定される30数基の墓が見つかっています。これらの墓は、楕円形や長方形の土葬墓で、集石や蔵骨器は伴いません。出土遺物には、人骨の他、かわらけ、銭貨、板碑などがあります。人骨は、多くが頭部を北方に向けて埋葬されており、これは近世まで行われていた風習です。

墓地は北群と南群に分かれており、北群からは20数基、南群からは10数基の墓が確認されています。南群からは、人骨の胸付近に置かれた板碑が出土しており、阿弥陀種子と光明真言が刻まれています。

その他の出土品

その他にも、小型で丁寧に作られた仏具と思われる小杯や、黒漆塗りの小型壺などが出土しています。これらの遺物は、当時の信仰や生活を知る上で貴重な資料となっています。

アクセス

- 車: 東北自動車道加須インターチェンジより約15分
- バス: 東武伊勢崎線加須駅南口バスのりば、またはJR高崎線鴻巣駅東口1番のりばから朝日バスに乗車し、騎西城停留所下車、すぐ。

脚注

(省略)

外部リンク