骨鰾上目

骨鰾上目（Ostariophysi）

骨鰾上目は、魚類の中で2番目に大きなグループであり、骨鰾類と呼ばれる魚種で構成されています。現生魚類の約28%にあたる約8,000種もの多様な魚種を含み、淡水魚に限るとその割合は約68%にも及びます。南極大陸を除くほぼ全ての大陸に分布し、食用、釣り、観賞用、研究対象として、私たち人間と深く関わっています。

分類

骨鰾上目の魚類は、警報物質とウェーバー器官という2つの重要な特徴を共有しています。分類上は、前骨鰾系 (Anotophysi) と 骨鰾系 (Otophysi) の2つの系統に大別されます。

前骨鰾系: 警報物質を持つものの、ウェーバー器官が原始的な形態をしています。ネズミギス目がこの系統に属し、約37種が存在します。ネズミギス科やサバヒー科など、海産種も含まれています。

骨鰾系: ウェーバー器官が高度に発達したグループです。以下の4つの目が含まれます。
コイ目: 約4,200種が生息し、魚類の中で2番目に大きなグループです。淡水魚類最大の科であるコイ科を含みます。
カラシン目: 南米とアフリカに少なくとも2,300種が分布しています。観賞魚として人気のテトラもこの目に属します。
ナマズ目: 約3,700種が世界中に分布しています。デンキウナギ目と合わせてSiluriphysiとして扱われることもあります。
デンキウナギ目: 南米から中米にかけて少なくとも208種が生息しています。ナマズ目の下位分類とされることもあります。

骨鰾亜区

分子系統学的な研究により、従来の骨鰾上目の単系統性に疑問が呈されています。ネズミギス目は、コイ目以下の骨鰾系のグループよりも、ニシン目とより近縁であることが示唆されています。そのため、ネズミギス目とニシン目をまとめた骨鰾亜区（Ostarioclupeomorpha）という新しい分類群が提唱されています。骨鰾上目とニシン上目は姉妹群の関係にあると考えられています。

進化

骨鰾類の化石は、前骨鰾系・骨鰾系ともに白亜紀初期から発見されており、オーストラリアを除く全ての大陸で産出しています。現在では、南極大陸を除く全ての大陸に分布しています。

骨鰾系の祖先は、ジュラ紀（約1億9500万～1億3500万年前）のパンゲア大陸分裂前の淡水環境に起源を持つと考えられています。大陸の分裂に伴い、現生する4つの目へと系統が分岐しました。ローラシア大陸とゴンドワナ大陸の分裂により、それぞれコイ目とカラシン目に繋がる系統が分岐し、カラシン目の祖先は、昼行性のカラシン目と夜行性のSiluriphysi（ナマズ目とデンキウナギ目）に分かれました。

Siluriphysiは電気受容器など、多くの特徴を持ちますが、その起源はアプト期（白亜紀中期、約1億1000万年前）のゴンドワナ大陸が南アメリカとアフリカに分裂する以前に遡ります。ただし、デンキウナギ目などの初期のグループが南アメリカにのみ存在することから、Siluriphysiの起源はゴンドワナ大陸の西部（現在の南アメリカ）であるか、分裂後にアフリカで絶滅した可能性が考えられています。

多様性

骨鰾上目は、棘鰭上目に次いで条鰭綱の中で2番目に大きなグループであり、5つの主要な系統を含み、非常に多様な魚種で構成されています。Nelson (2016) によると、5つの目に現生魚種のおよそ28%にあたる1,347属10,388種が記載されています。コイ科、カラシン科、ロリカリア科の3科で全体の過半数を占めています。

骨鰾類は淡水魚の約68%を占めており、南極大陸を除く全ての大陸と、グリーンランド、ニュージーランドを除く大きな島々に生息しています。また、約123種の海産種（サバヒー科、ネズミギス科、ハマギギ科の大部分、ゴンズイ科の半分）も存在します。

骨鰾類には、体重300kgに達するメコンオオナマズのような巨大な魚から、全長わずか12mmのダニオネラ・トランスルーシダのような超小型の魚まで、実に多様な種が含まれています。ヒレナマズ科のように空気中の酸素を直接呼吸できる種や、水から出てもある程度生きられる Phreatobius cisternarum などの種もいます。デンキナマズ科やデンキウナギ目は発電器官を持っています。

形態的特徴

ネズミギス属を除くほとんどの種は浮き袋を持っています。浮き袋は通常2つの気室に分かれており、小さい前室は部分的に、または全体が銀白色の被膜で覆われています。後室は前室よりも大きいですが、いくつかのグループでは縮小しているか、完全に欠落している場合があります。

魚体表面の細胞には、unculiと呼ばれる微細な棘状の突起が存在します。この構造は骨鰾類に特有のものです。

骨鰾類の多くは、警報物質と呼ばれる特有の物質を持っています。これは、魚が傷ついた際に放出されるフェロモンで、同種や近縁種に危険を知らせる役割を果たします。ただし、警報物質を持っていても恐怖反応を示さない種や、警報物質も恐怖反応も持たない種も存在します。

ウェーバー器官

骨鰾系の最も重要な特徴の一つが、ウェーバー器官を持つことです。この器官こそが、骨鰾系が繁栄した大きな要因と考えられています。

ウェーバー器官は、聴覚器と浮き袋を繋ぐウェーバー小骨と呼ばれる一連の小さな骨で構成されています。この構造によって、浮き袋の振動（音）が内耳に伝わり、優れた聴覚を得ることが可能になります。ウェーバー小骨は、浮き袋の内壁と、左右の耳の球形嚢に繋がるリンパ管に隣接するY字形のリンパ腔を連結しています。

前骨鰾系では、前から3番目までの椎骨が特殊化し、1つまたはそれ以上の肋骨と連結されます（原始的なウェーバー器官）。骨鰾系では、前から4番目ないし5番目までの椎骨に、ウェーバー小骨と同等の明らかな変形が見られます。

完全に機能するウェーバー器官は、浮き袋、ウェーバー小骨、前部脊柱、そしていくつかの筋肉と靭帯で構成されます。この器官の名前は、ウェーバー小骨の作用を解明したドイツの解剖学者・生理学者エルンスト・ヴェーバーに由来します。

関連項目

魚類
魚の一覧

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