高木仙右衛門

高木仙右衛門：浦上キリシタンの指導者

高木仙右衛門（たかぎ せんえもん）は、文政7年（1824年）に肥前国（現在の長崎県）で生まれ、明治32年（1899年）に75歳で亡くなった人物です。彼は江戸時代末期から明治時代にかけて、浦上キリシタンの中心人物として、その信仰を守り、伝道に尽力しました。

生涯

仙右衛門は、現在の長崎市辻町で生まれました。慶応元年（1865年）に大浦で信徒が発見された後、自宅を秘密聖堂（聖ヨゼフ堂）として提供し、浦上の伝道士として活動を始めました。

慶応3年（1867年）には、浦上四番崩れと呼ばれるキリシタン弾圧事件で、信徒82人とともに捕縛され、厳しい拷問を受けました。多くの信徒が拷問に耐えかねて転向を誓う中、仙右衛門は信仰を貫き通しました。その後、彼は浦上の庄屋の家に留め置かれ、桜町の牢獄、さらには小島の牢屋へと移送されました。この事件により、浦上や外海の数千人もの信徒が配流されることとなり、仙右衛門自身も津和野へ流刑となりました。

明治6年（1873年）に禁教令が解かれると、仙右衛門は故郷に戻り、再び伝道活動を再開します。赤痢患者の救護や孤児の救済事業に私財を投じ、教会建築にも力を注ぎました。彼の献身的な活動は、多くの人々に感銘を与えました。

仙右衛門は、自身の体験をまとめた『仙右衛門覚書』を残しており、浦上四番崩れの貴重な記録として後世に伝えられています。

祖先：高木権左衛門

仙右衛門の祖先である高木権左衛門は、天正8年（1580年）に長崎がイエズス会に寄進され、多くのキリシタンが住むようになった時代に生きていました。当時の長崎の有力者の中にはキリシタンも多くいましたが、その後、長崎住民への棄教命令が出されると、多くの人々が棄教を余儀なくされました。

長崎の代官であった末次平蔵や町年寄の高木作右衛門も棄教しましたが、それに反発した町田ジョアン宗賀や後藤トメ宗印といった人々は長崎を離れました。高木作右衛門の一族であった権左衛門もその一人で、浦上へと逃れ、潜伏しながら信仰を守り続けました。この権左衛門が仙右衛門の祖先であり、以後、浦上の高木家は隠れキリシタンを保護し続けたのです。

子孫

仙右衛門の曾孫である高木慶子は、仙右衛門の研究を行い、2004年に学位論文「高木仙右衛門に関する研究 「覚書」の分析を中心にして」を執筆しています。この論文は、仙右衛門の生涯や思想をより深く理解するための重要な資料となっています。

参考文献

赤瀬浩『「株式会社」長崎出島』講談社〈講談社選書メチエ〉、2005年7月。ISBN 4-06-258336-4。
国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典』 2巻、吉川弘文館、1980年7月。
国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典』 9巻、吉川弘文館、1988年9月。ISBN 978-4-642-00509-8。
瀬野精一郎、新川登亀男、佐伯弘次、五野井隆史、小宮木代良『長崎県の歴史』山川出版社〈県史42〉、1998年9月。ISBN 4-634-32420-2。
外山幹夫『長崎 歴史の旅』朝日新聞社〈朝日選書411〉、1990年10月。ISBN 4-02-259511-6。
長崎新聞社長崎県大百科事典出版局 編『長崎県大百科事典』長崎新聞社、1984年8月。
* 平凡社地方資料センター 編『長崎県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系43〉、2001年10月。ISBN 4-634-32420-2。

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