黄文本実

黄文本実（きぶみ の ほんじつ）

黄文本実は、飛鳥時代に活動した貴族の一人であり、その生没年は不詳です。彼の姓は、黄書と書かれることもありますが、造から連に改姓したことが記録に残っています。官位としては従五位下の地位を持ち、鋳銭司としても知られています。

経歴と業績

彼の活動が顕著に示されているのは、天智天皇8年（669年）に行われた第七次遣唐使の際です。彼はこの使節団に参加したとされ、王玄策が中天竺で転写した仏足石の図を唐の普光寺で再転写し、その後日本に持ち帰ったという伝承があります。このように、黄文本実は日本と中国の文化交流において貢献した重要な人物です。

また、天智天皇10年（671年）には、土木や建築に用いる水準器、水臬を中国から持ち帰り、これを天皇に献上したことが伝えられています。このように、彼の持ち帰った品々は日本の技術や工芸の発展にも寄与したと考えられています。

天武天皇12年（684年）には八色の姓が制定され、これにより彼は家族と共に造姓から連姓に改姓しました。この改姓は、彼の一族が新たな政治的な地位を確立するための重要なステップであったとされています。

持統天皇8年（694年）には、大宅麻呂や台八嶋と共に鋳銭司に任命され、その際の冠位は勤大弐でありました。この役職は、国家の鋳造業を管理する重要な役割を担っていました。また、都合数年後の大宝元年（701年）、大宝令の制定によって彼は従五位下となります。

さらに、大宝2年（702年）には、持統上皇の崩御に際して、穂積親王や犬上王らと共に作殯宮司として従事しました。慶雲4年（707年）には文武天皇が崩御した際、志貴皇子や小野毛野らと共に殯宮の行事を担当し、その同年の10月には大葬の際にも御装司を務めました。

文化的貢献

黄文本実は、高松塚古墳の壁画を描いた人物であるとの説も存在しています。こうした文化的活動は、彼が芸術や宗教に対する理解を深め、他者との文化交流を進める一助となったことを示しているといえます。

官歴の詳細

彼の官歴については、『六国史』に詳細な記載があります。以下のように次のような年表があります。

• - 天武天皇12年（683年） 9月23日：造姓から連姓に改姓（八色の姓）
• - 時期不詳：勤大弐
• - 持統天皇8年（694年） 3月2日：鋳銭司
• - 時期不詳：従五位下
• - 大宝2年（702年） 12月23日：作殯宮司
• - 慶雲4年（707年） 6月16日：御装司（文武天皇葬儀）

参考文献

• - 宇治谷孟『日本書紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1988年
• - 宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
• - 坂本太郎、平野邦雄監修『日本古代氏族人名辞典』吉川弘文館、1990年

黄文本実は、飛鳥時代の貴族の中でも重要な役割を果たし、多方面にわたって影響を与えた人物であるといえるでしょう。

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