1959年の日本公開映画

1959年に日本で公開された映画たち

1959年、昭和34年の日本映画界は、国内外から非常に多くの作品が公開され、観客にとって選択肢の広い活気に満ちた一年でした。この年に日本国内で商業公開された映画は膨大な数に上り、特に日本映画だけでも実に537本が封切られています。これは、当時の映画産業の盛況ぶりを示す数字と言えるでしょう。公開された作品の顔ぶせを見ると、娯楽大作から芸術性の高い作品、特定の層に向けたシリーズものまで、多様なジャンルにわたっていました。

日本映画の活況

日本映画の公開本数537本は、当時の映画産業が非常に活発であったことを物語っています。この年には、人気シリーズの新作が続々と登場しました。例えば、サラリーマンの日常を描いた「社長シリーズ」からは『社長太平記』や、シリーズ初のカラー作品となった『続・社長太平記』が公開されています。また、庶民的なキャラクターで愛された「サザエさん」シリーズも『サザエさんの結婚』、『サザエさんの新婚家庭』、『サザエさんの脱線奥様』と立て続けに公開されました。その他にも、女性を主人公にしたコメディシリーズ「お姐ちゃんシリーズ」の第1作となる『大学のお姐ちゃん』が公開され、人気を博しました。

単発の作品としても、記憶に残る作品が多く生まれています。特に、『私は貝になりたい』は、戦争の不条理を描いた力強い作品として注目を集めました。また、黒澤明監督の『野獣死すべし』は、その後の日本映画界に影響を与えた一作です。アニメーション分野では、「おとぎプロ」が手掛けた『ひょうたんすずめ』が、日本の長編アニメーションとして初めて公開された作品の一つとして特筆されます。神話の世界を描いた超大作『日本誕生』もこの年の公開です。さらに、『サラリーマン出世太閤記 課長一番槍』のように、シリーズで初めてカラー作品が製作されるなど、技術的な進化も見られました。公開リストからは、『鉄腕投手 稲尾物語』といったスポーツを題材にした作品や、『JA750号機行方不明』のような社会派サスペンス、さらには『宇宙大戦争』といった特撮作品まで、ジャンルの幅広さがうかがえます。

多彩な外国映画のラインナップ

1959年には、海外からもバラエティ豊かな作品が多数日本に紹介されました。中でもアメリカ映画は圧倒的な存在感を放っており、公開リストの多くを占めています。名作として今なお語り継がれる作品がこの年に公開されました。シドニー・ルメット監督の法廷劇の傑作『十二人の怒れる男』、ビリー・ワイルダー監督がマリリン・モンローを主演に迎えたコメディ映画の金字塔『お熱いのがお好き』、西部劇の代表作の一つであるハワード・ホークス監督の『リオ・ブラボー』、アルフレッド・ヒッチコック監督によるサスペンスの傑作『北北西に進路を取れ』、エリザベス・テイラー主演の人間ドラマ『嘆きの天使』、ロジャース&ハマースタインによるミュージカル映画『南太平洋』などが挙げられます。

また、アカデミー賞作品賞を含む主要7部門を受賞したヴィンセント・ミネリ監督のミュージカル映画『恋の手ほどき』もこの年に公開され、大きな話題となりました。アンネ・フランクの生涯を描いた『アンネの日記』や、オードリー・ヘプバーン主演の『尼僧物語』といった伝記・ドラマ作品も観客の感動を呼びました。

アメリカ映画以外にも、ヨーロッパを中心とした様々な国の作品が公開されました。フランスからは、ジャン・ルノワール監督の『お嬢さん、お手やわらかに！』や、コメディ映画のヒット作『バベット戦争へ行く』、サスペンス『殺られる』、さらにはヌーヴェルヴァーグを予感させるような『恋人たち』などが公開されました。イタリアからは、フェデリコ・フェリーニ監督の『みんなが恋してる』、ヘラクレスを主人公にしたアクション大作『ヘラクレス』とその続編『ヘラクレスの逆襲』が登場。ポーランドからは、アンジェイ・ワイダ監督の戦後ポーランドを描いた重要作『灰とダイヤモンド』が公開され、芸術性の高い作品も日本に届けられました。西ドイツ、イギリス、スペイン、ユーゴスラビアなど、さらに多くの国から作品が公開されており、当時の日本の映画市場が国際的に開かれていたことを示しています。

結び

1959年の日本映画公開リストは、まさに多様性の宝庫と言えます。年間537本を超える日本映画に加え、世界各国の映画が劇場を彩りました。シリーズものの安定した人気、アニメや特撮といった新分野の開拓、そして海を越えてやってきた質の高い作品群。これらの作品が、当時の日本の観客に様々な感動や興奮を提供し、映画文化を豊かにしていた様子がうかがえます。娯楽としての映画、芸術としての映画、社会を映し出す映画。その全てが共存し、それぞれの観客に響いていた、そんな時代の活気を伝える一年でした。

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