1967年の航空
1967年は、航空と宇宙開発の分野において、技術の進歩と同時に多くの試練が訪れた、記憶に残る一年となりました。
年の初頭、1月27日にはアメリカの宇宙計画において痛ましい事故が発生しました。アポロ1号が地上での訓練中に火災に見舞われ、搭乗していた宇宙飛行士ヴァージル・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィーの尊い命が失われたのです。この悲劇は、宇宙開発の安全性に対する厳しい問いを投げかけることとなりました。
ソビエト連邦でも同様に、宇宙開発の困難さが露呈しました。4月23日に打ち上げられたソユーズ1号は、軌道上でのトラブルに続き、翌日の帰還時に着陸に失敗し、宇宙飛行士ウラジミール・コマロフが死亡するという悲劇に見舞われました。これはソ連にとって初の宇宙飛行士の死亡事故であり、宇宙開発競争の陰の側面を示す出来事となりました。
一方で、探査の進展もありました。アメリカの月探査機サーベイヤー3号は4月17日に打ち上げられ、4月20日には月面への軟着陸に成功。月面の探査データを地球に送信し、後の有人月探査に向けた貴重な情報をもたらしました。
1967年は、多種多様な新型航空機が相次いで初飛行を果たした年でもあります。
軍用機分野では、2月8日にスウェーデンの先進的な戦闘機サーブ 37ビゲンが、7月2日にはソ連の強力な戦闘爆撃機スホーイ Su-24がそれぞれ初飛行しました。また、2月10日にはドイツのドルニエ Do 31という垂直離着陸（VTOL）輸送機の実験機が、2月16日には小型ながら高い汎用性を持つヘリコプターMBB Bo 105が飛び立ちました。
民間航空分野では、後年、世界の空を席巻することになる傑作機の誕生もこの年です。4月9日には、アメリカのボーイング社が開発した短距離・中距離用ジェット旅客機、ボーイング737が初めて空へ飛び立ちました。これは後のナローボディ機（単通路機）市場における一大勢力となる機体の出発点です。同じく5月9日には、オランダのフォッカー社による短距離ジェット旅客機F28フェローシップも初飛行を成功させており、地域間航空の発展に新たな選択肢が加わりました。
その他、消防用飛行艇カナディア CL-215（10月23日初飛行）や、グラスファイバーを構造材に用いた革新的な軽飛行機ウィンデッカー イーグル（10月7日初飛行。後にステルス実験機に転用）など、特殊な用途や新技術を取り入れた機体も登場しました。
民間航空のネットワークは着実に拡大しました。3月6日には、日本のフラッグキャリアである日本航空（JAL）が、念願の世界一周線の運航を開始し、日本の国際線ネットワークは新たな段階に入りました。また、4月28日にはオランダの主要な空の玄関口であるアムステルダム・スキポール空港が、現在の場所で正式に開港しました。
製造業界では、ボーイング社が6月5日にアメリカン航空へ引き渡したボーイング707-120Bをもって、同社の旅客機生産機数が累計1万機に達するという金字塔を打ち立てました。
将来の航空産業の再編と国際協力に向けた動きも見られました。4月3日にはフランスの航空機メーカーであるシュド・アビアシオンがポテ社を子会社化しました。さらに、9月25日には、フランス、イギリス、西ドイツの三カ国間で、後に欧州最大の航空機メーカーとなるエアバス・インダストリー設立に向けた生産契約が締結されました。そして、12月11日には、トゥールーズのシュド・アビアシオン工場で、英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドの試作1号機が、華々しいロールアウトを迎えました。これは超音速旅客機時代の幕開けを予感させる出来事でした。
1967年の軍事衝突において、航空戦力は極めて重要な役割を果たしました。特に6月5日に勃発した六日戦争では、開戦初日のイスラエル空軍による奇襲攻撃「フォーカス作戦」により、エジプト、シリア、ヨルダンといったアラブ連合側の航空戦力がわずか一日で壊滅。これは戦争の趨勢を決定づける要因となりました。
ベトナム戦争の空でも激しい戦いが繰り広げられました。4月30日には、北ベトナム（ベトナム人民空軍）のエースパイロット、グエン・バン・コクがMiG-21を操り、アメリカ空軍のF-105Dを撃墜しました。グエン・バン・コクはこの戦争を通じて合計9機の敵機を撃墜したと記録されています。
技術開発の最前線では、10月3日、NASAの実験機X-15が、パイロットのウィリアム・J・ナイトの操縦により、マッハ6.72（時速7,297km）という驚異的な速度記録を樹立しました。これは当時の航空機の到達速度としては前例のないものでした。
航空交通量の増加に伴う安全への課題も浮き彫りになりました。7月19日には、ノースカロライナ州アッシュビル近郊で、ボーイング727とセスナ310が空中衝突し、両機に搭乗していた82名全員が犠牲となる痛ましい事故が発生しました。
一方、ロケット開発においては、フランスのCoraロケットが10月25日の3度目の打ち上げに失敗し、開発計画が中止されるという後退もありました。
1967年は、航空分野で顕著な功績を残した人々が称賛された年でもあります。フランス飛行クラブ大賞、ハーモン・トロフィー、FAI・ゴールド・エア・メダル、イギリス飛行クラブ金賞、デラボー賞などが、パイロット、エンジニア、航空産業のリーダーたちに授与されました。
1967年は、宇宙開発の悲劇、軍事における航空戦力の衝撃、民間航空の拡大と新型機の登場、国際協力の萌芽、そして技術の極限への挑戦など、多岐にわたる出来事が詰め込まれた、まさに航空の歴史において重要な節目となる一年だったと言えるでしょう。
宇宙開発：光と影
年の初頭、1月27日にはアメリカの宇宙計画において痛ましい事故が発生しました。アポロ1号が地上での訓練中に火災に見舞われ、搭乗していた宇宙飛行士ヴァージル・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィーの尊い命が失われたのです。この悲劇は、宇宙開発の安全性に対する厳しい問いを投げかけることとなりました。
ソビエト連邦でも同様に、宇宙開発の困難さが露呈しました。4月23日に打ち上げられたソユーズ1号は、軌道上でのトラブルに続き、翌日の帰還時に着陸に失敗し、宇宙飛行士ウラジミール・コマロフが死亡するという悲劇に見舞われました。これはソ連にとって初の宇宙飛行士の死亡事故であり、宇宙開発競争の陰の側面を示す出来事となりました。
一方で、探査の進展もありました。アメリカの月探査機サーベイヤー3号は4月17日に打ち上げられ、4月20日には月面への軟着陸に成功。月面の探査データを地球に送信し、後の有人月探査に向けた貴重な情報をもたらしました。
多様な新型機の登場
1967年は、多種多様な新型航空機が相次いで初飛行を果たした年でもあります。
軍用機分野では、2月8日にスウェーデンの先進的な戦闘機サーブ 37ビゲンが、7月2日にはソ連の強力な戦闘爆撃機スホーイ Su-24がそれぞれ初飛行しました。また、2月10日にはドイツのドルニエ Do 31という垂直離着陸（VTOL）輸送機の実験機が、2月16日には小型ながら高い汎用性を持つヘリコプターMBB Bo 105が飛び立ちました。
民間航空分野では、後年、世界の空を席巻することになる傑作機の誕生もこの年です。4月9日には、アメリカのボーイング社が開発した短距離・中距離用ジェット旅客機、ボーイング737が初めて空へ飛び立ちました。これは後のナローボディ機（単通路機）市場における一大勢力となる機体の出発点です。同じく5月9日には、オランダのフォッカー社による短距離ジェット旅客機F28フェローシップも初飛行を成功させており、地域間航空の発展に新たな選択肢が加わりました。
その他、消防用飛行艇カナディア CL-215（10月23日初飛行）や、グラスファイバーを構造材に用いた革新的な軽飛行機ウィンデッカー イーグル（10月7日初飛行。後にステルス実験機に転用）など、特殊な用途や新技術を取り入れた機体も登場しました。
民間航空と産業の動き
民間航空のネットワークは着実に拡大しました。3月6日には、日本のフラッグキャリアである日本航空（JAL）が、念願の世界一周線の運航を開始し、日本の国際線ネットワークは新たな段階に入りました。また、4月28日にはオランダの主要な空の玄関口であるアムステルダム・スキポール空港が、現在の場所で正式に開港しました。
製造業界では、ボーイング社が6月5日にアメリカン航空へ引き渡したボーイング707-120Bをもって、同社の旅客機生産機数が累計1万機に達するという金字塔を打ち立てました。
将来の航空産業の再編と国際協力に向けた動きも見られました。4月3日にはフランスの航空機メーカーであるシュド・アビアシオンがポテ社を子会社化しました。さらに、9月25日には、フランス、イギリス、西ドイツの三カ国間で、後に欧州最大の航空機メーカーとなるエアバス・インダストリー設立に向けた生産契約が締結されました。そして、12月11日には、トゥールーズのシュド・アビアシオン工場で、英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドの試作1号機が、華々しいロールアウトを迎えました。これは超音速旅客機時代の幕開けを予感させる出来事でした。
軍事と技術の先端
1967年の軍事衝突において、航空戦力は極めて重要な役割を果たしました。特に6月5日に勃発した六日戦争では、開戦初日のイスラエル空軍による奇襲攻撃「フォーカス作戦」により、エジプト、シリア、ヨルダンといったアラブ連合側の航空戦力がわずか一日で壊滅。これは戦争の趨勢を決定づける要因となりました。
ベトナム戦争の空でも激しい戦いが繰り広げられました。4月30日には、北ベトナム（ベトナム人民空軍）のエースパイロット、グエン・バン・コクがMiG-21を操り、アメリカ空軍のF-105Dを撃墜しました。グエン・バン・コクはこの戦争を通じて合計9機の敵機を撃墜したと記録されています。
技術開発の最前線では、10月3日、NASAの実験機X-15が、パイロットのウィリアム・J・ナイトの操縦により、マッハ6.72（時速7,297km）という驚異的な速度記録を樹立しました。これは当時の航空機の到達速度としては前例のないものでした。
安全への課題と功労者
航空交通量の増加に伴う安全への課題も浮き彫りになりました。7月19日には、ノースカロライナ州アッシュビル近郊で、ボーイング727とセスナ310が空中衝突し、両機に搭乗していた82名全員が犠牲となる痛ましい事故が発生しました。
一方、ロケット開発においては、フランスのCoraロケットが10月25日の3度目の打ち上げに失敗し、開発計画が中止されるという後退もありました。
1967年は、航空分野で顕著な功績を残した人々が称賛された年でもあります。フランス飛行クラブ大賞、ハーモン・トロフィー、FAI・ゴールド・エア・メダル、イギリス飛行クラブ金賞、デラボー賞などが、パイロット、エンジニア、航空産業のリーダーたちに授与されました。
1967年は、宇宙開発の悲劇、軍事における航空戦力の衝撃、民間航空の拡大と新型機の登場、国際協力の萌芽、そして技術の極限への挑戦など、多岐にわたる出来事が詰め込まれた、まさに航空の歴史において重要な節目となる一年だったと言えるでしょう。
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