1981年のテレビ (日本)

1981年のテレビジョン放送

1981年（昭和56年）は、日本のテレビ界にとって変革と活気に満ちた一年でした。局の体制や編成に大きな動きがあり、後に続く時代の流れを作る出来事が多数発生しました。

局の体制変化と新規開局

この年、関東広域圏の独立局であった東京12チャンネルが、10月1日をもって「テレビ東京」へと社名を変更しました。これは、翌年のテレビ大阪開局を見据え、全国的なネットワーク構築に向けた重要な一歩となりました。地方では、4月1日にテレビ新潟放送網（TNN、現：TeNY）が日本テレビ系列の、10月1日には福島放送（KFB）がテレビ朝日系列のフルネット局として、それぞれ新潟県と福島県で3番目の民放テレビ局として開局しました。これにより、地域におけるテレビの選択肢が広がり、既存局のネット状況にも変化が生じました。

フジテレビの大胆な編成改革

1981年のテレビ界で最も注目された出来事の一つは、フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」という明確なスローガンを掲げ、秋の改編期に実施した大規模な編成改革です。当時の鹿内春雄副社長と日枝久編成局長のリーダーシップの下で行われたこの改革は、フジテレビのイメージと実力を劇的に変える契機となりました。

長年親しまれてきた旭化成一社提供の看板番組『スター千一夜』が22年以上の歴史に幕を下ろし、代わりに海外ロケによる斬新なクイズ番組『なるほど!ザ・ワールド』が始まりました。また、平日夜7時台後半に存在したレギュラー帯番組枠を廃止するなど、従来の編成にとらわれない柔軟な姿勢を見せました。

この改革の中心にあったのは、「お笑い路線」の本格的な強化です。プロ野球中継の雨傘番組として始まった『オレたちひょうきん族』を10月10日に正式なレギュラー番組へと昇格させました。ビートたけしや明石家さんまといった人気コメディアンが出演するこの番組は、瞬く間に人気を獲得し、当時「お化け番組」と恐れられていたTBSの『8時だョ!全員集合』の視聴率を上回るまでに成長しました。これに加え、平日昼の『笑ってる場合ですよ!』や、『火曜ワイドスペシャル』の『THE MANZAI』シリーズなど、他のお笑い番組群との相乗効果もあり、「お笑いのフジテレビ」という強烈な個性が視聴者に定着しました。この大胆な改革は、フジテレビが後に「視聴率三冠王」を達成する礎となりました。

音声多重放送の本格始動

前年に衆参同時選挙特番で試験的に導入されていた音声多重放送が、1981年1月23日の郵政省による正式認可・施行を受けて本格的にスタートしました。これにより、テレビ音声にステレオや二重音声（副音声）の選択肢が加わりました。

各局は様々な形で副音声の活用を試みました。日本テレビではニュース番組で解説放送、TBSでは天気予報の詳細データの提供、東京12チャンネル（テレビ東京）では株式市況の第二部終値や歌番組のカラオケ音声、NHKでは古典芸能の解説などが行われました。また、プロ野球中継では、主音声とは異なる解説や、特定の球団の応援合戦などを副音声で楽しむといった試みも行われ、視聴者体験の幅が大きく広がりました。ステレオ放送も一部の音楽番組やドラマで導入され始めました。

話題の番組とヒット

1981年には、多くの視聴者に記憶されるヒット番組や名曲が誕生・展開しました。

日本テレビ系の歌謡番組では、11年半続いた『NTV紅白歌のベストテン』が幕を閉じ、後継として『ザ・トップテン』がスタート。司会は堺正章と榊原郁恵が引き継ぎました。また、社会現象ともなった女性デュオ、ピンク・レディーが3月31日の後楽園球場コンサートをもって解散。その模様は日本テレビで生中継され、多くのファンが別れを惜しみました。

ドラマ関連では、日本テレビ系『池中玄太80キロ』第2シリーズから主演の西田敏行が歌う主題歌「もしもピアノが弾けたなら」が、フジテレビ系『欽ドン!良い子悪い子普通の子』から誕生したイモ欽トリオのデビュー曲「ハイスクールララバイ」が、それぞれ大ヒットしました。特に寺尾聰の「ルビーの指環」は歌謡史に残るメガヒットとなり、TBS系『ザ・ベストテン』で番組史上最長の12週連続1位を記録したほか、同年の主要な音楽賞を総なめにしました。

その他、NHKの『クイズ面白ゼミナール』、日本テレビの『今夜は最高!』『火曜サスペンス劇場』、フジテレビの『Dr.スランプ アラレちゃん』『うる星やつら』、テレビ朝日の『100万円クイズハンター』『忍者ハットリくん』など、後に各局の看板番組となる多くの人気シリーズがこの年に放送を開始しました。一方で、長寿番組であるNHK『ゲーム ホントにホント?』や日本テレビ『桃太郎侍』などが終了するなど、番組の世代交代も進みました。

視聴率とその他の出来事

年間視聴率では、TBSが在京民放局で4年連続となる三冠王を達成しました。年末の『第32回NHK紅白歌合戦』が74.9%という記録的な高視聴率をマークしたほか、『8時だョ!全員集合』や『ザ・ベストテン』といったTBSの看板番組も引き続き高い視聴率を維持しました。フジテレビの『Dr.スランプ アラレちゃん』はアニメとしては異例の高視聴率を記録し、その人気の高さを示しました。

テレビ業界を取り巻く出来事としては、ザ・ドリフターズのメンバーと『8時だョ!全員集合』のプロデューサーがノミ行為で書類送検され、謹慎処分を受けるという騒動がありました。また、TBSは横浜に大規模なテレビドラマ専用スタジオ「緑山スタジオ・シティ」を竣工・稼働させ、制作体制を強化しました。文部省主導による特殊法人放送大学学園も設立され、将来の教育放送の基盤が作られました。文化面では、『寺内貫太郎一家』などで知られる脚本家の向田邦子が航空機事故により急逝し、テレビドラマ界に大きな衝撃を与えました。

1981年は、テレビ局の競争が激化し、特にフジテレビのような大胆な改革が成功を収め、テレビメディアの新たな可能性を切り開いた年として記憶されています。音声多重放送の本格化は、視聴者に技術の進化を実感させ、多様な番組フォーマットが誕生したことは、後のテレビ文化に大きな影響を与えました。

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