1988年の鉄道

1988年（昭和63年）は、前年の国鉄分割民営化を経て新たな体制となった日本の鉄道が、大きな変革期を迎えた一年として記録されています。全国各地で利用客が減少したローカル線が第三セクター方式による経営へと移行し、存続への道を探る動きが活発化しました。同時に、本州と北海道、そして本州と四国を結ぶ新たな鉄路が開通するなど、国の鉄道網の根幹を強化するプロジェクトが進められました。また、都市部の輸送力向上に向けた路線の延伸やネットワーク拡充も相次ぎ、これからの時代を担う最新技術を搭載した新型車両が多数デビューしました。

年の始まりには、JR東海から愛知環状鉄道への岡多線移管が行われました。これに伴い、路線の名称は愛知環状鉄道線となり、新たな運営主体のもとで運行が開始されました。2月にはJR北海道の松前線やJR九州の山野線など、複数の地方交通線が廃止されました。

春の大きな出来事として、3月13日に津軽海峡線が開業し、ついに北海道と本州が鉄道で結ばれたことが挙げられます。青函トンネルの開通に合わせて、JR北海道の江差線や函館本線の一部区間が電化され、物流・旅客輸送の新たなルートが確立されました。この時期には、全国のJR各社を中心に、利用者の利便性向上を図るため、多くの新駅が設置されました。特に東海道新幹線に新富士駅と三河安城駅、山陽新幹線に新尾道駅と東広島駅が開業するなど、高速鉄道網の利便性も高まりました。また、JR西日本の関西本線の一部区間では電化が完成しています。

3月から4月にかけて、複数のローカル線が第三セクター鉄道として再スタートを切りました。JR東日本からいすみ鉄道（木原線）、真岡鐵道（真岡線）、山形鉄道（長井線）へ、JR西日本からのと鉄道（能登線）へ、JR四国から土佐くろしお鉄道（中村線）へ、JR九州から松浦鉄道（松浦線）へ、それぞれ運営が移管されました。これにより、地域に根差した鉄道サービスの継続が図られることになりました。

4月には、本州と四国を結ぶ一大プロジェクトである瀬戸大橋が開通し、鉄道も運行を開始しました。JR西日本とJR四国が共同運行する本四備讃線（瀬戸大橋線）が開業し、四国へのアクセスが画期的に向上しました。都市部では、千葉都市モノレール2号線、札幌市営地下鉄東豊線が新たに開業し、市民の足として期待を集めました。京王相模原線、営団地下鉄有楽町線、京都市営地下鉄烏丸線といった既存路線の延伸開業も相次ぎ、都市内および都市間の移動がよりスムーズになりました。

この年は、鉄道の安全運行に関わるいくつかの事故も発生しました。3月には上越線で特急車両の火災事故が、12月には中央線快速電車が関連する追突事故、そして函館本線での貨物列車の脱線事故が発生しており、改めて安全対策の重要性が問い直されることとなりました。

車両の分野では、JR各社からJR東日本の651系電車（「タキシードボディ」と呼ばれた特急形車両）、JR九州の783系電車（「ハイパーサルーン」）など、個性的なデザインと高い性能を持つ新型特急車両が登場しました。また、JR北海道のキハ130形気動車や721系電車といった地域輸送を担う車両も導入されました。都市圏の私鉄や地下鉄でも、営団地下鉄の0x系シリーズ（02系、03系、05系）をはじめ、小田急電鉄1000形、東京急行電鉄1000系などが登場し、その後の通勤形車両の標準的な仕様に影響を与えました。廃止された鉄道路線で使用されていた車両の一部は、第三セクター鉄道や他の鉄道会社に譲渡され、活躍の場を移しました。

年間を通して、1988年はJR化の第二幕が本格的に展開され、ローカル線の再生、広域ネットワークの構築、都市交通の近代化、そして新型車両の開発など、日本の鉄道が将来に向けて大きく動き出した、まさに変化と発展の年であったと言えるでしょう。

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