1990年-2002年の市町村合併

本項では、1990年から2002年にかけて日本全国で実施された市町村合併の中から、特筆すべき事例を一覧として記述します。この期間は、後に「平成の大合併」と呼ばれる大規模な自治体再編が本格化する直前の時期にあたり、その先駆けとなる様々な合併が実現しました。既存市への編入合併が中心である一方、複数の自治体が対等な立場で新たな市を創設する「新設合併」も見られ、その後の合併方式の多様化を示唆する期間でもありました。

各年の主要な合併事例

1991年

2月1日: 熊本県では、既存の熊本市が周辺の4町を編入しました。対象となったのは、飽託郡北部町、河内町、飽田町、天明町です。これにより、熊本市の市域が拡大しました。
4月1日: 岩手県において、北上市と和賀郡和賀町、江釣子村が合併し、新たに北上市が誕生しました（新設合併）。
5月1日: 静岡県では、浜松市が浜名郡可美村を編入しました。

1992年

3月3日: 茨城県の水戸市が東茨城郡常澄村を編入しました。
4月1日: 岩手県盛岡市が紫波郡都南村を編入しました。

1993年

7月1日: 長野県飯田市が下伊那郡上郷町を編入しました。

1994年

11月1日: 茨城県では、既存の那珂湊市と勝田市が合併し、新たな市としてひたちなか市が誕生しました（新設合併）。

1995年

9月1日: 茨城県において、鹿島郡鹿島町と大野村が合併しました。この合併は、編入方式と同時に新市名称への変更、そして市制施行を伴い、鹿嶋市となりました。
同日、東京都では、秋川市と西多摩郡五日市町が合併し、新たにあきる野市が誕生しました（新設合併）。

1999年

4月1日: 兵庫県では、多紀郡篠山町、西紀町、丹南町、今田町の4町が合併し、新たに篠山市が誕生し、市制を施行しました（新設合併）。この篠山市の誕生は、後の大規模な「平成の大合併」における最初の自治体事例として歴史に名を刻んでいます。

2001年

1月1日: 新潟県新潟市が西蒲原郡黒埼町を編入しました。
1月21日: 東京都では、田無市と保谷市が合併し、新たに西東京市が誕生しました（新設合併）。東京都区部以外における重要な市町村合併事例です。
4月1日: 茨城県において、行方郡潮来町と牛堀町が合併し、潮来市が誕生し市制を施行しました（編入方式）。
5月1日: 埼玉県では、浦和市、大宮市、与野市という大規模な3市が合併し、新たにさいたま市が誕生しました（新設合併）。これは後の政令指定都市移行にも繋がる、この期間でも特に規模の大きな合併事例です。
11月15日: 岩手県大船渡市が気仙郡三陸町を編入しました。

2002年

4月1日: 香川県では、大川郡津田町、大川町、志度町、寒川町、長尾町の5町が合併し、新たにさぬき市が誕生し市制を施行しました（新設合併）。
同日、沖縄県では、島尻郡仲里村と具志川村が合併し、新たに島尻郡久米島町が誕生し、町制を施行しました（新設合併）。離島における自治体合併事例です。
11月1日: 茨城県つくば市が稲敷郡茎崎町を編入しました。

この期間の合併の意義

1990年から2002年にかけて行われたこれらの市町村合併は、その後の「平成の大合併」の本格化に先立つ動きとして位置づけられます。小規模な編入合併が多数を占める中で、複数の旧市が対等に合併して新市を形成する事例（ひたちなか市、あきる野市、西東京市）や、政令指定都市の母体となる大規模合併（さいたま市）、広域合併による新市の誕生（さぬき市）なども発生しました。また、離島における合併による町制施行（久米島町）など、地域の実情に応じた多様な形態が見られました。特に1999年の篠山市の誕生は、「平成の大合併」第1号として、その後の全国的な合併機運を高める契機の一つとなりました。この時期の合併事例は、市町村の自主的な判断によるものや、行政改革、財政基盤強化といった観点から進められたものが多く、その後の大規模合併に向けた様々な試行錯誤を含んでいます。本期間の合併の経験が、後の全国的な自治体再編の議論や実施に影響を与えたと言えるでしょう。

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