1997年の日本競馬

1997年の日本競馬

1997年（平成9年）の日本競馬界は、制度改革と歴史的な記録が相次いだ年として記憶される。旧馬齢表記でまとめられている。

ダート路線の大きな転換期

この年の大きな出来事の一つは、ダート競走体系の整備である。前年に発足したダートグレード競走格付け委員会により、交流競走に新たな格付けが導入された。これに伴い、日本中央競馬会（JRA）はダートの重賞を新設し、特に注目されたのがフェブラリーステークスのGI昇格である。1997年2月16日に行われたこのレースは、JRA史上初のダートGIとして実施された。不良馬場の中で争われた第1回フェブラリーステークスでは、岡部幸雄騎手が駆る旧表記5歳馬のシンコウウインディが勝利を収めた。また、地方競馬で行われる交流重賞も再編され、帝王賞、マイルチャンピオンシップ南部杯、ダービーグランプリ、東京大賞典、川崎記念の5競走がGI格付けを獲得した。

牝馬の快挙と年度代表馬選出

1997年を象徴する一頭として、エアグルーヴの名前が挙げられる。この牝馬は、前年秋に故障して休養していたが、マーメイドステークスでの復帰戦勝利を皮切りに、札幌記念、天皇賞（秋）と重賞3連勝を達成した。天皇賞（秋）での勝利は、牝馬としては17年ぶりの快挙だった。ジャパンカップで僅差の2着、有馬記念でも3着とトップレベルでの活躍を続け、その実績が評価され、旧表記で5歳となったこの年、牝馬としては1971年のトウメイ以来、実に26年ぶりに年度代表馬に選ばれた。GIを2勝したタイキシャトルやサニーブライアンといった牡馬を抑えての受賞は、いかに彼女の活躍が突出していたかを示すものだった。

競馬界を賑わせた様々な出来事

1997年には、他にも多岐にわたる出来事があった。年明け早々には、平安ステークスでシンコウウインディとトーヨーシアトルが9年ぶりとなる重賞での1着同着となる珍事があった。騎手関連では、ホッカイドウ競馬所属の佐々木明美騎手が公営女性騎手として初めてJRAのレースに騎乗したり、JRA所属の女性騎手である板倉真由子騎手が障害競走に初騎乗、牧原由貴子騎手が女性騎手として初の特別戦勝利を挙げるなど、女性騎手の活動範囲が広がった年でもあった。武豊騎手はプロスポーツ功労賞を受賞し、この年にはJRAの全競馬場での重賞制覇という偉業も達成した。また、彼の弟である武幸四郎騎手は、デビュー週にマイラーズカップを制し、史上初の快挙を成し遂げ、同日には武豊騎手も弥生賞を勝って兄弟同日重賞制覇というニュースも生まれた。

名馬の引退や訃報も相次いだ。三冠馬ナリタブライアンが顕彰馬に選ばれた一方で、ダートで活躍したホクトベガがドバイワールドカップのレース中に事故で予後不良となり、惜しまれつつこの世を去った。不世出の快速馬マルゼンスキーも心臓麻痺により急逝した。また、サクラローレルは凱旋門賞挑戦を断念し引退するなど、多くのファンに愛された馬たちがターフを去った。

競馬場の運営面では、インターネットを活用した情報提供が始まった年でもある。川崎競馬が「川崎データパドック」を開始し、JRAも公式サイトを開設した。岩見沢競馬場が豪雨の影響で開催中止になる一方、北海道沙流郡門別町には日本一小規模な門別競馬場が完成した。リーディングでは、金山明彦騎手がばんえい競馬で通算3000勝を達成し、JRAでは藤沢和雄調教師が年間重賞勝利記録を更新した。珍しい出来事としては、大井競馬場で白毛馬のハクホウクンが初勝利を挙げたことや、中央競馬で名義貸し問題が再び発覚し、調教師に処分が下されたことも報じられた。

1997年の主要な表彰馬

この年の競馬界で活躍した馬たちは、JRA賞やNARグランプリで表彰された。

JRA賞 年度代表馬: エアグルーヴ
JRA賞 最優秀4歳牡馬: サニーブライアン
JRA賞 最優秀短距離馬: タイキシャトル
NARグランプリ 年度代表馬: アブクマポーロ

新たな命と別れ

この年には、後のクラシック戦線で活躍するアグネスフライトやエアシャカール、タップダンスシチーといった多くの才能豊かな競走馬が誕生した。一方で、前述のホクトベガやマルゼンスキーに加え、かつて天皇賞やオークスを制したトウメイ、地方競馬で活躍したライデンリーダーなど、多くの名馬がこの世を去った。また、競馬界に貢献した調教師の大久保房松氏や下河辺牧場の創業者である下河辺孫一氏といった重要人物も亡くなっている。

1997年は、ダート路線の大きな制度変更、牝馬の年度代表馬という歴史的な出来事、そして多くの話題馬や騎手の活躍、名馬たちの別れなど、多角的に日本の競馬が動きを見せた一年だったと言える。

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