2010年の航空

2010年（平成22年）の航空業界は、国内外で歴史的な出来事が相次ぎ、大きな変動に見舞われた一年となりました。特に日本のフラッグキャリアである日本航空（JAL）の経営問題と、世界の大手航空会社の再編・統合が注目を集めました。

年明けの1月には、航空管制システムに不具合が発生し、羽田空港と成田空港を発着する多数の便に遅延が生じる事態となりました。そして、同月には株式会社日本航空とその関連会社3社が東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し、事実上の経営破綻となりました。しかしながら、運航は継続され、企業再生への道が模索されることとなります。再生計画は8月に裁判所に提出されました。

世界の航空業界では、主要航空会社による大規模な統合が相次ぎました。アメリカでは、既に前年にデルタ航空がノースウエスト航空との統合を完了させたと発表していましたが、5月にはユナイテッド航空とコンチネンタル航空が合併を発表し、これが実現すれば世界最大の航空会社が誕生するとされました。この合併は10月に完了し、「ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス」として新たな歴史を刻むことになりました。他にも、中国の中国東方航空と上海航空の統合、ギリシャのオリンピック航空とエーゲ航空の合併合意などが発表され、業界再編の波が押し寄せました。

航空アライアンスの枠組みにも変化がありました。ブラジルのTAM航空やルーマニアのタロム航空、ギリシャのエーゲ航空などがスターアライアンスやスカイチームに新規加盟し、既存のアライアンスメンバーがフルメンバーに昇格するなど、勢力図が塗り替えられていきました。

日本の空にも新たな動きが見られました。3月には茨城空港が開港し、新しい国内線の拠点としての役割を担うことになりました。新千歳空港や徳島空港では施設の拡張や新ターミナルの供用が開始され、利便性が向上しました。また、米子空港は「米子鬼太郎空港」、出雲空港は「出雲縁結び空港」と、地域性を反映した愛称が付けられました。

特に秋には、長らく国内線主体であった羽田空港の国際線機能が大幅に強化されました。新しいD滑走路と国際線旅客ターミナルビルが供用を開始し、本格的な国際線ハブ空港としての役割を担う準備が整い、32年ぶりに羽田からの国際線定期便が順次再開されました。これにより、日本の国際航空ネットワークにおける羽田空港の重要性が飛躍的に高まりました。

政策面では、10月に日本とアメリカの間で画期的な航空自由化、いわゆるオープンスカイ協定が正式に締結されました。これにより、羽田や成田を含む両国の空港の発着枠に制約がない限り、航空会社が自由に運航路線や便数を設定できるようになり、航空会社の競争促進と利用者への選択肢拡大が期待されました。

自然現象も航空運航に大きな影響を与えました。4月にはアイスランドの火山噴火による広範囲の火山灰によって、欧州との間の航空便が長期間にわたり大規模な欠航に見舞われ、物流や人の移動に混乱が生じました。また、秋にはインドネシアのムラピ山噴火による火山灰の影響で、ジャカルタ便などに欠航が相次ぎました。

この年、日本航空は経営再建の一環として、不採算路線の廃止や機材の退役を進めました。長距離国際線や地方路線の一部が廃止され、長年活躍したMD-81型機も日本の空から姿を消しました。また、JALカーゴも事業体制の見直しを発表しました。

新たな挑戦としては、国内線LCCのスカイマークが、2014年度を目標とした国際線進出計画を発表し、エアバスの超大型機A380を複数機導入する基本合意に至ったことが大きな話題となりました。日本の航空会社としては初のA380導入表明であり、今後の動向が注目されました。また、全日本空輸（ANA）も香港の企業と共同で新たな格安航空会社を設立する計画を明らかにしました。

その他の出来事としては、韓国の韓星航空がティーウェイ航空に社名を変更したり、ANAグループ内で子会社の合併が行われたりしました。

2010年は、日本航空の再生という国内最大の出来事を軸に、世界の航空業界における大型再編、日本の空港機能強化、政策転換、そして自然災害の影響など、航空業界の様々な側面で大きな変化が見られた、歴史的な一年であったと言えるでしょう。

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