2012年の航空

2012年の航空：激動の空模様

2012年（平成24年）は、世界の航空業界にとって様々な変化が訪れた年でした。特に日本では、新たなLCC（格安航空会社）の本格的な運航開始が大きな話題となりました。また、経営難による運航停止や破綻が相次ぐ一方、航空連合への加盟・脱退、新型航空機の導入拡大、空港施設の整備・廃止など、多岐にわたる出来事が発生しました。この年は、航空事故も比較的多く発生し、安全対策の重要性が改めて認識される一年でもありました。

日本におけるLCCの本格始動

この年の日本の航空業界を語る上で、LCCの動向は外せません。3月1日には、Peach Aviationが関西国際空港を拠点として、札幌/新千歳線と福岡線で国内線運航を開始しました。続いて7月3日にはジェットスター・ジャパンが、8月1日にはエアアジア・ジャパンがそれぞれ成田国際空港を拠点に、札幌/新千歳線、福岡線、沖縄/那覇線などの国内幹線で運航をスタート。これにより、国内の航空市場に新たな価格競争とサービス多様化が生まれました。

Peach Aviationはその後も長崎線、ソウル/仁川線、香港線、鹿児島線、沖縄/那覇線、台北/桃園線と路線網を拡大し、ジェットスター・ジャパンも大阪/関西線、沖縄/那覇線、札幌/新千歳-大阪/関西線、福岡-大阪/関西線を開設。エアアジア・ジャパンもソウル/仁川線や釜山線といった国際線に乗り出しました。LCCの拡大に伴い、10月には那覇空港に国内初のLCC専用ターミナルが開業し、続いて関西国際空港にもLCC専用の第2ターミナルが供用を開始するなど、空港施設側もLCCの受け入れ体制を整えました。

新型機の導入と機材動向

2012年には、次世代中型機として注目されるボーイング787型機が、日本の航空会社（全日本空輸、日本航空）に続き、海外の航空会社にも初めて引き渡され、運航を開始しました。8月にはエチオピア航空がアフリカ勢として初受領し、その後もチリのラン航空、インドのエア・インディア、アメリカのユナイテッド航空、ポーランドのLOTポーランド航空、カタールのカタール航空といった各国の主要航空会社に順次納入が進み、国際線の主要路線に投入され始めました。

また、超大型機であるエアバスA380型機の受領も進み、9月にはタイ国際航空がアジア勢として初めて受領しました。成田国際空港にはすでに多くの航空会社がA380を就航させていましたが、この年にはエミレーツ航空がドバイ線にA380を投入し、成田にA380が就航する航空会社は6社に増えました。

日本の航空会社では、スカイマークがエアバスA330-300型機の導入方針を発表。これは日本の航空会社としては初のA330導入となります。一方、シンガポール航空はボーイング747-400型機の完全退役を進め、ラストフライトを実施しました。

航空会社の経営状況とアライアンス再編

世界的に景気が低迷する中、経営難に陥る航空会社も少なくありませんでした。1月にはスペインのスパンエアー、イタリアのエア・アルプス（一時運航再開後再び停止）、2月にはハンガリーのマレーヴ・ハンガリー航空、オーストラリアのエア・オーストラリア、オーストラリア領ノーフォーク島のノーフォーク・エアが運航停止や経営破綻に追い込まれました。8月にはイタリアのウィンドジェット、9月にはエア・ナイジェリア、フィンランドのエア・フィンランド、アメリカのサザン・エアが運航停止や破産申請を行いました。

これらの経営状況の変化は、航空連合（アライアンス）の勢力図にも影響を与えました。スパンエアーはスターアライアンスから、マレーヴ・ハンガリー航空はワンワールドから脱退しました。一方、ドイツのエア・ベルリンとオーストリアのニキ航空がワンワールドに正式加盟。スターアライアンスにはパナマのコパ航空、コロンビアのアビアンカ航空、エルサルバドルのTACA航空、中国の深圳航空が加盟しました。スカイチームにはサウジアラビアのサウディア、アルゼンチンのアルゼンチン航空、中国の廈門航空、レバノンのミドル・イースト航空が加わりました。また、台湾のエバー航空は2013年半ばのスターアライアンス加盟、カタールのカタール航空は2013年後半から2014年前半のワンワールド加盟を発表するなど、将来の加盟に向けた動きも見られました。

その他、全日本空輸は2013年の持株会社移行を発表し、子会社のエアーニッポンを編入合併しました。日本航空は経営破綻から立ち直り、東京証券取引所第1部へ再上場を果たしました。

空港関連の動き

空港関連でも様々な動きがありました。4月には関西国際空港と大阪国際空港（伊丹空港）が経営統合し、「新関西国際空港株式会社」が設立されました。中国では、昆明巫家壩国際空港が廃港となり、新たに昆明長水国際空港が開港しました。ブラジルではコンゴーニャス空港など主要3空港の運営権が競売にかけられ、民営化が進展しました。

日本国内では、長年定期便が運航されていた広島西飛行場が廃港となり、ヘリポートとして再出発しました。定期便が発着する空港の廃港は国内初の事例でした。山口県では岩国錦帯橋空港が軍民共用空港として開港し、全日空による羽田線が就航しました。また、成田国際空港のA滑走路は、未買収地問題が解決したことで、南側進入時の実質的な運用長が延伸され、4,000m滑走路としての完全運用が開始されました。

航空事故

2012年は大小様々な航空事故が発生しました。ロシアでの旅客機墜落事故（UTエアー120便墜落事故）、インドネシアでのデモ飛行中のスホーイ・スーパージェット100墜落事故、パキスタンでのボジャ航空旅客機墜落事故、ナイジェリアでのダナ・エア旅客機墜落事故など、複数の死者を出す事故も発生しました。軍用機の事故も各地で発生し、米海軍、海自、米空軍、ベルギー空軍、中国空軍、南アフリカ空軍の機体が墜落する事例がありました。コンゴ共和国やミャンマー、ロシアでも貨物機や旅客機の着陸失敗・不時着事故が発生しています。

まとめ

2012年は、日本におけるLCC市場の本格的な幕開け、ボーイング787やエアバスA380といった新型機のグローバルな展開、航空会社の経営統合や再編、多くの航空会社の運航停止や破綻、そして航空連合のメンバーシップ変更など、世界中の航空業界で活発な動きが見られた年でした。同時に、各地で発生した航空事故は、安全運航への継続的な取り組みの重要性を改めて浮き彫りにしました。これらの出来事は、その後の航空業界の構造や競争環境に大きな影響を与えていくこととなります。

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