2021年の鉄道

2021年の鉄道界を振り返る

2021年（令和3年）は、国内外の鉄道において様々な動きが見られた一年でした。新しい路線の開業や既存路線の延伸、多くの事業者でのダイヤ改正、ICカード利用エリアの拡大など、利便性の向上やサービスの変化が進む一方で、長年親しまれてきた路線の廃止や車両の引退もありました。また、国内外で発生した痛ましい事故や事件、自然災害からの復旧など、鉄道の安全性や安定運行に関わる重要な出来事も多く発生しました。

路線の動きとインフラ整備

この年には、いくつかの新しい路線や区間が開業しました。台湾の高雄捷運環状軽軌や台中捷運緑線、韓国の首都圏電鉄7号線、香港MTR屯馬線の延伸など、海外での都市鉄道ネットワークの拡充が目立ちました。国内では、YOKOHAMA AIR CABINのような新しい形態の都市交通が開業。駅の新設も各地で行われ、JR東日本の泉外旭川駅やひたちなか海浜鉄道の美乃浜学園駅などが開業しました。また、東武野田線の一部区間や南海本線の羽衣駅で高架化が進み、都市部の立体交差化による円滑な交通流の実現に向けた動きも見られました。

一方で、長期の歴史を持つ路線の廃止もありました。北海道のJR日高本線鵡川〜様似間116kmという長距離区間が廃止されたことは、地域交通のあり方を改めて考えさせる出来事でした。秋田臨海鉄道も全線が廃止されています。多くの駅が利用者の減少などにより廃止されたことも、地方交通の厳しい現実を示すものとなりました。

サービスと運賃制度の変化

多くの鉄道事業者で春を中心に大規模なダイヤ改正が実施されました。JRグループをはじめ、東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道、東急電鉄、京王電鉄、阪急電鉄、南海電気鉄道など、全国各地の主要私鉄や公営交通、第三セクター鉄道が対象となり、運転時刻や列車の編成、停車駅などが見直されました。特急列車の運転区間変更や愛称変更、通勤時間帯の着席サービス向上などが図られています。

ICカードの利用エリアも拡大しました。JR東海は東海道本線や御殿場線の一部区間にTOICAを、JR西日本は関西本線、紀勢本線、福知山線、播但線、山陰本線、舞鶴線、伯備線、七尾線の一部区間にICOCAを導入。四日市あすなろう鉄道や富山地方鉄道でもICOCAのサービスが開始され、キャッシュレス決済による乗車が可能なエリアが広がりました。ただし、ICOCAエリア内での回数乗車券の販売終了といった変化もありました。

車両の世代交代

鉄道車両においては、長年活躍した車両が引退し、新しい形式の車両が登場する世代交代が進みました。JR東日本では、特急「踊り子」などで活躍した185系や、通勤・近郊輸送を担った215系、2階建て新幹線のE4系などが運用を終えました。JR西日本の105系、七尾線の415系・413系、JR九州の特急「有明」用車両なども姿を消しました。私鉄では、京阪電気鉄道の5000系、南海電気鉄道の1700系、能勢電鉄の3100系などが運用を終了しています。また、JR貨物のDD51形ディーゼル機関車の運転終了も特筆されます。

一方で、新型車両も続々と登場しました。JR東日本のE131系は房総・鹿島エリアや相模線に投入され、地方路線のサービス向上に貢献。東京メトロの17000系（有楽町線・副都心線）と18000系（半蔵門線）は、最新技術を導入した都市型通勤車両です。台湾鉄路管理局のEMU900型やEMU3000型、JR西日本のDEC700形なども新しい顔として加わりました。阿佐海岸鉄道では、線路と道路の両方を走行できるデュアル・モード・ビークル（DMV）の営業運転が開始され、新しい交通システムの可能性を示しました。引退した車両が他の事業者へ譲渡され、新たな活躍の場を得る例も見られました。

安全運行を脅かす出来事

2021年は、国内外で鉄道の安全や治安に関わる重大な出来事が多発した年でもありました。3月にはエジプトで列車の追突事故が発生し多数の死傷者が。4月には台湾で特急列車が建設用トラックと衝突・脱線し、多数の犠牲者が出る痛ましい事故となりました。メキシコシティでは地下鉄の高架橋が崩落し、走行中の列車が巻き込まれる惨事も発生しています。

国内でも、不法侵入や異臭騒ぎ、強風による立ち往生といったトラブルに加え、列車のドアへの挟まれかけや転倒事故、運転士の離席といった事案が報じられました。さらに、公共交通機関における安全への懸念が高まる事件も発生しました。8月には小田急線、10月には京王線の特急列車内で、乗客が無差別に切りつけられたり放火されたりする殺傷事件が発生し、社会に大きな衝撃を与えました。また、11月には九州新幹線車内での放火未遂事件も起きています。これらの事件は、鉄道車両内という密閉された空間における防犯対策や、緊急時の対応について重要な課題を突きつけました。

自然災害からの復旧も進みました。令和2年7月豪雨で不通となっていたJR久大本線の一部区間や、京阪神地方の叡山電鉄鞍馬線が全線運転再開。令和元年東日本台風で被災したJR水郡線や上田電鉄別所線も復旧を遂げました。くま川鉄道やJR飯田線、JR日南線も豪雨や台風による運休からの運転再開を果たしています。一方で、千葉県北西部地震による日暮里・舎人ライナーの脱輪事故や、マカオLRTのシステム欠陥による長期運休なども発生し、インフラの脆弱性やメンテナンスの重要性も改めて認識されました。

その他の動き

2021年には、鉄道に関連する新たな施設も開業しました。小田急電鉄は、引退したロマンスカーなどを展示する「ロマンスカーミュージアム」を開館し、多くのファンが訪れました。また、鉄道車両やサービスに対して贈られる賞も発表され、近鉄80000系「ひのとり」がブルーリボン賞を、JR東日本E261系「サフィール踊り子」やN700S系新幹線がローレル賞を受賞するなど、新しい技術やデザインが高く評価されました。グッドデザイン賞も多くの車両やサービスが受賞しています。

2021年は、鉄道が社会インフラとしての役割を果たしつつ、新しい技術の導入やサービスの変革を進める一方で、自然災害や人的な要因によるトラブル、そして痛ましい事件に直面した年でした。こうした出来事を通して、鉄道事業者や利用者が共に、安全で快適な鉄道システムを維持・発展させていくことの重要性が改めて浮き彫りになりました。

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