5筋位取り中飛車

5筋位取り中飛車：序盤から主導権を握る力強い戦法

5筋位取り中飛車は、将棋における振り飛車戦法の一種です。その名の通り、駒組みの初期段階で5筋の歩を5五まで迅速に進めることを特徴としています。他の振り飛車戦法と異なり、角交換を回避する際、6六ではなく5五の地点で角道を塞ぎます。この5筋の歩を「位」と呼び、この位を確保することで中飛車側がより自由に駒を動かすことができるようになります。

5筋位取り中飛車の魅力

この戦法の大きな魅力は、序盤から積極的に主導権を握れる点にあります。5筋の位を取ることで、中飛車陣の可動域が広がり、手詰まりになりにくい堅牢な陣形を構築できます。また、ツノ銀中飛車のような特殊な形とは異なり、左金を7八や6八だけでなく、持久戦を意識して右側に配置することも可能で、バランスの良い陣形を実現できます。後手番でも損が少ないため、プロ棋士からアマチュアまで幅広い層に人気があります。

5筋位取り中飛車の歴史と変遷

1980年代には、明確な定跡がまだ確立されていなかったことから、静かな人気を博していました。1981年から1982年の統計では、5筋位取り中飛車が9局、5筋交換型中飛車が7局指されています。当時は、図1-1や図1-2のような陣形が多く用いられ、位を取ることで中飛車側の攻撃力を高めることが重視されていました。森安秀光九段は、先手四間飛車に対して居飛車側中央位取りを目指した際に、中飛車に転じて反撃する指し方を好んで用いていました。

近年の5筋位取り中飛車

近年は、ゴキゲン中飛車の隆盛により、5筋位取り中飛車の研究も大きく進展しています。特に、先手番では▲5六歩から始まる手順が注目されています。これは、後手の△3四歩▲5八飛と進むことで5筋の位を取りつつ、後手の作戦を牽制するためです。左銀を6八に持っていく際には、▲7七角と角行を先に進めるか、左金▲7八に沿えないと、相手の位取りに苦戦する可能性があります。

後手番では、△3二金型が以前から用いられてきました。天野宗歩は1845年に、△5五歩と積極的に飛車先交換を行う指し方を考案し、木村嘉孝九段などもこの指し方を用いていました。1988年頃からは、森雞二九段が後手番で5筋位取り中飛車を好んで指すようになり、「森流」として知られる独自の戦術体系を確立しました。森流は、5筋の位を必ずしも保持せず、飛車先交換を積極的に行い、飛車を浮かすことを目指す点が特徴です。しかし、羽生善治九段との対戦で▲5四同歩△同飛▲5七銀～▲6六銀と銀を繰り出された経験から、△5五歩のまま△5四飛と浮かす指し方へと変化させていきました。

超急戦と穴熊対策

超急戦においては、図4-1aのような局面で、△5二飛に先手▲2四飛と飛車先交換を行う展開があります。近年では、ゴキゲン中飛車の研究が進んだことで、▲2五歩に△3二金とはせずに△5二飛とする指し方が有効であることが判明しました。しかし、▲2四歩と飛車先交換されると、後手は飛車先を逆襲される展開を嫌うため、実戦例は少ないです。近年では▲5八金右から△5五歩と角道を止めさせてから飛車先交換をする指し方が出現しています。

穴熊対策として、藤井奈々女流が考案した急戦があります。これは、居飛車穴熊に組ませる前に中飛車側から積極的に動いて、速攻を仕掛ける戦法です。

その他の変種

「地下鉄飛車型」と呼ばれる、飛車を5九に引いてから8九に構える変種もあります。これは相振り飛車でも有効で、相手陣の進展性を奪うことができます。「飛騨の合掌造り」と呼ばれる、架空の5筋位取り中飛車戦法も存在します。これは、つのだじろうの漫画『5五の龍』に登場する陣形で、合掌造りの屋根を思わせる独特の形をしています。

まとめ

5筋位取り中飛車は、歴史と変遷を経て、現在も進化を続ける魅力的な戦法です。その柔軟性と攻撃性は、多くの棋士を魅了し続けています。今後も、新たな発見や研究が進むことが期待されます。

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