COM (雑誌)

漫画雑誌『COM』：多様な才能が花開いた伝説の舞台

『COM』（コム）は、1967年から1973年まで虫プロ商事から発行された漫画雑誌です。「COMICS（漫画）」「COMPANION（仲間）」「COMMUNICATION（交流）」の頭文字を組み合わせた誌名には、漫画を通じた新たな表現と交流への期待が込められていました。

創刊の背景と特徴

手塚治虫が「描きたいものが描ける雑誌」「新人を育てる雑誌」として創刊を主導。虫プロ友の会会報『鉄腕アトムクラブ』を発展させ、「まんがエリートのためのまんが専門誌」をキャッチフレーズに掲げました。同時期に創刊された『月刊漫画ガロ』を強く意識し、両誌はライバル関係と見なされていました。

手塚治虫の代表作「火の鳥」を看板作品とし、旧作の復刻や著名な漫画家による作品を掲載しました。石森章太郎の「サイボーグ009 神々との闘い」、永島慎二の「漫画家残酷物語」など、多彩な作品が誌面を飾りました。また、手塚治虫とトキワ荘に関わりのある作家たちによる競作漫画「トキワ荘物語」も発表されました。さらに、青柳裕介、あだち充、竹宮惠子など、後に漫画界を牽引する多くの新人作家を輩出しました。

読者投稿コーナー「ぐら・こん」

『COM』の特徴の一つとして、読者投稿コーナー「ぐら・こん」（グランド・コンパニオン）が挙げられます。真崎守が峠あかね名義で指導し、「日本全国のまんがマニアの集まりの場」として、漫画家、漫画家志望者、読者、批評家を繋ぐ役割を果たしました。

「ぐら・こん」は、漫画同人誌の発表の場を提供し、商業デビューへの道を開きました。また、全国の同人作家の交流を促進し、後のコミックマーケットへと繋がる重要な役割を果たしました。

「ぐら・こん」の全国支部

「ぐら・こん」は地域別に支部を設け、交流を深めました。東京支部、関東支部、北海道支部、中部支部、関西支部などが設立され、それぞれの地域で独自の活動を展開しました。

北海道支部：会誌『ミロ』を発行。喫茶店で「まんがマニアの集い！」を開催し、『北海タイムス』で紹介されました。
東京支部：グループ新聞『ぐら・こん東京』を発行。初代支部長は日野日出志が務めました。
関東支部：会誌『速報』、『VIVA』などを発行。新宿の喫茶店で定期的に会合を開きました。
中部支部：肉筆回覧誌『一番電車』を発行。各県ごとのグループに分かれて活動しました。
関西支部：会誌『ぐるーぷ』を出版。同人誌即売会を含む漫画イベント「まんがフェスティバル」を開催しました。

終焉とその後

『COM』は1971年末に休刊となり、「ぐら・こん」も事実上終了しました。しかし、「ぐら・こん」の遺志は受け継がれ、後のコミックマーケット開催へと繋がりました。また、漫画家のさくまあきらは、同誌への愛着から、同様の趣旨の雑誌『マンガハウス』を創刊しました。

虫プロ商事倒産後、雑誌は自然消滅しましたが、2011年、朝日新聞出版から『COM 〜40年目の終刊号〜』が書籍として発売されました。この書籍では、『COM』連載の再録、漫画家や編集者の証言、歴史的意義の検証などが行われています。

『COM』が残した足跡

『COM』は、手塚治虫の意欲的な試みのもと、多様な才能が交流し、新たな漫画表現が生まれた場所でした。新人作家の発掘、同人誌文化の発展、そしてコミックマーケットの誕生など、その影響は計り知れません。漫画史において重要な役割を果たした伝説の雑誌として、その名は今も語り継がれています。

主な執筆陣

青柳裕介
あすなひろし
石森章太郎
岡田史子
樹村みのり
楠勝平
坂口尚
ジョージ秋山
手塚治虫
永島慎二
長谷邦夫
萩尾望都
樋口太郎
日野日出志
真崎守
松本零士
宮谷一彦
諸星大二郎
矢代まさこ
やまだ紫

関連情報

同人誌
コミックマーケット
日本漫画大会
迷宮（同人サークル）

外部リンク

手塚プロダクション 【9月20日発売】COM 40年目の終刊号
朝日新聞出版 COM　40年目の終刊号
さいとうてるひこ・他 ぐら・こん - ウェイバックマシン
明治大学国際マンガ図書館米沢嘉博記念図書館: COM・ぐらこん全巻解説
「COM」という冒険――「花の24年組」の原点｜オトコ・マンガ／オンナ・マンガの世界
* 明治大学/米沢嘉博記念図書館「伝説の雑誌『COM』コミックス×コンパニオン×コミュニケーション」展

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