JR九州305系電車

305系電車の概要

305系電車は、2015年に九州旅客鉄道（JR九州）によって導入された直流通勤型電車です。この電車は、福岡市の筑肥線、唐津線、そして福岡市地下鉄空港線での相互直通運転において、老朽化した103系1500番台を置き換えるために設計されました。103系1500番台は長年使用されてきたものの、頻繁な故障が発生し、運行ダイヤにまで影響を及ぼしていたため、その改善が求められました。

開発とデザイン

305系電車の開発は、2014年7月31日にその概要が発表され、2015年2月5日に営業運転が開始されました。コンセプトは「人にやさしく、環境にやさしいスマートトレイン」であり、デザインは水戸岡鋭治が担当しました。製造は日立製作所が行い、この新型車両の導入により、福岡市地下鉄における全車両がワンマン運転に対応し、自動列車運転装置（ATO）を搭載することとなりました。

車両の特徴

305系電車の車体は、片側両開きで4扉を備えた20メートルのアルミ合金製で、ダブルスキン構造を採用しています。この構造により、車体の汚損や海風による塩害から保護されています。特に、車両の高さはホーム段差解消のため、床面から1125mmに設定されており、1号車のみ例外的に1141mmとなっています。これにより、バリアフリー対応にも配慮されています。また、運転室では、運転士の視野確保のために非常貫通扉が配置されています。

前面と側面の行先表示器にはフルカラーLEDが使用され、側面窓はUVカットガラスになっています。車両色は817系と同様の白一色に黒い前面というデザインです。

車内の設備

車両内は白を基調としたインテリアで、ロングシートを導入しています。座席はSバネ構造を採用しており、快適な乗り心地が追求されています。デザインは異なる11種類の柄があり、車内環境の安全性向上も考慮され、大型のポリカーボネート製袖仕切が配置されています。また、クハ305形の客室には、「ななつ星 in 九州」で使用されているフローリングが採用され、心地良い空間を演出しています。

乗客の利便性を考慮し、優先席や車いすスペースも設けられています。また、車内には自動放送装置が備えられており、地下鉄区間ではスマートドアの案内放送を行います。

技術的な革新

305系電車は、JR九州において新たに導入された押しボタン式開閉ドア（スマートドア）を特徴としており、無駄なドア開放を防ぎ、効率的な冷暖房効果が実現されています。このドアシステムは筑肥線の一部区間で運用され、運転士による開閉操作が必要な区間もあります。

また、滅多に見られないサマリウムコバルト磁石を使用した密閉式永久磁石同期電動機（PMSM）を採用しており、主電動機の損失を大幅に削減し、効率を向上させる技術革新を実現しています。さらに、回生ブレーキや新しい制御装置を搭載し、運転の安全性や効率を高めています。

運用状況

305系電車は、2015年の登場以来、筑肥線と地下鉄空港線の直通運転に使用されています。原則として地下鉄区間内での単独運用は行いませんが、運行トラブル時などには例外的に適用されることがあります。全般検査は福岡市交通局の姪浜車両基地で実施され、鉄道運営の効率化が図られています。

このように、305系電車は快適で環境にやさしい通勤手段として、現在も多くの通勤客に利用され続けています。

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