JR四国8000系電車

概要

8000系電車は、四国旅客鉄道（JR四国）が保有する直流特急形電車です。高速道路網の発達に対抗し、予讃線の高松駅 - 松山駅 - 伊予市駅間の電化開業に対応するため、2000系気動車をベースに開発されました。JR四国初の特急電車であり、製造は日立製作所と日本車輌製造が担当しました。

1992年3月に試作車が登場し、同年9月に岡山駅 - 新居浜駅間で特急「しおかぜ」、高松駅 - 新居浜駅間で特急「いしづち」として営業運転を開始しました。1993年3月には量産車が登場し、「しおかぜ」と「いしづち」の大部分を置き換え、所要時間を大幅に短縮しました。量産車登場前には、大阪駅で一般公開も行われました。

構造

ここでは、登場時の仕様について解説します。

車体

車体はオールステンレス構造で、窓下には水色のライン、客用扉部分には赤色のラインが配されています。正面窓下には赤とオレンジのラインが引かれています。全車両に2箇所のデッキとプラグドアが備えられ、時速5kmを超えると自動的にドアが閉まる安全装置が搭載されています。

先頭車には、流線型の8000形と8500形、貫通型の8400形と8200形があります。試作車には格納式連結器カバーがありましたが、量産車ではボルト止めに変更されました。また、流線型先頭車の前面窓は量産車で小型化され、表情が若干異なっています。

車内

座席の前後間隔は、グリーン車が1170mm、普通車が980mmです。仕切扉は電気式、連結器は密着連結器と電気連結器、自動放送装置は音声合成式で、LED式車内案内表示装置も備えています。これらは2000系気動車から引き継がれたものです。

トイレと洗面所は8000形、8150形、8400形、8200形、8500形に設置されています。8400形には車椅子対応座席と洋式トイレが設けられています。8000形と8500形には車内販売準備スペースとテレホンカード専用公衆電話がありましたが、現在は自動販売機に置き換えられています。

機器類

主回路にはVVVFインバータ制御（GTO素子）が採用されています。試作車は1つの制御装置で8つのモーターを制御する方式でしたが、量産車ではモーター出力を上げ、各モーターを個別に制御する方式に変更されました。

JR四国では、2000系気動車に続き制御付自然振り子装置が採用されました。試作車ではベアリングガイド式でしたが、量産車ではコロ式に変更されました。曲線での車体最大傾斜角は5度で、曲線半径600m以上で30km/h、800mで130km/hの速度で走行可能です。S編成は2両編成での運転も可能ですが、最高速度は120km/hに制限されます。

車体の傾斜によるパンタグラフの離線を防ぐため、架線追従装置が装備されています。パンタグラフは電動車だけでなく、制御車にも搭載されています。宇野線や本四備讃線では振り子装置は使用されません。

空調装置は、2000系では屋根上にありましたが、低重心化のため床下搭載に変更されました。屋根上には換気装置が設置されています。

試作車には、160km/hからの制動距離を600m以内とするための吸着式渦電流レールブレーキが装備されていましたが、量産車では採用されませんでした。試作車は高速走行試験で160km/hを達成し、「SPEED RECORD 160km/h」のステッカーが貼付されていました。

編成

2024年12月1日現在、L編成とS編成が運用されています。

改造

試作車の編成替え

試作車は編成替えが行われ、8001はL1編成に、8101+8201はS1編成に組み込まれました。

リニューアル（1回目）

2004年から内外装の大幅なリニューアル工事が実施されました。座席は「S-Seat」と呼ばれる難燃木材製に交換され、普通車指定席にはパソコンテーブルとコンセントが設置されました。また、全車両禁煙化により喫煙室が設置されましたが、後にフリースペースとなっています。外観も大幅に変更され、ドア周りにグラデーションシールが貼られました。

このリニューアル編成は、2005年度のグッドデザイン賞を受賞しています。リニューアル時に取り外された座席の一部は、キハ185系の原状復帰に使用されました。

減車対応改造

S2 - S6編成は、パンタグラフの撤去や8300形の取り外しを行い、2両単位での運行を可能にする改造が行われました。一部列車は2両編成で運転されていましたが、現在は3両編成に戻っています。試作車のS1編成は改造できず、2018年に廃車となりました。

リニューアル（2回目）

2023年度以降、電子機器の更新や客室設備の改良を目的とした2回目の大規模リニューアルが実施されています。座席の更新、コンセント増設、バリアフリー対応などが含まれます。グリーン席は2700系気動車のものに交換、普通車指定席は新型座席に交換、普通車自由席はモケットとクッションの張り替えが行われます。また、トイレの洋式化も進められています。

外観は、ドア周りのグラデーションシールが廃止され、車内側のドアにラッピングが施されています。制御機器も更新され、ハイブリッドSICのVVVFに交換されています。

2023年12月にはS4編成、2024年8月にはL2編成のリニューアルが完了し、営業運転を開始しました。

ラッピング車両

アンパンマン列車

2016年3月から、「アンパンマン」の内外装を施した「アンパンマン列車」が運行されています。L3編成とS3編成が改装され、普通席には「アンパンマンシート」が設置されています。

台鉄EMU800型仕様ラッピング

2017年3月から、台湾鉄路管理局（台鉄）との姉妹協定1周年を記念し、S6編成に台鉄EMU800型電車の塗装を施したラッピング列車が運行されました。同年6月には、台鉄側もEMU800型に8000系仕様のラッピング列車を運行しています。

運用

落成当初は、L編成が5両編成×5本と4両編成×1本、S編成が3両編成×5本でした。1997年からは「しおかぜ」と「いしづち」が多客時を除き8両編成で運転されるようになり、L2編成に1両、S6編成に3両が追加されました。

1998年からは岡山方面への所要時間短縮のため、宇多津駅で編成の向きを転換して運用していました。2014年に再度方向転換が行われ、グリーン車が1号車となっています。S1編成は2018年に廃車され、2024年10月現在、L編成30両、S編成15両が松山運転所に配置されています。

「しおかぜ」と「いしづち」の併結列車は、多客期には分割併合なしの8両編成で運転されます。一部列車にはS編成が使用されます。2024年3月からは「瀬戸大橋線ご利用3億人キャンペーン」のロゴが一部車両に掲出されています。

運用列車

特急「しおかぜ」：L編成とS編成が使用されます。
特急「いしづち」：L編成とS編成が使用されます。
特急「モーニングEXP高松」：L編成が使用されます。

臨時列車

過去には、お召し列車や団体専用列車としても運行されました。

同型車

オーストラリアのティルトトレインの一部は、8000系を基に設計されています。

脚注

注釈

出典

外部リンク

JR四国車両情報＜8000系特急電車＞
* JRおでかけネット「しおかぜ」

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