NEOSSat

NEOSSat（ニアアースオブジェクト宇宙監視衛星）

NEOSSatは、カナダ宇宙庁（CSA）が開発した地球近傍小惑星（NEO）の発見と監視を主な目的とする宇宙望遠鏡です。さらに、カナダ防衛研究開発研究所（DRDC）によって、スペースデブリの監視にも活用されています。この衛星は、地球に衝突する可能性のある小惑星を監視するだけでなく、地球周回軌道上のスペースデブリを追跡することで、宇宙空間の安全確保にも貢献しています。

開発の背景と特徴

NEOSSatの開発は、地球の公転軌道と交差する小惑星の監視と、地球周回軌道上のスペースデブリの監視という2つの重要な課題に対処するために始まりました。その名称は「Near Earth Object（地球近傍天体）」の頭文字「NEO」と「Space Surveillance（宇宙監視）」、「Satellite（衛星）」を組み合わせたものです。

カナダ宇宙庁は、低コストでの開発を目指し、2003年に打ち上げたMOST（Microvariability and Oscillations of Stars）の設計を基に、MMB（Multi-Mission Microsatellite Bus）という小型衛星用の汎用プラットフォームを採用しました。NEOSSatは、このMMBを初めて利用した実験機であり、MOSTのデザインを踏襲したスーツケース型の箱型形状をしています。ただし、望遠鏡のバッフルが突き出ている点が特徴的です。NEOSSatのサイズは、1.4 m×0.8 m×0.4 mです。

製造費用はカナダ宇宙庁とカナダ防衛研究開発研究所が分担し、Microsat Systems Canada社が主契約社として選定されました。衛星の各種テストはデビッド・フロリダ研究所が担当しました。当初は2010年の打ち上げが予定されていましたが、開発の遅延により、打ち上げ日は2013年2月15日に発生したチェリャビンスク州隕石落下事件により、地球への天体衝突に対する関心が高まった直後となりました。

観測機器

NEOSSatには、口径15cmのマクストフカセグレン式望遠鏡とCCDカメラが搭載されています。視野角は0.85度で、100秒の長時間露光を行うことで、19.5〜20等級の天体を捉えることが可能です。受光部には1024×1024ピクセルのCCDが2つ搭載されており、一つは観測用、もう一つは衛星の姿勢制御に使用されます。3軸姿勢制御により、安定した撮像が可能です。

打ち上げと軌道

NEOSSatは、インドが開発したPSLV-C20ロケットによって、地球観測衛星SARALのピギーバック衛星として打ち上げられました。2013年2月25日に太陽同期軌道に投入され、国際標識番号「2013-009D」が与えられました。

運用状況

打ち上げ後のNEOSSatの管制は、カナダ宇宙庁ミッションオペレーションセンターで行われています。搭載されたCCDカメラを使用して、地球近傍天体だけでなく、地球を周回する人工衛星やスペースデブリの監視も行っています。設計寿命は2年程度でしたが、現在も運用が継続されています。

地球近傍天体の発見・監視

地球近傍天体の発見・監視ミッションでは、太陽光の影響で地上からの観測が難しい、地球の公転軌道の内側を専門に観測します。太陽からの離角が40〜45度、黄緯±40度の範囲に望遠鏡を向け、アテン群、アポロ群、アティラ群といった小惑星を検出対象としています。観測データの解析は、カルガリー大学の科学オペレーションセンターが担当し、主任研究者はチクシュルーブ・クレーターの発見でも知られるアラン・ヒルデブラント博士です。

スペースデブリの監視

スペースデブリの監視ミッションは、カナダ防衛研究開発研究所の軌道監視システムの一環として行われています。MEO（中軌道）やGEO（静止軌道）を含む、高度15,000kmから40,000kmの範囲を移動する物体を監視し、3秒角の精度で追跡します。13.5等級の光を反射する物体、つまり40,000km先に位置する2mサイズのスペースデブリを検出できます。

参考文献

小谷太郎『宇宙の謎に迫れ！ 探査機・観測機器61』ベレ出版、2020年3月25日。ISBN 978-4-86064-611-0。

関連項目

潜在的に危険な小惑星
スペースデブリ
Sapphire (人工衛星) - NEOSSatと同時に打ち上げられたカナダ初の軍事衛星。中軌道～高軌道を周回する人工物体を監視する。

外部リンク

公式ホームページ
カナダ宇宙庁ホームページ'>カナダ宇宙庁ホームページ
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