NHK杯テレビ囲碁トーナメント

NHK杯テレビ囲碁トーナメント：歴史とドラマが織りなす早碁の世界

NHK杯テレビ囲碁トーナメントは、日本放送協会（NHK）と日本棋院が主催する、伝統ある囲碁の棋戦です。その前身である「NHK杯争奪囲碁トーナメント」を含め、長年にわたり多くの囲碁ファンに親しまれてきました。

創設と歴史

NHKがラジオ放送を開始した1946年、R2で囲碁番組がスタートしました。当初は囲碁講座や大手合の解説が中心でしたが、次第に本因坊戦や十番碁も取り上げるようになり、囲碁はNHKの定期的な番組として定着しました。

1953年、阿部眞之助の発案により、NHK杯テレビ囲碁トーナメントが創設されました。第1回は8名の棋士が参加し、持ち時間50分、秒読み30秒というルールで行われ、島村利博が初代優勝者に輝きました。初期は黒番が有利だったため、コミの調整が行われるなど、試行錯誤を経て現在の形へと発展していきました。

1961年4月には、NHK初の囲碁テレビ放送として、高川格とアマ本因坊・村上文祥による二子局が放送されました。1962年からは本棋戦もテレビ放送に切り替えられ、1965年には初級者向けコーナーが設けられるなど、内容が充実していきました。

大会方式

現在の本戦には、日本棋院・関西棋院に所属するトップ棋士50名が出場します。対局はNHKのテレビスタジオで収録され、毎年4月から翌年3月にかけて、毎週1局ずつ放送されます。番組では、対局の模様だけでなく、棋士の解説や読み上げも行われ、視聴者はプロの思考や戦略を深く理解することができます。

シード

前年度の優勝者・準優勝者、七大タイトル保持者、女流タイトル保持者などがシードとして優遇されます。シード順は大会ごとに定められ、公平なトーナメント戦が繰り広げられるように工夫されています。

対局ルール

対局は互先で行われ、先番には6目半のコミが課されます。持ち時間はなく、一手30秒の秒読み。ただし、1分単位で任意の10分間の考慮時間が設けられています。この秒読みというルールが、スピーディーで白熱した対局を生み出す要因となっています。

名誉NHK杯選手権者

NHK杯テレビ囲碁トーナメントで通算10回優勝すると、「名誉NHK杯選手権者」の称号が贈られます。これは、七大タイトル戦における名誉称号に匹敵するもので、囲碁界において非常に名誉な称号です。2022年度終了時点で、この称号を獲得しているのは坂田栄男のみです。

優勝記録

最多優勝は坂田栄男の11回。次いで大竹英雄、依田紀基、結城聡が5回優勝しています。連覇を達成した棋士も多く、その実力の高さがうかがえます。最年長優勝は坂田栄男（62歳）、最年少優勝は伊田篤史（20歳）です。

テレビ放送

対局は原則として事前収録の録画放送です。収録はNHK放送センターで行われ、約1ヶ月後に放送されます。過去には、手数が長くなった場合に放送時間が割愛されることもありましたが、近年ではAIによる形勢判断が導入されるなど、番組内容が進化しています。

数々のドラマ

NHK杯テレビ囲碁トーナメントでは、数々の名勝負やドラマが生まれてきました。中野泰宏九段がアタリに気づかず投了した「アタリ事件」や、依田紀基九段が名人位にもかかわらず出場しなかった騒動、今村俊也九段と村川大介七段の対局で起きた「石の下」など、記憶に残るエピソードは枚挙にいとまがありません。

まとめ

NHK杯テレビ囲碁トーナメントは、単なる囲碁の棋戦にとどまらず、囲碁界の歴史やドラマを伝える貴重な存在です。トップ棋士たちの熱戦や、番組の進化、そして数々のエピソードを通じて、囲碁の魅力を広く伝えています。

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