T-6 (航空機・2代)

T-6 テキサンII：世界各国で活躍する多用途練習機

T-6 テキサンIIは、アメリカ合衆国で1990年代初頭に運用が開始された双発ターボプロップ練習機です。その名称は、かつてアメリカで活躍したT-6 テキサン高等練習機に由来しますが、両機体の設計や製造メーカーは全く異なります。T-6 テキサンIIは、アメリカ空軍と海軍が推進した統合基本航空機訓練システム計画（JPATS計画）に基づき開発されました。この計画は、老朽化したT-37BとT-34C練習機を、共通の機体で更新することで、運用コストの削減と効率化を目指したものです。

開発と採用

JPATS計画への応募は、既存機種またはその派生型に限定され、レイセオン・ビーチ社がスイスのピラタス社が開発したPC-9をベースとしたPC-9 Mk.IIを提案しました。1995年、PC-9 Mk.IIは採用され、T-6 テキサンIIと命名されました。アメリカ空軍と海軍はそれぞれ数百機の発注を行い、1999年から配備が開始されました。タンデム複座式のコックピットレイアウトは、教官による生徒への指導を可能にする一方で、高性能ゆえに操縦には熟練を要する点も特徴です。そのため、アメリカ軍では、T-53Aなどの小型練習機を初歩的な訓練に使用しています。

設計と改良

T-6 テキサンIIはPC-9をベースとしながらも、米軍の要求を満たすため、約90%の設計変更が加えられています。プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPT6A-68エンジンを搭載し、出力は減格されたものの、性能向上とスロットルレスポンスの改善が図られました。機体構造も強化され、与圧化された胴体、改良された方向舵と昇降舵、強化された着陸装置、増加した燃料容量などが特徴です。コックピットは、バードストライク対策を施した強化風防、ゼロ・ゼロ射出座席、近代化された計器類などを備えています。これらの変更により、PC-9にはない風防前部のフレームや後部胴体下部のフィンが外見上の特徴となっています。

海軍向けのT-6B型はグラスコックピット、HUD、HOTASを採用し、主翼下にハードポイントを増設しました。さらに、T-6Bをベースに開発されたAT-6 ウルヴァリンは、軽攻撃機として運用が可能です。エンジンの出力を向上させ、1,415kgのペイロードとJDAM、ペイブウェイといった誘導爆弾、AIM-9 サイドワインダーミサイルを搭載可能にしています。また、コックピットには防弾措置が施され、ミサイル警報装置やチャフ・フレアディスペンサーも搭載されています。AT-6はアメリカ空軍の軽攻撃機計画にも参加しましたが、A-29 スーパーツカノに敗れています。

世界各国での採用

T-6 テキサンIIおよびその派生型は、アメリカ以外にも多くの国で採用されています。カナダではCT-156 ハーヴァードIIの名称で、イギリスではテキサン T.1の名称で使用されています。その他、アルゼンチン、コロンビア、ギリシャ、イスラエル、イラク、モロッコ、メキシコ、ニュージーランド、チュニジア、タイなど、世界中で幅広く運用されています。日本でも、2024年11月29日に航空自衛隊が次期初等練習機としてT-6を選定したと発表され、2030年からの運用開始が予定されています。

派生型

T-6Aの基本型に加え、海軍向けのT-6B、軽攻撃機型のAT-6ウルヴァリン、輸出型のT-6Cなど、様々な派生型が存在します。それぞれ、コックピットの装備、搭載武装、性能などが異なります。

スペック

最後に、T-6 テキサンIIの基本的なスペックを記載します。乗員は2名、全長は約10m、全幅は約10m、最大速度は約574km/hです。プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPT6A-68ターボプロップエンジンを搭載し、約820kWの出力を発揮します。

T-6 テキサンIIは、その高い汎用性と信頼性から、世界中で長年に渡り活躍を続けている練習機であると言えます。

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