TWAフライトセンター

TWAフライトセンター：ジェット機時代の象徴

TWAフライトセンター、またはトランス・ワールド航空フライトセンターは、ニューヨーク市クイーンズ区のジョン・F・ケネディ国際空港（JFK）に位置する第5ターミナルです。このターミナルは、もともとトランス・ワールド航空（TWA）専用ターミナルとして、建築家エーロ・サーリネンの設計により1962年に開業しました。2019年には、ヘッドハウス部分にTWAホテルが開業し、歴史的建造物としての価値と現代的なホテルとしての機能が融合しています。なお、ヘッドハウス後方の搭乗口を含むターミナル構造は2008年に取り壊され、新しいターミナルが建設されました。

このターミナルは、1994年にニューヨーク市歴史建造物に、2005年にはアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録されています。建築家のロバート・A・M・スターンは、このターミナルを「ジェット機時代のグランド・セントラル」と評しており、その独創的なデザインは今もなお多くの人々を魅了しています。

歴史

計画・設計・建設（1955年 - 1962年）

1939年に開港したアイドルワイルド空港（現JFK）では、55個のゲートを持つターミナル建設が計画されました。しかし、航空会社はこの計画が将来の航空需要に対応しきれないと反発。計画は改訂され、1955年には各航空会社が自社専用ターミナルを持つ大規模な計画が承認されました。この計画では、大規模航空会社が自社ターミナルを持ち、小規模航空会社は国際線ターミナルを使用することになり、計7つのターミナルが建設されることとなりました。

自社単独ターミナルを持つことになったのは、ユナイテッド航空（後にデルタ航空と共用）、アメリカン航空、パンアメリカン航空、イースタン航空、ナショナル航空、そしてトランス・ワールド航空の6社でした。

TWAは1955年、エーロ・サーリネンに自社ターミナルの設計を依頼しました。サーリネンは初期の設計案に不満を持ち、設計見直しのため期間延長を要求。1年もの時間をかけて問題を解決しました。その間に、他のターミナルは次々と建設され、1957年12月の国際線到着ターミナルを皮切りに、1959年10月にはユナイテッド航空・デルタ航空の第7ターミナル、翌11月にはイースタン航空の第1ターミナル、1960年にはアメリカン航空の第8ターミナルとパンアメリカン航空のワールドポート（第3ターミナル）が開業しました。

TWAフライトセンター（第5ターミナル）は、1962年にノースウエスト航空、ブラニフ航空、ノースイースト航空の3社共用の第2ターミナルと共に開業。さらに8年後の1969年にナショナル航空のサンドローム（第6ターミナル）が開業し、すべてのターミナルが供用開始となりました。

ターミナルは薄型シェル構造の先駆的な作品であり、屋根部分は鉄筋コンクリート造です。サーリネンは、屋根の設計にあたり、アンマン・アンド・ホイットニー社のチャールズ・S・ホイットニーとボイド・G・アンダーソンに協力を仰ぎました。彼らは、マサチューセッツ工科大学講堂のクレスゲ・オーディトリアムやワシントン・ダレス国際空港のメインターミナルの設計にもサーリネンと共に携わっていました。

サーリネンの事務所では、ケヴィン・ローチ、シーザー・ペリ、ノーマン・ペトゥラ、エドワード・サードらが重要な共同設計者として活躍しました。また、インテリアデザインは主にウォーレン・プラートナーが担当しました。サーリネンの妻であるアリーン・サーリネンは、ターミナルのマーケティング活動をTWAと協力して行いました。

サーリネンはターミナル完成前の1961年に亡くなりましたが、ケヴィン・ローチとジョン・ディンクルーが跡を継ぎ、建設を主導しました。

トランス・ワールド航空ターミナル時代（1962年 - 2001年）

1962年5月28日、TWAフライトセンターは竣工しました。同年、サーリネンはAIAゴールドメダルを受賞。翌1963年12月には、アイドルワイルド空港がジョン・F・ケネディ国際空港へ改称されました。

ターミナルには、ボーディング・ブリッジ、監視カメラ、中央パブリック・アドレス・システム、手荷物受取所、電気式反転フラップ式案内表示機、荷物重量秤などの設備が備わっていました。また、飲食店として、コンステレーション・クラブ、リスボン・ラウンジ、パリ・カフェなどの店舗がありました。

しかし、航空需要の増加に伴い、ターミナルの旅客収容量が不足し、通路付近にターミナルゲートがあるために搭乗券の集中管理やセキュリティチェックが困難であるという問題が浮上しました。これらの問題に対処するため、ローチ-ディンクルー社が新しい発着コンコースとラウンジを設計。フライト・ウィング・ツーとして知られるこの新しい区画は、1969年に完成し、当時登場し始めたボーイング747などのワイドボディ機に対応しました。1994年には、ターミナルはニューヨーク市歴史建造物に登録されました。

閉鎖と国家歴史登録財登録（2001年 - 2005年）

TWAは1990年代から財政状況が悪化し、2001年にアメリカン航空に吸収合併されました。これに伴い、ターミナルは2001年10月に営業を終了しました。JFKの運営者であるニューヨーク・ニュージャージー港湾公社は、ヘッドハウスをレストランや会議センターに改装し、既存のターミナルを新しいターミナルで取り囲む計画を提案しましたが、ニューヨーク市立芸術協会や建築家フィリップ・ジョンソン、ロバート・A・M・スターンなどから反対を受けました。

彼らは、ターミナルを別の建物で包むと、その精神が失われると主張しました。2004年には、閉鎖中のターミナルで「Terminal 5」という美術展が開催されましたが、セキュリティ上の問題からわずか1分で中止されました。2004年、ニューヨーク市立芸術協会はターミナルをアメリカ合衆国で最も危険にさらされている11の歴史的物件のリストに追加しました。

2005年9月7日、ターミナルはアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録されました。

ジェットブルー航空ターミナル（2005年 - 現在）

2005年12月、ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社はジェットブルー航空用の新ターミナルの建設を開始しました。ジェットブルー航空は当時空港内で最も成長していた航空会社で、新ターミナルは第5ターミナルのヘッドハウス後方の搭乗口部分を取り壊して新築されました。新ターミナルはゲンスラーが設計し、搭乗ゲート26個を備え、1日250便の発着に対応しています。

当初、フライト・ウィング・ツーの出発ラウンジは改修される予定でしたが、新ターミナル建設の支障となるため一時的に移動され、その後取り壊されました。第5ターミナルは2008年10月22日にリニューアルオープンし、ジェットブルー航空はターミナルのリニューアルを記念したロゴを作成しました。

新ターミナルには、搭乗口の他、ショッピングエリアや子供用のプレイエリア、無料Wi-Fi、駐車場などが完備されました。アメリカ同時多発テロ以降に初めて建設されたJFKのターミナルであるため、大規模なセキュリティチェックポイントも備えています。新ターミナルの入口は、サーリネンのヘッドハウスを三日月形に囲み、ヘッドハウスから搭乗口への象徴的な連絡通路も残されています。

ロバート・A・M・スターンは、サーリネンの設計したターミナルを「ジェット機時代のグランド・セントラル」と評し、実用的な新ターミナルを「超効率的」な「人間のスループットの記念碑」と評しました。

第5ターミナルの再開業時、ヘッドハウスの改修工事は完了しておらず、用途も決まっていませんでしたが、会議センター、航空博物館、レストラン、チェックインカウンターなどが候補に挙がっていました。

ヘッドハウスのホテルへの改装（2016年 - 2019年）

2015年4月、ウォール・ストリート・ジャーナルは、ジェットブルー航空とそのパートナーがヘッドハウスをホテルへ改装する権利について交渉中であると報じました。2015年7月、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは、ヘッドハウスがTWAホテルとして改装されると発表しました。

TWAホテルの建設は2016年12月に開始され、ヘッドハウスを保存しながら周囲に追加区画が建設されました。2019年5月15日、TWAホテルが開業し、505室の客室、会議スペース、展望デッキなどが備えられました。