キンカン

キンカン：甘酸っぱい小さな果実の知られざる魅力

キンカン（金柑、学名：Citrus japonica または Fortunella 属）は、ミカン科の常緑低木で、中国の長江中流域が原産地とされています。日本へは古くから伝わり、温暖な地域で広く栽培されています。直径2～3センチ[[メートル]]の小さな果実は、甘酸っぱく、独特のほろ苦い後味が特徴です。生で皮ごと食べられる品種もあり、その多様な利用方法から、古くから人々に親しまれてきました。

キンカンの名前の由来と分類

黄金色の小さなミカンを意味する中国名から「金橘」「金柑」という名前が生まれ、日本でも音読みされてキンカンと呼ばれるようになりました。俳句では秋の季語として用いられています。英語の「Kumquat」や「Cumquat」は、中国語の広東語読み「gam1gwat1」に由来します。

キンカンの分類は複雑な歴史を持っています。カール・ツンベルクは1784年の『日本植物誌』で Citrus japonica と命名しましたが、後に新属 Fortunella として分類されました。しかし、近年の遺伝子解析は、キンカンがミカン属の系統に含まれることを示唆しています。そのため、現在でも学名については議論が続いています。

日本で標準和名として使われている「キンカン（Citrus japonica）」は、別名マルミキンカンやマルキンカンとも呼ばれます。その他、ナガキンカン、ネイハキンカン、マメキンカンなど、様々な種類が存在します。一般的に栽培されているのはナガキンカンで、果実が丸いものをマルキンカンと呼びます。マルキンカンは樹高約2メートル、ナガキンカンは樹高約3メートルで、枝に棘があるかないかなども違いとして挙げられます。

キンカンの利用方法

キンカンの果実は、食用と薬用の両面で利用されてきました。10～11月頃に熟した果実が収穫されます。

食用

キンカンは、皮ごと、あるいは皮だけを食べることもできます。果皮の内側の白い部分（中果皮）には、苦味と甘味が含まれています。果肉は酸味が強いのが特徴です。砂糖漬け、蜂蜜漬け、甘露煮、マーマレードなど、様々な加工品として楽しまれています。また、甘く煮てから砂糖漬けにし、ドライフルーツとして保存することもあります。

キンカンの砂糖漬けを作るには、果実に切れ目を入れて軽く茹でてから種を取り除き、砂糖と水で煮詰めて陰干しをします。

薬用

マルミキンカンとナガミキンカンは、どちらも薬用として利用されてきました。「金橘」とも呼ばれ、民間療法では咳や喉の痛みに効果があるとされています。果実には有機酸、糖分、灰分、ヘスペリジン（ビタミンP）、精油などが含まれています。有機酸には制菌作用、ヘスペリジンには毛細血管の血液透過性増大、抗菌、利尿作用などがあるとされています。精油には、延髄中枢を刺激して血液循環を促進し、発汗作用を高める効果があるとされています。

民間療法では、風邪や咳の症状に、砂糖漬けを熱湯で煮出したものを飲む方法や、生の果汁に生姜や蜂蜜を加えて熱湯で割って飲む方法などが知られています。また、疲労回復や健康増進のために、焼酎に漬け込んだキンカン酒を飲む方法も伝えられています。ただし、手足が常に火照っているような人は、キンカン酒の連用を避けるべきです。

観賞用

キンカンは、観賞用としても人気があります。剪定に強いことから、生垣や鉢植え、盆栽などにも利用されています。特に、中国の広東省や香港では、旧正月にキンカンの鉢植えを飾る習慣があります。

キンカンの種類と品種

キンカン属には4～6種があるとされ、その分類には諸説あります。主な種類として、マルミキンカン、ナガミキンカン、フクシュウキンカン、ネイハキンカンなどがあります。近年では、種なしの品種「ぷちまる」や、極甘品種の「スウィートシュガー」などが開発されています。また、他の柑橘類との交配種であるライムクアット、サンクアット、オレンジクアットなども存在します。

キンカンの栽培と生産

日本でのキンカンの主な産地は宮崎県と鹿児島県です。2010年の収穫量は3,732トンに達し、宮崎県がその大部分を占めています。近年では、高品質なキンカン生産のためのブランド化も進められています。例えば、宮崎県産の「たまたま」や「たまたまエクセレント」、鹿児島県産の「春姫」などは、糖度や大きさなどの基準を満たした高品質なキンカンに与えられるブランド名です。

まとめ

キンカンは、その小さな体に、甘酸っぱい風味と独特のほろ苦さ、そして薬効まで秘めた、多様な魅力を持つ果実です。生食から加工品、薬用まで、幅広い用途で活用されてきた歴史と、近年における品種改良やブランド化の取り組みは、キンカンがこれからも人々に愛され続けることを示しています。

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