オーディオケーブル

オーディオケーブルについて



オーディオケーブルは、オーディオ再生機器とスピーカーなどの音響機器の間で、音声信号を伝送するために用いられるケーブルです。音声信号の伝送方式には、デジタル信号とアナログ信号の2種類があり、それぞれに適したケーブルが使用されます。

近年では、ケーブルを必要としないBluetoothのような無線伝送技術も普及していますが、音質を重視する場合には、依然としてケーブルが重要な役割を果たしています。

デジタルケーブル



デジタルオーディオ信号を伝送するケーブルは、デジタルケーブルと呼ばれます。デジタルケーブルには、電気信号を伝送する同軸ケーブルのほか、光ファイバーを用いた光ケーブルも利用されています。

光ケーブル：S/PDIF（TOSLINK）やMADIなどの規格で使われ、電気的な絶縁が可能です。しかし、同軸ケーブルに比べてジッターが多く、音質に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
 HDMIケーブル：映像信号を伝送するHDMIケーブルも、音声出力に転用されることが増えています。特にHDMI ARC/eARCは、テレビとアンプ内蔵スピーカーとの接続で広く利用されています。映像信号に付随する音声信号は、BCH符号による誤り訂正が行われています。
USBケーブル：汎用伝送規格であるUSBにも、デジタルオーディオ向けのUSB Audio Classが存在します。
 IEEE 1394 (FireWire)：かつてはデジタルオーディオの伝送に使われていましたが、現在はあまり利用されていません。


アナログケーブル



アナログオーディオ信号を伝送するケーブルは、アナログケーブルと呼ばれます。アナログ信号は、デジタル信号に変換するADC（アナログ-デジタル変換回路）や、デジタル信号をアナログ信号に変換するDAC（デジタル-アナログ変換回路）を経て扱われます。

アナログケーブルの端子には、RCA端子、フォーンプラグ（ミニジャック）、XLRコネクターなどが使われています。ポータブルオーディオ機器では、リケーブルに対応した端子が用いられることもあります。

アナログケーブルの構造と特性


アナログケーブルでは、信号線の導体を流れる電気信号のうち、高周波成分ほど導体の外周に偏って流れる表皮効果が発生します。このため、周波数によって電気抵抗が異なり、高周波成分が減衰する現象が生じます。

単線：単一の導体で構成されたケーブルです。導体が太いほど電気抵抗は小さくなりますが、表皮効果による周波数間の抵抗差は大きくなります。この問題を軽減するために、導体の表面に導電性の高い素材をコーティングしたケーブルも存在します。
 撚り線：複数の導体を撚り合わせたケーブルです。撚り線では、個々の導体を絶縁することで表皮効果を抑制したリッツ線がよく使われます。リッツ線は、表皮効果だけでなく近接効果も抑制できますが、循環電流の問題が生じるため、導体の配置を工夫する必要があります。
* 複合撚り線：異なる太さの導体を組み合わせて撚り合わせたケーブルも存在します。

また、ケーブルにはインダクタンスによって誘導リアクタンスが生じ、高周波で減衰や位相シフトが発生します。導体間の間隔が広いケーブルでは、相互インダクタンスが大きくなり、位相シフトも大きくなります。

オーディオ出力においては、ケーブルやスピーカーの周波数特性による減衰や位相シフトを、ソフトウェア的に補正することが可能です。また、スピーカーの振動板を制御するアンプでは、スピーカーの自由振動を抑制するために、ケーブルの減衰を少なくすることが重要になります。

ノイズ対策としては、金属シールドを施した同軸ケーブルが使われます。また、ノイズに弱いアンバランスケーブルと、ノイズに強いバランスケーブルが存在します。

ケーブルの素材



導体


アナログケーブルの導体には、電気抵抗の低いグラフェン、銀、銅などが使われます。特に銅は、無酸素銅 (OFC)や高純度無酸素銅 (OCC) など、純度の高いものが用いられます。純度はNで表され、数値が高いほど純度が高いことを意味します。しかし、導電性では純度の高い銅よりも、銀メッキ銅や純銀の方が優れているとされています。

絶縁体


絶縁体は、導体間の短絡を防ぐために使用されますが、同時にケーブルの静電容量を増加させる要因にもなります。静電容量は、信号を濁らせる原因となるため、絶縁体の誘電率が低い素材が望ましいとされます。

絶縁体の素材には、ポリテトラフルオロエチレン（PTFE、テフロン）、低密度ポリエチレン (LDPE) などが使われます。また、シルク（絹）を使用したケーブルも登場しています。しかし、一般的には、ポリ塩化ビニル (PVC) がまだ広く使用されています。

ケーブルメーカーQEDによれば、ケーブルの音質には、導体の素材よりも絶縁体の素材や形状の方がより重要であるとされています。

はんだ


プラグと導体の接続には、はんだが用いられます。音響用のハンダは、純度の高い錫や、銀や銅を多く配合したものが使われ、導電性を高めています。

その他の考慮事項



ケーブルを選ぶ際には、音質だけでなく、取り回しの良さや耐久性も考慮する必要があります。また、近年では、ワイヤレスでリケーブルできるデバイスも登場しています。

このように、オーディオケーブルは、音質に大きく影響を与える要素であるため、適切なケーブルを選ぶことが、良質な音楽体験につながると言えるでしょう。

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