ランペルール

『ランペルール』（L'EMPEREUR）は、1990年7月23日に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売されたPC-8801用歴史シミュレーションゲームです。フランス語で「皇帝」を意味するタイトルが示す通り、プレイヤーはナポレオン・ボナパルトとなり、ヨーロッパ全土の制覇を目指します。本作は、光栄の歴史シミュレーションゲームの中でも、特に補給条件や戦闘時の混乱といった要素が加味されており、中級者から上級者向けの難易度となっています。特に隠しシナリオである「エルバ島脱出」の難易度は、同社のシミュレーションゲームの中でも屈指の高さで知られています。

開発は光栄が担当し、プロデューサーはシブサワ・コウ氏、音楽はFM TOWNS用ソフト『ファイナルブロー』を手掛けた石黒彰氏が担当しました。PC-88SR版の発売後、他の国産パソコン各機種や欧米のPC/AT互換機|PC_AT互換機にも移植され、1991年にはファミリーコンピュータ版も発売されました。その後、2003年にはPC-9801版を復刻収録した『コーエー25周年記念パック Vol.3』が発売され、2005年には「コーエー定番シリーズ」としても単品発売、有料ブラウザゲーム版が「my GAMECITY クラシックゲーム館」にて提供されました。

ゲーム内容

プレイヤーはナポレオンとなり、ヨーロッパ全土の制覇を目指します。当時の光栄作品としては珍しいシングルプレイ専用となっています。ゲーム開始時、ナポレオンはフランス共和国の一都市の司令官ですが、功績に応じて最高司令官、第一執政、そして皇帝へと地位が上昇し、行動の自由度が増していくキャンペーン形式を採用しています。各地位でのスタートも可能です。

地位の上昇に伴い、外交や人事など、考慮すべき要素も増えていきます。戦闘画面では、地形の高低差が表現されており（極端な高低差の移動は不可）、平地からの砲撃は山に遮られるなどの要素があります。また、歩兵・騎兵・砲兵の3兵種にはそれぞれ特殊能力が存在し、「混乱」の発生や「橋梁」の建設・爆破といった要素も盛り込まれています。

海戦は数値処理のみですが、各海域（大西洋、北海、地中海、バルト海の4海域）ごとの保有船舶数によって「制海権」が発生します。制海権がないと、上陸に失敗したり、地上戦で敗北した際に撤退ができないといった影響があります。

ヨーロッパ全土は46の都市で構成されており、全都市の占領がゲームの目標です。都市ごとに史実に即した特徴があり、例えばロンドンは「産業革命」進行中のため工業製品が豊富で海軍の成長率が高い一方、「囲い込み運動」の影響で農業力が低く、陸軍が弱いという設定です。パリなどフランスの都市は農業力が高く陸軍を編成しやすい反面、工業力が低く、物資を輸入に頼らざるを得ません。

史実同様、「大陸封鎖」でイギリス向けの農業製品を締め出すことが可能であり、外交が状況を左右します。ロシアはイギリスの工業製品を必要とするため、「大陸封鎖」を破ろうとする傾向があります。

都市によっては、スペイン住民のゲリラ闘争やロシア軍の焦土作戦など、自軍に損害を与えるイベントが発生することもあります。スペインやロシアでは、ゲリラやコサックにより都市間の補給が滞る可能性が高くなります。

シナリオクリア（地位上昇）の条件に関連する勝利条件都市は、ロンドン、ストックホルム、コペンハーゲン、アムステルダム、ベルリン、ワルシャワ、ペテルスブルク、モスクワ、ウィーン、ミュンヘン、パリ、ヴェネツィア、ローマ、イスタンブール、リスボン、マドリードです。

シナリオ

1. 常勝将軍の登場（1796年3月）
プレイヤーは司令官。部隊の訓練、都市の整備、パリの総裁政府に対する軍備・資金の陳情が可能。ナポレオンは敵対国と隣接する都市から移動できません。
フランス革命後の混乱の中、ナポレオンはイタリア方面司令官に任命されます。
クリア条件：フランス領を9都市にする。

2. 権力への意志（1798年3月）
プレイヤーは最高司令官。フランス国内を自由に移動可能。エジプト遠征後にパリへ凱旋すると第一執政に。
ナポレオンはオーストリア軍を破り、ミラノ攻略に成功。その後、ローマまで南下しますが、総裁政府の不興を買いイギリス方面軍総司令官へ転属となります。
クリア条件：フランス領を12都市にするか、勝利条件都市を4都市占領した上でパリに凱旋し、元老院と五百人会議を説得する（隠しイベント「ロゼッタ・ストーンの発見」でも可能）。

3. 革命の終結（1802年3月）
プレイヤーは第一執政。外交・補給都市の指定権限が発生。司令官からの陳情を受けるようになります。
エジプトから帰還したナポレオンはブリュメール18日のクーデターで総裁政府を打倒。新たに執政政府を樹立し、自ら第一執政に就任。第二次対仏大同盟との戦いを経て、終身執政に登り詰めます。
クリア条件：フランス領を18都市にするか、勝利条件都市を8都市占領した上でパリに凱旋する。

4. ナポレオン帝国の栄光（1806年3月）
プレイヤーは皇帝。親族を配置した都市に直接命令できますが、外交は不可となります。
1804年、ナポレオンは皇帝となります。イギリスとの対立が激化し、オーストリアとロシアが西を目指す中、アウステルリッツで連合軍を打ち破ります。その後、兄弟をナポリとオランダの王位に就け、神聖ローマ帝国は崩壊します。
クリア条件：地図上の全都市を占領する。

5. エルバ島脱出（1815年3月）
プレイヤーは皇帝。フランスは支配地域の大半を失い、周辺国と敵対関係にあるという厳しい状況です。
ロシア遠征での大敗北後、ナポレオンはエルバ島へ流刑になりますが、ウィーン会議の混乱に乗じて脱出し、帝位に復帰します。
クリア条件：地図上の全都市を占領する。

登場人物と国家

以下の14ヶ国が登場します。

フランス: ナポレオン、マッセナ、ダヴー、ネイ、スルト、ミュラ、ベルナドットなど、多くの元帥や将軍が登場。親族は司令官として配置可能。
イギリス: ウェリントン公、ジョージ3世、小ピットなど。ネルソンのエピソードがゲームイベントとして登場。
オーストリア: フランツ2世、カール大公、シュワルツェンベルク、メッテルニヒなど。
プロイセン: フリードリヒ・ヴィルヘルム3世、ブリュッヘル、シャルンホルストなど。
ロシア: アレクサンドル1世、クトゥーゾフ、バルクラーイ、バグラチオンなど。
スペイン: カルロス、フェルナンド、マヌエル・デ・ゴドイなど。ゲリラ戦を得意とする。
オランダ: ウィレムなど。
ポルトガル: ジョアン、フォルザスなど。
デンマーク: クリスチャン、フレゼリクなど。
スウェーデン: グスタフ3世、カルル13世、フェルセンなど。
オスマントルコ: セリム3世、マフムト2世など。ナポレオン戦争後の民族運動指導者が登場。
バイエルン: マクシミリアンなど。
ヴェネツィア: マニンなど。
ナポリ: カロリーナなど。

音楽

1990年にサウンドトラックCDが発売されています。収録曲は以下の通りです。

1. オープニング〜英雄の誕生〜
2. 厳命発令
3. 気高き王国―プロイセン―
4. 進撃〜サン＝ベルナールを越えて〜
5. イベリアの夕暮れ―スペイン―
6. 窮地〜トラファルガー海戦〜
7. 朝もやのテムズ川―イギリス―
8. 終焉〜ワーテルローの大敗〜
9. コサック達の宴―ロシア―
10. 戴冠〜新たなる治世〜
11. セーヌの愁い―フランス―
12. 激戦〜雌雄の行方〜
13. エンディング〜皇帝の戴冠〜
14. ランペルール 愛のテーマ BELIEVE IN YOUR LOVE

評価

ファミリーコンピュータ版は、ゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」で合計25点（満40点）、『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」では19.4点（満30点）の評価を得ています。

関連書籍

『ランペルール ハンドブック』（1990年11月初版、ISBN 4906300227）
『ファミコン版ランペルール ガイドブック』（1991年5月初版、ISBN 4906300324）

外部リンク

復刻PC98版公式サイト - コーエー定番シリーズの1本として発売。元々はコーエー25周年パックVol.3に収録。
my GAMECITY クラシックゲーム館
L'Empereur (英語)

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