上利別駅

上利別駅

上利別駅（かみとしべつえき）は、かつて北海道足寄郡足寄町上利別本町に位置していた北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線の鉄道駅でした。国鉄およびJR北海道の池北線時代には、「カト」という電報略号が使用され、事務管理コードは▲110509が付与されていました。2006年の路線廃止に伴い、その役目を終えました。

歴史的背景

上利別駅は、隣接する仙美里駅と共に、かつてこの地域にあった陸軍軍馬補充部十勝支部の最寄り駅として重要な役割を担っていました。この軍馬補充部には、後にオリンピックの馬術競技で金メダルを獲得し、「バロン西」として知られる西竹一も一時勤務していたことがあります。そのため、両駅は、将官や皇族、大臣といった特別なゲストを迎えるための配慮から、一般的な駅舎と比較して格段に大きな規模で建設されていました。駅前には、かつて貴賓を乗せた車が乗り付けるための車寄せがあった名残として、広々とした空間が確保されていました。このような歴史的背景は、地方の一駅としては非常に珍しい特徴と言えるでしょう。

沿革

上利別駅の歴史は、明治時代にさかのぼります。

1910年（明治43年）9月22日：鉄道院網走線の一部として、池田駅から淕別駅（現在の陸別駅）までの区間が開業したのに伴い、一般駅として開設されました。
1911年（明治44年）11月18日：路線の名称が変更され、池田駅から網走駅までの区間が網走本線の一部となりました。
1935年（昭和10年）11月：駅舎が改築され、より大きな規模の建物となったとされています。
1949年（昭和24年）6月1日：公共企業体である日本国有鉄道（国鉄）に移管されました。
1961年（昭和36年）4月1日：路線の呼称が変更され、池北線の駅となりました。
1977年（昭和52年）4月28日：貨物および荷物の取り扱いが廃止されるとともに、旅客業務が無人化されました。ただし、列車の運行に必要な運転要員は引き続き配置されていました。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄の分割民営化により、北海道旅客鉄道（JR北海道）に承継されました。
1989年（平成元年）6月4日：特定地方交通線に指定されていた池北線が第三セクター鉄道に転換されたことに伴い、北海道ちほく高原鉄道に承継されました。
1997年（平成9年）3月1日：完全に無人駅となりました。
2006年（平成18年）4月21日：ふるさと銀河線の廃線に伴い、96年の歴史に幕を下ろし、駅として廃止されました。廃止後、駅舎は足寄町の所有となりました。
2015年（平成27年）秋：大型の暴風雨により、長年建っていた駅舎の屋根が大きく破損しました。
2016年（平成28年）4月 - 6月：破損した駅舎が解体されることとなりました。解体された部材の一部は、旧深名線の沼牛駅の修繕に活用されたことが特筆されます。

駅名の由来

駅名は、近傍を流れる利別川の上流部に位置していたことに由来しています。

駅構造

上利別駅は、列車が行き違うことが可能な相対式ホーム2面2線を持つ地上駅でした。駅舎は歴史を感じさせる木造建築で、構内にはかつて足寄高等学校の生徒たちが描いた絵が飾られ、地域に愛される雰囲気を醸し出していました。

駅周辺

駅の周囲には上利別の集落が形成されており、住民生活を支える商店なども点在していました。また、駅のすぐそばには製材所があり、かつては貨物輸送などで鉄道と連携していたものと思われます。

主な周辺施設・道路としては、以下のものがありました。

北海道道621号足寄原野上利別停車場線
国道242号
本別警察署上利別駐在所
上利別郵便局
* 十勝バス「上利別」停留所

廃止とその後

ふるさと銀河線の廃止に伴い、上利別駅は静かにその歴史を終えました。駅舎はしばらくの間地域に残されていましたが、自然災害による損傷もあり、残念ながら解体されました。部材が他の廃駅の保存に活用されたことは、鉄道遺産を次世代に繋ぐ小さな取り組みと言えるでしょう。かつて軍馬輸送や貴賓送迎の拠点として賑わい、地域の生活を支えた上利別駅の姿は、今では人々の記憶の中にのみ存在しています。

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