人相占い

人相占い（人相学・観相学）とは

人相占い、または人相学、観相学とは、人の顔つき、骨格、体つきなど、身体的な特徴から、その人の性格や運勢を読み解く占いの一種、あるいは学問の一分野です。西洋と東洋それぞれに長い歴史と伝統があり、独自の発展を遂げてきました。

現代では、人相というと、特に顔の相を指すことが多いですが、本来は身体全体を対象とするものでした。人相学は、単なる占いとしてだけでなく、古代から人間の理解を深めるための手段として、様々な文化に影響を与えてきました。

西洋の人相学

ヨーロッパでは、古くから人相学が盛んに行われていました。古代ギリシャでは、ヒポクラテス、アリストテレス、プラトンといった著名な哲学者たちが、人相学の基礎を築いたとされています。特にアリストテレスの門下生たちは、『人相学』という書物を著し、ソクラテスの顔を観相したゾピュロスという人相学者の存在も伝えられています。

18世紀には、スイスのラヴァーターが、それまでに存在した多くの人相学文献をまとめた『人相学断章』を著しました。この著作は、人相学の理論を体系化し、その後の研究に大きな影響を与えました。また、ドイツのクレッチマーは、現代科学の側面から人相を研究し、人相と性格の関係に新たな視点をもたらしました。

中国の人相占い

中国における人相占いは、「相人」「相人術」と呼ばれ、占術の一分野として位置づけられています。その歴史は非常に古く、『春秋左氏伝』に、周の内史である叔服が魯の公孫敖の子を観相したという記述が残っています。また、孔子の顔を観相した姑布子卿や、『荀子』に登場する唐挙も、古代中国の人相術家として知られています。

1970年代には、馬王堆漢墓から漢代の相書であると推定される『木人占』が出土しました。これにより、古代中国の人相術がより具体的に理解できるようになりました。明清時代には、相人術は様々な文化に影響を与え、『金瓶梅』などの小説において重要な役割を果たしたり、『神相全編』などの相書が引用されたりしました。また、贈答詩、舞台役者の化粧、肖像画の画論、軍隊の作戦など、多岐にわたる分野で人相術の理論が活用されました。

日本の人相学

日本では、平安時代に中国の相書が輸入され、図書目録『日本国見在書目録』にその題名が記録されています。日本最古の相書とされるのは、室町時代の天山阿闍（てんざんあじゃ）著の『先天相法』です。

江戸時代前期の元禄時代には、アジアから多くの相書が輸入され、人相学が一般庶民の間にも広がりました。浮世絵においても、人物の性格を表すために人相学の知識が活用されるようになり、庶民の娯楽の一つとして浸透していきました。江戸時代後期には、水野南北が人相学の一家を成しました。明治時代に入ると、目黒玄竜子が人相学を研究し、二代目・目黒玄竜子が体系化しました。

人相学の現代的意義

人相学は、歴史の中で様々な形で発展し、人々の生活や文化に影響を与えてきました。現代においては、科学的な根拠が不明確な部分もありますが、それでもなお、人相学は人間の性格や運勢を理解する上で興味深い視点を提供してくれます。また、コミュニケーションや自己理解のツールとして活用する人もいます。

関連書籍

八木喜三朗『人相学入門』保育社、1970年
相田満『観相の文化史』勉誠出版、2021年
小川陽一「明代小説における相法」『日用類書による明清小説の研究』研文出版、1995年
坂出祥伸「古代の人相術」『「気」と養生―道教の養生術と呪術』人文書院、1993年
丁宗鐵『顔の読み方: 漢方医秘伝の観相術』平凡社、2019年

関連項目

藤木相元
岡井浄幸
骨相学
手相
福耳
* 重瞳（貴人の相）

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