六浦

六浦（むつうら）

六浦は、神奈川県横浜市金沢区に位置する地名です。かつては武蔵国久良岐郡に属し、江戸湾の港町として栄えました。現在は「むつうら」と呼ばれていますが、以前は「むつら」と呼ばれ、中世の文書には「六面」「六連」とも記されています。本項では、隣接する六浦町についても合わせて解説します。六浦町は住居表示未実施区域であり、六浦は住居表示実施済み区域です。

地理

横浜市の最南端に位置し、南東は横須賀市、南西は逗子市に隣接しています。中部・北部は六浦1～5丁目、東部は六浦東1～3丁目、南部は六浦南1～5丁目として住居表示が実施されています。南西部の六浦町は住居表示未実施で、霊園などが存在し、人口は0人です。東西に侍従川が流れ、平潟湾に注いでいます。南北に国道16号、六浦交差点から西に県道原宿六ツ浦線が通り、県道の西六浦交差点から南西に県道金沢逗子線が伸びています。西側を南北に横浜横須賀道路が通過していますが、町内にインターチェンジはありません。鉄道は国道沿いに京急本線の金沢八景駅があり、金沢逗子線沿いに京急逗子線が通り、逗子線六浦駅や横須賀市にある追浜駅などが利用できます。

面積

六浦の面積は以下の通りです。

六浦1丁目: 0.29km2
六浦2丁目: 0.18km2
六浦3丁目: 0.18km2
六浦4丁目: 0.16km2
六浦5丁目: 0.25km2
六浦東1丁目: 0.12km2
六浦東2丁目: 0.16km2
六浦東3丁目: 0.13km2
六浦南1丁目: 0.17km2
六浦南2丁目: 0.18km2
六浦南3丁目: 0.12km2
六浦南4丁目: 0.09km2
六浦南5丁目: 0.20km2
六浦町: 1.12km2

地価

住宅地の地価は、2023年1月1日の公示地価によれば、六浦1-6-3の地点で20万6000円/m2となっています。

歴史

古代

古くは六浦荘という荘園が設置され、国衙や郡衙の支配を受けない私有地でした。六浦、金沢、釜利谷、富岡の4郷から成り立っており、当初の領家は仁和寺（皇族の門跡寺院領）であったと考えられています。現在も真言宗御室派の寺院が金沢区内に分布しています。保元2年（1157年）には、源義朝から恩賞として常陸国の那珂実経に六浦荘が与えられ、領主となりました。

中世

治承4年（1180年）、源頼朝は伊豆で挙兵した際に加護を受けた伊豆三島明神をこの地に勧請し、瀬戸神社の社殿を建立しました。文治年間（1185～1190年）には、頼朝は浄願寺を六浦山中（後の三分山、御伊勢山、権現山地域）に建立しました。これは上行寺東遺跡であると考えられています。その後、和田氏を経て金沢流北条氏が領主となりました。『吾妻鏡』によれば、仁治2年4月5日（1241年5月17日）、鎌倉幕府執権北条泰時は鎌倉と六浦を結ぶ道の開削を命じました。これが六浦道（朝夷奈切通）です。海路を通して房総半島などと鎌倉の玄関口となっていた六浦は、近隣の浦郷榎戸湊などよりも交通の便が良く発展しました。中世においては、現在の内陸地域である六浦川流域や手子神社・金沢文庫駅付近にまで入江や内海が広がっていたと推定されており、六浦には複数の津や湊に適した場所があったと考えられています。泰時が弟の実泰をこの地に配置した背景には、こうした事情があったのでしょう。京都の四堺をまねて東の境が六浦に置かれ、山道によって鎌倉と隔てられた六浦は、東方からの疫病や鬼などの邪悪なものを食い止める障壁として位置づけられました。入江のある地形は風光明媚な景勝地（後の「金沢八景」）として広く知られるようになりました。将軍九条頼経も安貞2年4月28日（1228年6月2日）に保養のために六浦を訪れています。また、六浦は明治時代まで塩田があったことでも知られています。

実泰の子である北条実時は金沢に別邸を置き、それが称名寺と金沢文庫の前身となりました。北条貞顕が嘉元3年（1305年）ごろ竣工させた瀬戸橋によって、内海に隔てられていた六浦と金沢が陸路で繋がりました。鎌倉幕府滅亡後は足利氏の支配下に入りましたが、その支配を巡って鎌倉府（鎌倉公方）と関東管領上杉氏は度々衝突しました。上杉憲方の配下とされる大喜光昌は、応永年間に六浦の支配者であり、対岸の安房守護代を兼ねていた上杉家中の実力者でした。鎌倉公方足利持氏が簗田助良に称名寺の保護を命じたり、永享の乱に敗れた際に同寺に逃れたのも、六浦を経由して房総方面との連絡を維持しようとしたからだと考えられています。享徳の乱によって上杉氏が鎌倉を占領した後、鎌倉とともに六浦を支配したのは太田道灌でした。道灌が六浦を直接支配した証拠はないものの、現地に道灌にまつわる伝説が伝わっているのは、この時期の六浦が太田氏とその主家である上杉氏の影響を強く受けていたからだと考えられています。入江への土砂の堆積が進み、湊の機能が外側の洲崎や瀬ケ崎に限られてきたことや、品川湊などの隆盛によって戦国時代に入ると六浦は衰退したとされていますが、実際には江戸時代初頭まで都市としての姿が続いたと考えられています。特に、房総方面と鎌倉を結ぶ経路は六浦あるいはその外側の洲崎を経由した海上交通に依存するところが大きかったのです。安房の里見義豊が鎌倉攻撃時に六浦を襲撃したり、上総[[国]]の真里谷信隆が再起を期すために金沢に落ち延びたのも、六浦が房総と武蔵・相模方面を結ぶ要所であったからでしょう。なお、豊臣秀吉の小田原征伐の際に細川幽斎が六浦を訪れています。

近世以降

六浦（鎌倉）の都市としての政治経済の役割は江戸に移り、衰退しました。沢庵宗彭がこの地を訪れた際には、寒村と化していたとされています。後に六浦藩の藩庁が設置されたものの、江戸に近い観光地という側面（金沢八景）以外では目立たなくなりました。また、浦賀奉行所への通過点となりました（浦賀道）。

明治初年に社家分村（元瀬戸神社領）、寺分村（元常福寺領）、平分村が合併して、久良岐郡三分村が成立しました。明治22年（1889年）の市町村制施行の際、釜利谷村および泥亀新田飛地と合併して久良岐郡六浦荘村大字三分となりました。昭和11年（1936年）に横浜市に編入し、磯子区六浦町となりました。昭和23年（1948年）には金沢区が磯子区から分離独立し、金沢区六浦町となりました。昭和5年（1930年）に湘南電気鉄道が開通し、翌年に京浜電鉄（後の京浜急行電鉄）と相互乗り入れ（後に合併）してから、東京・横浜に向かう人々のベッドタウンとなりました。また、隣接する横須賀港の軍港化が進むにつれて、瀬ケ崎付近（現在の関東学院付近）が埋め立てられ、昭和16年（1941年）には海軍航空技術廠の工員養成所、現在の瀬戸には海軍航空技術廠支廠が設置されました。その寮や住宅の建設により市街化が進みました。昭和55年（1980年）には、一部が大道および東朝比奈として分離しました。

世帯数と人口

2023年4月30日現在の世帯数と人口は以下の通りです。なお、六浦町の人口は0人です。

世帯数: 5,676世帯
人口: 13,804人

人口の変遷

国勢調査による人口の推移は以下の通りです。

1980年: 11,315人
1985年: 12,063人
1990年: 13,040人
1995年: 13,465人
2000年: 13,380人
2005年: 13,425人
2010年: 13,489人
2015年: 13,530人
2020年: 13,909人

世帯数の変遷

国勢調査による世帯数の推移は以下の通りです。

1980年: 3,837世帯
1985年: 4,256世帯
1990年: 4,790世帯
1995年: 5,024世帯
2000年: 5,095世帯
2005年: 5,166世帯
2010年: 5,302世帯
2015年: 5,483世帯
2020年: 5,743世帯

学区

市立小・中学校に通う場合の学区は以下の通りです（2021年8月時点）。

小学校: 横浜市立六浦小学校
中学校: 横浜市立金沢中学校

事業所

2021年現在の経済センサス調査による事業所数と従業員数は以下の通りです。

事業所数: 184
従業員数: 1,888人

事業所数の変遷

経済センサスによる事業所数の推移は以下の通りです（六浦と六浦町の合算数）。

2014年: 210事業所
2016年: 201事業所
2021年: 184事業所

従業員数の変遷

経済センサスによる従業員数の推移は以下の通りです（六浦と六浦町の合算数）。

2014年: 2,089人
2016年: 2,006人
2021年: 1,888人

施設

横浜市立六浦小学校
金沢警察署六浦川交番
横浜市金沢消防署六浦消防出張所
六浦駅前郵便局

日本郵便

集配を担当する郵便局と郵便番号は以下の通りです。

郵便局: 金沢郵便局
郵便番号: 236-0031,236-0032,236-0033,236-0037

警察

町内の警察の管轄区域は以下の通りです。

金沢警察署

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』（角川書店 1984年 ISBN 4040011406）
佐藤博信『江戸湾を巡る中世』（思文閣出版 2000年 ISBN 4784210458）
『スーパーマップル関東道路地図』（昭文社 2008年 ISBN 978-4-398-62883-1）

関連項目

上行寺東遺跡
六浦陣屋
江藤小三郎 - 江藤新平の曾孫、六浦出身の憂国烈士、昭和44年（1969年）2月11日、国会議事堂前で「覚醒書」なる遺書を残して焼身自殺。

脚注

横浜市統計ポータル
横浜市教育委員会
総務省統計局

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