向朗

向朗（しょう ろう）

向朗（しょう ろう、字は巨達）は、後漢末期から三国時代の蜀漢にかけて活躍した政治家です。荊州襄陽郡宜城県の出身で、子は向条、甥に向寵、向充がいます。

生涯

幼い頃に父を亡くし、2人の兄に育てられました。若い頃は司馬徽に師事し、徐庶、龐統、韓嵩らと親交を深めます。その後、劉表に仕え、臨沮県長を務めました。劉表の死後、劉備に仕えることになります。

向朗は行政能力に長けており、劉備が荊州南部4郡を得ると、秭帰、夷道、巫、夷陵の4県を任されました。益州平定後には、巴西太守、牂牁太守、房陵太守など、各地の太守を歴任しました。

劉禅が皇帝に即位すると、歩兵校尉に任命されます。王連の死後には、後任として丞相長史に就任し、建興3年（225年）の南征では留守を任されました。

建興5年（227年）の北伐の際には、諸葛亮に従って漢中へ赴きます。しかし、向朗はかねてより馬謖と親しかったため、街亭の戦いで敗北した馬謖の逃亡を黙認してしまいます。これが諸葛亮の怒りを買い、免職処分となりました。

数年後、光禄勲として復職を許されます。諸葛亮の死後には、左将軍・行丞相事となり、以前の功績が評価され顕明亭侯に封ぜられ、特進の位を与えられました。

若い頃から学問を好みましたが、その能力は品行よりも実務能力によって評価されました。丞相長史を免職されてからは、古典の研究に没頭し、80歳を過ぎても自ら書物を校訂することを止めませんでした。広く門戸を開いて賓客を迎え、後進の指導に当たりましたが、古典の解釈のみを論じ、世相については語ろうとしなかったため、人々から敬われました。

延熙10年（247年）に亡くなりました。

子である向条に対し、春秋左氏伝を引用して、禄利による堕落を戒め、貧乏を憂慮せず和を以て貴しとせよとの遺言を残しました。

子の向条も博学多識で知られ、景耀年間に御史中丞となり、後に西晋に仕えて江陽太守・南中軍司馬となりました。

評価

陳寿は、向朗について「学問を好んで倦むことがなかった。史書に記すに値する人物である」と評しています。

廖立は、「向朗は昔から馬良兄弟ごときを奉じて聖人と言っているが、このような者は丞相長史には不適格である」と批判しています。

楊洪は、留府長史の人事について諸葛亮に尋ねられた際、「私情を挟まない性格の向朗が適任です」と進言しています。

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