太傅

太傅（たいふ）とは

太傅は、かつて中国と日本に存在した官職です。それぞれの国において、異なる役割を担っていました。

中国における太傅

中国では、太傅は天子の師として重要な役割を果たしました。

歴史

周: 太師、太傅、太保が三公と呼ばれ、天子を助け導き国政に参与しました。
漢: 金印紫綬を授けられ、三公（大司馬、大司徒、大司空）よりも地位が上でした。ただし、実権を伴わない名誉職となることもありました。例えば、前漢の呂后時代には、王陵から丞相の実権を奪うために太傅に任命された事例があります。
前漢末: 平帝の時代に、幼い皇帝の補佐と教育のために丞相が太傅に任命されました。その後、太師、太傅、太保が置かれ、四輔と呼ばれました。
後漢: 皇帝が新たに即位するごとに太傅が置かれ、録尚書事を兼任するのが通例でした。
魏・晋: 魏でも太傅が置かれ、晋では太師、太傅、太保が再度設置されました。
南北朝時代以降: 太師、太傅、太保は名誉職となり、ふさわしい者がいなければ空位とされることが多くなりました。北魏では、太師、太傅、太保を三師と呼びました。
諸侯王の太傅: 前漢では諸侯王の師として太傅が置かれましたが、成帝の時代に傅と呼ばれるようになりました。

日本における太傅

日本では、太傅は天皇が成年に達しないときに置かれる官職とされていました。

制度

旧皇室典範26条の規定により、未成年の天皇の傅育（教育・養育）をつかさどる者として、太傅が置かれることとされていました。

27条によれば、先帝が遺命で太傅を任命していた場合はその者が、遺命がない場合は摂政が皇族会議と枢密顧問に諮詢して選任することとされていました。

28条では、摂政及びその子孫は太傅に就任できないと定められていました。

実際

旧皇室典範の施行から皇室典範及皇室典範増補廃止ノ件までの間、未成年の天皇の例がなく、太傅が実際に設置された例はありませんでした。

1947年制定の皇室典範では、摂政の制度は設けられましたが、太傅の制度は設けられませんでした。

参考文献

『漢書』巻19百官公卿表、巻40王陵伝、巻99王莽伝
『続漢書』志24職官志一、志28職官志五
『晋書』巻24職官志
『宋書』巻39百官志上、巻40百官志下
『魏書』巻113官氏志

関連項目

太子太傅
太子少傅

もう一度検索