女子教育

女子教育の概念と原則

女子教育とは、女子に対する教育全般を指します。教育の根幹は、個々人の潜在能力を最大限に引き出し、その成長を効率的に促すことにあります。女子も人間である以上、この原則が適用されるべきですが、社会的な要因によって必ずしも実現されていません。また、男女の性差を無視した画一的な教育も適切とは言えません。例えば、保健体育などでは、性差に応じた指導が必要です。

世界の女子教育の状況

欧米

中世ヨーロッパでは、修道女を育成するための修道女学校は存在しましたが、一般の女性が教育を受ける機会は限られていました。14世紀のフランスでは、女子教育に関する議論が始まり、フランス革命期には、タレーランやコンドルセなどが女子教育を支持しました。その後、1850年のファルー法により女子初等[[教育]]が義務化され、1880年のカミーユ・セー法によって女子中等[[教育]]制度が確立しました。1862年には、エリザ・ルモニエによってフランス初の女子職業教育学校が設立されました。

ドイツでは、17世紀末にフランケ学院に女子中等[[教育]]機関が設置され、教育学者コメニウスも女子にも男子と同様の教育が必要であると主張しました。18世紀には、イギリスのダニエル・デフォーが女子の教育の重要性を説きましたが、サミュエル・ジョンソンのように女子教育の必要性を疑問視する声もありました。アメリカでは、1833年にオベリン大学が男女共学を始め、1841年には女子にも学士号を授与するなど、高等教育の門戸を開放する動きが早かったと言えます。イギリスでは、1841年にロンドン大学のクイーンズ・カレッジが初めて女子の入学を認めました。

アフガニスタン

2021年にタリバンが復権し、女子教育に大きな影響を与えました。タリバンは女子教育の必要性を否定しませんでしたが、中等[[教育]]においては男女を分離し、女子の通学手段を確保する必要性を主張しました。しかし、資金不足のために女子中等[[教育]]の再開は目処が立っていません。2022年には、中等[[教育]]を受ける女子生徒の復学が禁止され、女性の大学教育も停止されました。

アラブ諸国

アラブ諸国では、2010年現在でも女子教育は十分とは言えず、非識字が広がっています。アラブ連盟の機関は、女性への教育・訓練を強化するよう呼びかけていますが、女子教育への関心が必ずしも女性の就業や社会発展に結びついていないことが課題となっています。

女性の識字率

識字率は、その国の社会発展度を示す指標ですが、識字者の定義が国によって異なるため、単純な比較は難しいです。一般的に、男性よりも女性の識字率が低い国が多いですが、一部の国では女性の識字率が男性を上回っています。日本の識字率は非常に高く、1990年の統計では、女性が99.7%、男性が99.9%となっています。

日本の女子教育の歴史

明治以前

江戸時代には、寺子屋が普及し、庶民も教育を受ける機会を得ていました。女子も「読み・書き・そろばん」を学び、上流階級の女性は、読書、習字、和歌、茶道などを身につけていました。

明治維新後

1872年の学制により、女子も小学校で教育を受けるようになりました。1874年には女子師範学校が設立され、女子教育の制度化が進みました。高等女学校令（1899年）により、普通教育と実践教育を行う高等女学校が設置されました。しかし、女子の就学率はなかなか上がらず、1893年には学齢児童の修学者は50%強、女子は15%程度でした。

良妻賢母の育成が女子教育の基本理念とされ、キリスト教系のミッションスクールが女子教育を推進しました。明治30年代には、日本女子大学校などの私立の女子高等教育機関が設立されましたが、女子は大学教育から疎外されていました。旧制大学が正式に女子学生を受け入れたのは1946年です。

官立・公立学校の動き

1872年に東京女学校が新設されましたが、経費削減のため廃止され、東京女子師範学校が開校されました。1883年には、付属高等女学校が設置され、1890年には女子高等師範学校が設置されました。1923年以降、各自治体によって公立の女子専門学校が設立されました。

ミッションスクールの動き

明治初期に、キリスト教の宣教師たちが女子教育に貢献しました。1869年にカロザース塾（現：女子学院中学校・高等学校）、1870年にフェリス女学院、1871年にドリーマス・スクール（現：横浜共立学園中学校・高等学校）などが設立されました。カトリック教会やその他のプロテスタント教会も、女子教育のための学校を設立しました。

日本人による私学の動き

日本人による私立の女子教育機関も設立されました。1875年には跡見学校が設立され、1886年には共立女子職業学校、1888年には東京女学館が開校しました。1901年には日本女子大学校が設立され、1903年の専門学校令によって、女子も高等教育を受ける機会が広がりました。

第二次世界大戦後

戦後、教育基本法と学校[[教育法]]が施行され、男女共学が推進されました。旧制女子専門学校は新制大学に移行し、多くの女子大学が設立されました。しかし、中等[[教育]]においては、戦後に新設された女子校は少数にとどまっています。

戦後の女子教育は、高等学校の職業専門課程、短期大学、女子大学を中心に発展しました。家庭科が男女共通科目になったのも、戦後のことです。しかし、女子の能力を制限するような従来の教育思想も残っており、女子の高等教育への進学率が上昇した際にも「女子大生過剰論」という批判も起こりました。

1960年代には、「男子は技術、女子は家庭」という方針が明確化され、女子高校では保育士や看護師を育成する学科が設置されました。1986年の男女雇用機会均等法以降、女性の社会進出が進み、女子教育のあり方も変化しました。

今日における女子教育の意義

今日では、女子教育は歴史的な役割を終えつつあり、女子校は男性差別的だという意見も出ています。少子化や不況の影響で、共学化する学校が増えています。

しかし、女子校の中には、女子教育の必要性を主張し、女性としての成長や自己実現を支援する教育を継続している学校もあります。また、停滞した日本には女性の活力が不可欠であるとして、女性リーダーシップの育成を目指す活動も行われています。

女子教育は、時代とともに変化を遂げてきました。今後は、ジェンダー平等の視点を持ちながら、女性の可能性を最大限に引き出す教育が求められます。

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