日本往生極楽記の概要
『日
本往生極楽記』(にほんおうじょうごくらくき)は、
平安時代中期に
慶滋保胤によって編纂された重要な往生伝です。この書は、極楽往生した人物の
伝記を集めたものであり、成立時期は
寛和年間(
985年 -
987年)頃と考えられています。同書は日
本で最古の往生伝とされており、浄土信仰の視点から多くの人々の生涯を語っています。
『日
本往生極楽記』には、
聖徳太子をはじめとする
皇族、
僧侶、そして
庶民を含む計45人の極楽往生に関する
伝記が収められています。これらの
伝記は、保胤自身の浄土信仰に基づいて編纂され、往生の意義や背景を探る資料として大変貴重です。
本書の成立に際して、保胤は在俗の期間中(
寛和2年(986年)以前)に一度完成させた後、
兼明親王にさらなる加筆を依頼しました。兼明は
夢の中で
聖徳太子と
行基の伝を追加すべきとの示しを受けましたが、亡くなる前にその実現は叶いませんでした。そのため、保胤が再度筆を取り、兼明の意向を反映させた形で加筆を行ったのです。
主要な伝
この書に収録された
伝記の中には、
聖徳太子や
行基、善謝、
円仁、隆海といった著名な人物に関する
伝記が含まれています。これらの伝は
六国史に基づいています。また、
円仁、
増命、
空也の伝は、それぞれの著作『慈覚大師伝』や『
扶桑略記』、さらには
空也誄といった他の文献に依拠しています。しかし、他の三十人あまりの
伝記に関しては出典が不明であり、著者の見聞や知識に基づくものと考えられています。
出版情報
『日
本往生極楽記』は、さまざまな編集を経て、現在は『日
本思想大系7 往生伝・法華験記』(
井上光貞・大曾根章介校注、
岩波書店)に収められています。さらに、2024年11月には大曾根章介と
小峯和明による改訂新版『日
本往生極楽記・続
本朝往生伝』が
岩波文庫から刊行される予定です。
関連性
『日
本往生極楽記』は、日
本の
仏教や
浄土教における重要な文献として位置付けられています。この作品は、後世の念仏信仰や往生観に深く影響を与える要素となりました。また、これに関連する著作として『
往生要集』や『
僧妙達蘇生注記』、さらには『
今昔物語集』が挙げられます。
以上のように、『日
本往生極楽記』は
平安時代の宗教的文脈を理解するための貴重な資料であり、往生の教えを今に伝える重要な役割を果たしています。