梅本佑利

梅本 佑利

梅本 佑利（うめもと ゆうり、Yuri Umemoto、2002年4月23日 - ）は、現代音楽の分野で活動する日本の作曲家です。幼少期に培われた多様な文化的背景と、現代的な音楽技法の探求を融合させた独自のスタイルで注目を集めています。

生い立ち

2002年に東京都で生まれ、千代田区神田で育ちました。生まれて間もなくカトリックの洗礼を受け、幼少期はグレゴリオ聖歌をはじめとする宗教音楽や合唱に親しむ中で、音楽への関心を育みました。父親がコンピューターに強い関心を持っていた影響もあり、幼少期には秋葉原の電気街やパソコンショップで多くの時間を過ごしました。この環境が、梅本に日本のオタクカルチャー、特にゲームやアニメといったサブカルチャーからの強い影響を与える土台となりました。

作風

2020年代に入ってからの彼の創作活動は、現代日本の消費文化やポップカルチャー、特にゲームやアニメ、萌え文化といった要素への深い観察に基づいています。同時に、西洋音楽の文脈における物語性や消費のあり方を探求し、村上隆らのスーパーフラットに代表される視覚芸術の潮流を、音楽という媒体でいかに再解釈できるかという試みが重要なテーマとなっています。

彼の作風には、1980年代以降の日本のゲーム音楽、そして2000年代から現代にかけてのアニメや萌えカルチャーからの影響が色濃く反映されています。具体的な手法としては、アニメのキャラクターボイスや効果音をサンプリングして楽曲に取り入れたり、ゲーム的な独特な音型を構成要素としたり、あるいは電波ソング特有の様式をヴァイオリンのための超絶技巧曲へと大胆に昇華させるといった試みが見られます。また、作品発表時に二次元キャラクターのイメージを付随させるなど、音楽と視覚要素を組み合わせる手法も彼の特徴の一つです。

影響を受けた作曲家として、山根明季子、ヨハネス・クライドラー、ヤコブ・テル・ヴェルデュイ、スティーブ・ライヒらの名を挙げています。特に2022年の作品「萌え²少女」などでは、日本のインターネット文化から生まれた音MADの手法と、西洋現代音楽における「スピーチ・メロディ」という技法を関連付けて探求しています。「スピーチ・メロディ」とは、スティーブ・ライヒの「ディファレント・トレインズ」（1988年）に代表されるように、話し声の微妙な音高（ピッチ）を、西洋楽器の音律やピアノの十二平均律で再現・模倣する手法です。梅本は、この技法を音MADにおける音声編集のアプローチと重ね合わせています。

経歴

2018年に秋吉台の夏現代音楽講習会に参加したことを機に本格的な作曲活動を開始。翌2019年には、16歳で書いたギター作品が、藤倉大が芸術監督を務める「ボンクリ・フェス」（東京芸術劇場）で取り上げられ、注目を集めました。以降、仙台クラシックフェスティバル、東京・春・音楽祭、東京オペラシティ主催公演「BtoC」など、国内の主要な音楽祭や企画から作品委嘱を受け、国内外の多様な演奏家、アンサンブル、オーケストラによってその作品が演奏されています。

学業では、2018年に東京音楽大学付属高等学校へ入学し、作曲を川島素晴に師事。その後、愛知県立芸術大学に進学しました。

技術との連携にも積極的で、2021年にはヤマハ株式会社と共同開発した人工知能合奏システムを用いた新作を発表しました。また、異なる分野との境界を越えた活動も展開しており、2023年にはテレビ番組「題名のない音楽会」（テレビ朝日）で坂本龍一監修のもと編曲に携わったほか、東京コレクションでのファッションショー音楽制作なども行っています。

mumyo

2022年には、作曲家の山根明季子、ヴァイオリニストの成田達輝と共に、アーティスト・コレクティブ「mumyo（ムミョウ）」を設立。これは芸術商社としての側面も持ち、運営組織である合同会社無名の代表は梅本と山根が務めています。「mumyo」という名称は、音楽家の坂本龍一が命名したもので、清少納言の『枕草子』に記された、一条天皇が愛した琵琶「無名」の故事に由来するとされています。

主要作品

ソロ作品
スーパーバッハボーイ （2020年）'SUPERBACHBOY' for cello
もももも萌え萌え♡ （2021年）'MOMOMOMOMOEMOE♡' for violin
萌え²少女（2022年）'Moe²Girl' for cello
室内楽作品
Fluffy Pink!（2020年）for string quartet
Devil Boy （2021年）for violin and AI-piano
管弦楽作品
* Oo./x（2020年）for orchestra

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