植物油

植物油とは

植物油（英: vegetable oil）は、植物に含まれる脂質を抽出・精製した油脂のことで、植物油脂とも呼ばれます。常温で液体のものを植物油、固体のものを植物脂と区別することもあります。

歴史

人類が最初に利用した油は動物性油脂と考えられています。しかし、植物油の利用も古代に遡り、エジプトではピラミッドに油脂の使用痕跡が見られます。地中海沿岸ではオリーブ栽培が始まり、ローマ帝国の拡大と共に広がりました。ココナッツオイルも数千年の歴史があります。

油を意味する英語の「Oil」は、ラテン語の「oleum」（油、オリーブ油）とギリシャ語の「elaion」（オリーブの木）に由来します。多くのヨーロッパ言語で、油を表す単語はオリーブに起源を持ちます。

日本では、動物性油脂の利用が先行し、縄文時代晩期にゴマが伝来、日本[[書紀]]にはハシバミから油を抽出した記述があります。奈良時代にはゴマの搾油技術が伝わり、平安時代には搾油機が発明されました。江戸時代には菜種油や綿実油の生産が増加し、庶民にも植物油の利用が広がりました。

明治時代に入り、灯火用にはケロシンが普及しましたが、食の洋風化と共に食用植物油の消費が増加し、大規模な製油工場が稼働しました。戦時中には食用油の配給制度が始まりました。

製法

油分の多い原料は圧搾して油を絞り出し、油分の少ない原料は大豆や米ぬかなどは、ヘキサンなどの溶剤で化学的に油分を抽出します。得られた粗油から澱を除去し、脱酸、水洗、脱色、ろ過などの精製工程を経て製品となります。

サラダ[[油]]は、菜種、綿実、大豆、ごま、サフラワー、ひまわり、とうもろこし、米、落花生などを原料とし、脱蝋・精製処理で固化しやすい成分を除去したものです。天ぷら油は、香りを重視して調合された油で、ごま油、綿実油、椿油、オリーブオイル、なたね油などが使われます。

成分と規格

植物油脂は、不飽和脂肪酸が多い植物油（液体）と、飽和脂肪酸が多い植物脂（固体）に分けられます。ヤシ油やパーム[[油]]は植物脂です。

日本では、食用植物油脂は日本農林規格（JAS）で品質基準が定められています。各植物油には、色、酸価、比重、屈折率、けん化価、ヨウ素価などの規格があります。添加物としては、酸化防止剤のトコフェロール、消泡剤のシリコーン、栄養強化剤のビタミンEなどが認められています。

原材料と生産量

植物油は、油糧種子（大豆、菜種、ひまわり、綿、ピーナッツ、ゴマなど）や果肉（ヤシ、オリーブなど）から精製されます。トウモロコシや米からも、副産物として油が抽出されます。

2010/11年度の油糧種子の生産量は、大豆、菜種、綿実、ひまわりなどが上位を占めました。植物油の生産量では、パーム[[油]]、大豆[[油]]、菜種油が多くなっています。

貿易と消費量

世界の植物油生産量の約半分が輸出されており、パーム[[油]]、パーム核油、ヤシ油が主要な輸出品です。中国、インド、EUなどが主要な輸入国です。

各国の一人あたりの植物油消費量は、食用・非食用を含めて大きく異なります。EUでは菜種油の多くがバイオディーゼル用途に使われています。

代替エネルギーとしての植物油

植物油は、バイオディーゼルの原料として化石燃料の代替となりえます。バイオディーゼルの生産能力は拡大していますが、食料との競合や環境への影響が懸念されています。

安全性

植物油は、ガソリンやディーゼル燃料よりも毒性が低く、引火点が高いため、安全性が高いとされています。

その他

日本では、油の収穫を祝う『油しめ』・『油祝い』という行事があります。書に使う墨には、植物油の煤から造る油煙墨があり、菜種油から作られた墨が最上とされています。各地には油の製造・流通に由来する地名が残っています。

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