毛勝

毛勝（もう しょう）

毛勝（1401年 - 1458年）は、明代に活躍した軍人です。元の名を福寿といい、字を用欽と称しました。本貫は薊州で、モンゴル出身です。彼の生涯は、明朝の混乱期と深く関わり、数々の戦場でその名を馳せました。

生い立ちと初期の経歴

毛勝は、元の右丞相であった伯卜花の孫にあたる毛安太（安泰）の子として生まれました。彼の伯父である那海は、洪武年間に明に帰順し、靖難の変での功績により都指揮同知に上り詰めました。しかし、那海には後継者がいなかったため、安太がその地位を継ぎ、羽林指揮使となりました。その後、安太の子である毛済が後を継ぎましたが、彼にも子がなかったため、福寿（後の毛勝）が家督を継承することになりました。福寿は、兄の漠北遠征での功績により、都指揮使に昇進しました。一度は塞外へ逃れるも、すぐに再び明へ帰順しました。

軍人としての台頭

1442年（正統7年）、福寿は麓川の乱を鎮圧する功績を挙げ、都督僉事に抜擢されました。靖遠伯王驥が雲南での苗族の反乱討伐を提言すると、福寿は都督の冉保とともに600人を率いて鎮圧に向かいました。その後、彼は麓川の乱で参将として活躍し、1444年（正統9年）には都督同知に進みました。

土木の変と北京防衛

1449年（正統14年）、オイラトのエセン・ハーンが明へ侵攻を開始すると、福寿は平郷伯陳懐らと共に京軍3万を率いて大同に駐屯しました。しかし、陳懐は土木でオイラト軍に包囲され戦死、福寿は辛くも脱出して北京に帰還しました。同年9月、武清伯石亨の推薦により、福寿は左軍左都督に進み、三千営の操練を監督することになりました。10月、エセンが北京に迫ると、福寿は彰義門を守り、オイラト軍を撃退するのに貢献しました。さらに、兵を率いて西門外に出て、都督の孫鏜を包囲から救い出すなど、その勇敢さを発揮しました。彰義門で都督の武興が戦死すると、福寿は都御史の王竑と共に彰義門の救援に駆けつけました。オイラト軍が撤退を開始すると、福寿は紫荊関まで追撃しました。

各地の反乱鎮圧

1450年（景泰元年）、福寿は左副総兵として、河間府・東昌府のモンゴル人降兵を率いて貴州の苗族の反乱鎮圧に派遣されました。反乱軍の首領である韋同烈が香炉山に拠ると、福寿は総兵の梁珤や右副総兵の方瑛らと共に、総督の王来の指揮下で分進合撃を敢行しました。福寿は重安江から進軍し、反乱軍を撃破しました。官軍が山下で合流し、四方を包囲して反乱軍を攻め立てると、反乱軍は窮地に陥り、韋同烈を捕らえて降伏しました。

1452年（景泰3年）3月、福寿は湖広巴馬の苗族の反乱を鎮圧し、20あまりの砦を攻略。反乱の首領である呉奉先ら140人を捕らえ、1000人以上を斬首する大戦果を挙げました。

南寧伯への封爵と晩年

1454年（景泰5年）、福寿はその功績が認められ、南寧伯に封じられ、世襲が認められました。1455年（景泰6年）、彼は名を勝と改めました。その後、騰衝に移駐した毛勝は、金歯芒市長官である刀放革が麓川の遺児である思卜発と結んで反乱を起こした際、策を講じてこれを捕縛しました。しかし、巡按御史の牟俸が毛勝の横暴不法な行為を数十件弾劾し、彼の出自を貶め、外夷と通敵していると非難しました。この告発は事実無根とされ、不問に付されました。

死去とその後

1458年（天順2年）8月14日、毛勝は58歳でこの世を去りました。死後、南寧侯の位を追贈され、諡を荘毅と諡されました。彼の爵位は、子の毛栄が継ぎました。

毛勝の生涯は、明朝の動乱期を象徴するものであり、その武勇と功績は後世に語り継がれています。彼の経験は、当時の軍事戦略や政治状況を理解する上で貴重な資料となっています。

参考文献

『明史』巻156 列伝第44
奉天翊衛宣力武臣特進栄禄大夫柱国南寧伯追封南寧侯諡荘毅毛公神道碑銘（李賢『古穣集』巻11所収）

もう一度検索