源博雅

源 博雅について

源博雅（みなもと の ひろまさ）は、平安時代中期の公卿であり、優れた雅楽家として名を馳せました。彼は醍醐天皇の第一皇子、克明親王の長男であり、官位として従三位及び皇太后宮権大夫を有していました。博雅は時折「博雅三位」や「長秋卿」と称されることもありました。

経歴

初めのころは博雅王を名乗っていましたが、その後、源朝臣姓を得て臣籍に降下しました。朱雀朝の承平4年（934年）には二世王待遇の蔭位により従四位下に昇進します。以降は中務大輔や右馬頭を歴任し、天徳3年（959年）には右近衛中将に任ぜられました。その後、応和4年（964年）には左近衛中将を務め、村上朝の後半では近衛中将の役職にも就任しました。円融朝に入ってからは、近衛中将を辞し、皇太后宮権大夫として昌子内親王に仕えました。天延2年（974年）、従三位に叙せられ、公卿としての地位を確立しましたが、天元3年（980年）に63歳で薨去しました。彼の最後の官位は従三位皇太后宮権大夫でした。

人物像

博雅は、雅楽に長け、特に管絃の技術を磨きました。彼は郢曲を敦実親王から、箏を醍醐天皇から、琵琶を源脩から学び、笛は大石峰吉やその子・富門、篳篥は良峰行正に師事していました。大篳篥の名手として知られる一方、舞や歌にはあまり興味がなかったようです。天暦5年（951年）には内宴で和琴を奏で、康保3年（966年）には村上天皇の命令により『新撰楽譜』を作成しました。この楽譜は後の演奏にも影響を与え、現在でも演奏されている『長慶子』の作曲に関与したとされています。

彼は藤原実資から「博雅の如きは文筆・管絃者なり」と評され、その才能が広く認識されていました。酒に対する嗜好が強く、酒豪であったという話も伝わっています。

歌合においても彼の詠んだ歌が残っており、以下の三首が有名です。
1. 夜もすがら待つかひありてほとゝぎす　あやめの草にいまもなかなむ
（応和二年五月四日庚申内裏歌合）
2. をりて見るかひも有るかな梅のはな　いまここのへのにほひまさりて
（康保三年二月廿一日梅花前扆子歌合）
3. いつも咲く花とは見れど白露の　置きてかひある今日とこそ見れ
（康保三年閏八月十五夜内裏前栽合）

逸話

博雅には数多くの逸話もあります。天徳4年（960年）に開催された内裏歌合では、出題された歌題に間違って違う歌を詠んでしまうという失敗をしたことがあります。また、彼は朱雀門の鬼から名笛「葉二」を得たり、羅城門から名器「玄象」を探し出したりと、数々の冒険を経験しています。逢坂の蝉丸の元で琵琶の秘曲「流泉」と「啄木」を学んだことも知られています。

ある日、博雅の家に盗人が忍び込み、彼が床下に隠れていると、盗人は次々と物を盗んでいきました。そこで博雅が冷静に笛を吹くと、盗人は感動し、返したすべての物を持って帰ってしまったという話も伝わっています。

官歴

博雅の官歴は次の通りです。

• - 承平4年（934年）：従四位下
• - 天徳3年（959年）：右近衛中将
• - 応和4年（964年）：左近衛中将
• - 天延2年（974年）：従三位
• - 天元3年（980年）：薨去（従三位皇太后宮権大夫）

系譜

博雅は、父が克明親王、母が藤原時平の娘で、妻は不詳ですが、彼の子供たちは源信貞、源信明、源信義、源至光の4人でした。

博雅の登場する作品

源博雅は多くの作品に取り上げられています。特に、夢枕獏の小説『陰陽師』では安倍晴明の相棒として登場し、テレビドラマや映画でも彼の役を多くの俳優が演じています。演劇や音楽CDにも彼に関する作品が存在し、現代においてもその影響は続いています。

博雅の存在は、雅楽や和歌の発展に貢献したと言え、彼の業績は現在でも色あせることなく受け継がれています。

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