アマトリーチェ

アマトリーチェ：歴史と美食、そして復興への道のり

アマトリーチェは、イタリアのラツィオ州リエーティ県に位置する、人口約2,200人のコムーネです。アペニン山脈の盆地に抱かれ、その美しい景観は観光客を魅了し、特に夏は避暑地として賑わいます。この地は、イタリアを代表するパスタソースの一つ、アマトリチャーナの発祥の地としても世界的に知られています。

地理

アマトリーチェは、リエーティ県の北東部、トロント川上流域に位置しています。周辺の主要都市からの距離は、ノルチャから南東に約24km、ラクイラから北北西に約31km、アスコリ・ピチェーノから南西に約37km、県都リエーティから東北東に約42km、そして首都ローマからは北東に約104kmです。アブルッツォ州との境界に位置し、かつてはラクイラ県に属していました。

周囲のコムーネ

北にアックーモリ、北東にヴァッレ・カステッラーナ、東にロッカ・サンタ・マリーアとコルティーノ、南東にクロニャレート、南にカンポトスト、南西にモンテレアーレ、西にチッタレアーレが隣接しています。

地形

アペニン山脈の中の盆地に位置し、東にはモンティ・デッラ・ラガの山々がそびえ立ちます。この山脈には、ラツィオ州最高峰のモンテ・ゴルツァノ（2458m）があります。トロント川は町の北西を流れ、アドリア海へと注ぎます。町は、トロント川とカステッラーノ川の合流地点の丘の上に位置し、町域内にはスカンダレッロ湖もあります。また、グランサッソ・エ・モンティ・デッラ・ラガ国立公園の一部です。

気候と地震

アマトリーチェは、気候分類では「zona F」に属し、年間3048度日です。また、地震リスクが高い「zona 1」に分類されています。

歴史

この地域には、先史時代から人々が暮らしており、ローマ時代の遺跡も残っています。西ローマ帝国崩壊後は、ランゴバルド人の支配下に入りました。11世紀には、Matriceという名前で記録に登場します。

13世紀には、シチリア王国の支配下に入りますが、その後、アンジュー家のシャルル1世に抵抗し、自治権を維持しました。14世紀から15世紀にかけて、近隣都市との抗争が繰り広げられました。16世紀には、神聖ローマ皇帝カール5世の軍勢によって襲撃され、その後、オルシーニ家やメディチ家の支配を経て、1737年にメディチ家の支配が終わるまで、その影響下にありました。この間、1639年には大地震に見舞われています。

イタリア統一後、一時アブルッツォ州に属しましたが、1927年にラツィオ州に編入されました。

2016年の地震

2016年8月24日、アマトリーチェはイタリア中部地震によって甚大な被害を受けました。多くの建物が倒壊し、200人以上の犠牲者が出ました。この地震は「アマトリーチェ地震」とも呼ばれ、復興への道のりが続いています。

行政

アマトリーチェは、ヴェリーノ山岳部共同体を構成するコムーネの一つです。市内には多数の分離集落（フラツィオーネ）があります。

文化と観光

食文化

アマトリーチェの食文化は、モンティ・デッラ・ラガの豊かな自然に育まれてきました。高品質な肉やチーズが生産され、教皇に仕えた料理人も多く輩出しています。

アマトリチャーナ

アマトリーチェの最も有名な料理は、アマトリチャーナ・ソースです。グアンチャーレ（豚のほほ肉の塩漬け）とペコリーノ・ロマーノ（羊乳のチーズ）を使ったトマトソースで、スパゲッティやブカティーニなどのパスタと合わせます。元々は、牧人たちが山で携行できる材料で作った「脂とチーズ」という料理が原型でした。19世紀にはローマに移住したアマトリーチェ出身の料理人によって広められました。今日では、トマトを加えない古い形のグリーチャや、パンチェッタや玉ねぎを使ったレシピも存在します。

2016年の地震後には、アマトリチャーナを通して被災地との連帯を表明する活動が世界中で広がり、レストランでの寄付活動が展開されました。

ニョッキ・リッチ

ニョッキ・リッチは、アマトリーチェの伝統的なニョッキで、巻いた形が特徴です。アマトリーチェ料理の古い形を伝えています。

歴史的建築物

- 市民の塔: 13世紀に建てられた塔で、2016年の地震にも耐えました。
- サンタゴスティノ教会: 1428年築のゴシック様式の教会ですが、2016年の地震で大きな被害を受け、鐘楼も倒壊しました。
- サンテミディオ教会: 15世紀建築ですが、2016年の地震で被害を受けました。
- サン・フランチェスコ教会: 14世紀後半の建築で、ゴシック様式の大理石の扉やフレスコ画があります。
- サンタ・マリア・ディ・ポルタ・フェッラータ教会、サンマルティノ教会、マドンナ・デッレ・グラーツィエ聖堂、イコナ・パッサトーラ聖堂も、2016年の地震で被害を受けました。

交通

道路

国道4号線、260号線、577号線が町内を通過しています。国道4号線は、ローマからアドリア海沿岸までを結ぶ主要道です。

姉妹都市

オスティア・アンティカ、モントーリオ・アル・ヴォマーノ、ポテンツァと姉妹都市提携を結んでいます。

人物

著名な出身者

- ニコーラ・フィロテージオ: ルネサンス期の画家・芸術家。
- ピエール・シルヴェストロ・レオパルディ: イタリア統一活動家、政治家。
- エリオ・アウグスト・ディ・カルロ: 20世紀の鳥類学者・歴史家・哲学者。

ゆかりの人物

- ジュゼッペ・ダ・レオネッサ: ルネサンス期の画家で、アマトリーチェで亡くなりました。

アマトリーチェは、その豊かな歴史と文化、そして美食を通じて、多くの人々を魅了し続けています。2016年の地震からの復興はまだ道半ばですが、その不屈の精神と連帯の力は、世界に希望を与え続けています。

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