インドネシアの歴史

インドネシアの歴史：多様な民族と激動の時代

インドネシア共和国は、70以上の民族が暮らす多民族国家です。しかし、現在の国家としてのまとまりが生まれたのは比較的最近、第二次世界大戦後の独立以降のことです。それ以前は、様々な勢力がこの地域を支配し、統一された政治体はありませんでした。初めてこの地域全体が統一されたのは、17世紀に始まり20世紀初頭に完成したオランダ領東インドの時代です。

先史時代からイスラーム化まで

インドネシアにおける人類の活動は、最終氷期のスンダランド（氷期に陸地化したスンダ陸棚）時代にまで遡ります。1890年代、ジャワ島で発見されたジャワ原人などの化石は、旧石器時代における人類の活動を示しています。約1万年前の海面上昇によりスンダランドは水没し、インドネシアは現在の多島海となりました。

紀元前2500年から1500年頃には、中国西南地方からの移住者による水稲耕作が始まりました。紀元前2千年紀からは、オーストロネシア語族に属するマレー系民族が島々に定着していきました。

紀元前1世紀頃からは、インドの商人たちがインド洋を渡って到来し、ヒンドゥー教や仏教の影響を受けた独自の文化が発展しました。クタイ王国、タルマヌガラ王国、スンダ王国、シュリーヴィジャヤ王国、古マタラム王国、シャイレーンドラ朝、クディリ王国、シンガサリ朝、マジャパヒト王国といった王朝が興亡し、ボロブドゥール寺院やプランバナン寺院群といった壮大な遺跡を残しました。これらの王朝は、交易ルートを支配し、繁栄を極めました。しかし、それぞれが支配した範囲や期間は異なり、今日のインドネシア全土を同時に支配したわけではありません。

13世紀末頃からは、スマトラ島北部のパサイ王国を中心にイスラームが受容され始めました。15世紀にはマジャパヒト王国もイスラーム化の影響を受け始め、15世紀末にはドゥマク王国がジャワ島で最初のイスラーム国家として成立しました。その後、ワリ・サンガと呼ばれるスーフィー聖者たちの布教活動によって、ジャワ島全域にイスラームが浸透していきました。スマトラ島のアチェ王国もイスラーム化し、交易の中心地として発展しました。

オランダ植民地時代

16世紀になると、ヨーロッパ列強が香辛料貿易を目的としてインドネシアに進出しました。オランダ東インド会社はジャワ島に進出し、次第に支配地を拡大していきました。1619年にジャカルタ（バタヴィア）を制圧し、拠点としました。18世紀にはジャワ継承戦争や華僑虐殺事件を経て、ジャワ島全域を支配下に置きました。19世紀には、アチェ戦争などを通してスマトラ島も支配下に置きました。オランダはプランテーション経営を通じて経済的な搾取を行い、現地住民の窮乏化を招きました。

民族主義運動と独立戦争

20世紀初頭、オランダは「倫理政策」と呼ばれる政策を実施し、現地住民の福祉向上を図りました。しかし、これは一部のエリート層にしか恩恵を与えませんでした。この政策を通してオランダ語教育を受けた者の中には、民族独立を志す者も現れました。ブディ・ウトモやサレカット・イスラームなどの民族主義団体が結成され、独立運動が展開されました。1928年の「青年誓い」では、「インドネシア」という国名と国民意識が共有されました。

太平洋戦争中の1942年、日本軍がオランダからインドネシアを占領しました。日本軍政下では、インドネシア人への協力を得るために、民族主義運動の指導者らが解放され、インドネシア語による教育が行われました。戦況が悪化すると、日本はインドネシアの独立を認める方針へと転換しました。

1945年8月15日の日本の降伏後、スカルノとハッタはインドネシアの独立を宣言しました。しかし、オランダはこれを認めず、インドネシア独立戦争が勃発しました。4年にわたる独立戦争を経て、1949年12月、オランダはインドネシアの独立を正式に承認しました。

独立後のインドネシア

独立後のインドネシアは、議会制民主主義、スカルノ指導下の民主主義、スハルトによる開発独裁、そして民主化への移行という激動の時代を経験しました。それぞれの時代には、経済発展、社会不安、政治闘争、自然災害といった様々な出来事が発生しました。東ティモール独立問題、アチェ紛争、マルク諸島紛争など、多くの課題を抱えながら、インドネシアは民主化への道を歩み続けています。

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