ウィリアム・ハーバート (第3代ペンブルック伯爵)

第3代ペンブルック伯爵ウィリアム・ハーバート

第3代ペンブルック伯爵ウィリアム・ハーバートは、1580年4月8日に第2代ペンブルック伯爵ヘンリー・ハーバートの長男として生まれました。母はヘンリー・シドニーの娘メアリー・シドニーで、詩人フィリップ・シドニーは母方の叔父にあたります。弟には、後に第4代ペンブルック伯爵となるフィリップ・ハーバートがいます。

1601年、父の死により爵位と広大な領地を相続しましたが、愛人メアリー・フィットンとの間に生まれた庶子が死産したことがエリザベス1世の怒りを買い、投獄と国外追放処分を受けました。しかし、ジェームズ1世の即位後、その状況は一転します。彼は王室から厚遇され、スズ鉱山裁判所長官やコーンウォール知事をはじめ、宮内長官、軍務伯委員会委員、サマセット知事、ウィルトシャー知事、王室家政長官など数々の要職を歴任しました。また、1616年から1630年にかけてはオックスフォード大学の学長も務め、1618年から1630年にはフリーメイソンのグランドマスターを務めました。

ウィリアム・ハーバートは、庭園造営にも情熱を注ぎました。ウィルトシャーのウィルトン・ハウスには、イニゴー・ジョーンズの弟子であるアイザック・ド・コーズが設計した美しい庭園があり、詩人ジョン・テイラーもその美しさを称賛しています。さらに、彼は芸術の庇護者としても有名で、ベン・ジョンソンなど多くの芸術家を支援し、ジョン・オーブリーからは「当代随一の学芸庇護者」と絶賛されました。ジェームズ1世も彼を気に入り、1620年と1623年にはウィルトン・ハウスに行幸しています。

1623年には、ウィリアム・シェイクスピアの作品集『ファースト・フォリオ』が、編集者のジョン・ヘミングスとヘンリー・コンデルによって彼と弟のフィリップに献呈され、その中で「世に並ぶものなき兄弟」と称えられました。また、シェイクスピアの『ソネット集』に登場する「W・H氏」は、彼ではないかという説があり、愛人メアリー・フィットンも同じソネット集に登場する「黒い肌の女性」ではないかという説もあります。

政治的には、ステュアート朝初期の宮廷において、国王秘書長官ラルフ・ウィンウッドと共に強硬なプロテスタントとして知られ、カトリックの初代サフォーク伯トマス・ハワードらと激しく対立しました。特にサフォーク伯らが親スペイン政策を唱えることに警戒感を抱き、その対抗としてジョージ・ヴィリアーズ（後の初代バッキンガム公）を国王側近として出世させ、カトリック勢力を遠ざけようとしました。

1630年4月10日、ウィリアム・ハーバートは亡くなり、子がいなかったため、爵位は弟のフィリップが継承しました。

栄典

爵位
1601年1月19日：第3代ペンブルック伯爵、第3代ハーバート男爵（カーディフ）を継承
勲章
1603年：ガーター騎士団ナイト(KG)

家族

1604年に第7代シュルーズベリー伯爵ギルバート・タルボットの娘メアリー・ハーバートと結婚しましたが、子供はいませんでした。

参考文献

今井宏 編『イギリス史〈2〉近世』山川出版社〈世界歴史大系〉、1990年
高橋康也他編『研究社シェイクスピア辞典』研究者出版、2000年
ロイ・ストロング著、圓月勝博・桑木野幸司訳『イングランドのルネサンス庭園』ありな書房、2003年

外部リンク

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