ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園

ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園は、アメリカ合衆国モンタナ州のグレイシャー国立公園と、カナダアルバータ州のウォータートン・レイク国立公園が国境を跨いで接する、世界で唯一の国際平和公園です。ロッキー山脈の壮大な景観の中に位置し、その総面積はおよそ4577平方キロメートルと、東京都の2倍強の広さを誇ります。

地理的特徴

公園の中心には、標高3000メートル級の山々が連なるロッキー山脈がそびえ立ち、氷河によって削られた独特な地形が広がります。200を超える湖沼と広大な森林が、この地域特有の自然環境を形成しています。また、この公園の大きな特徴として、北米大陸水系の境界線である大陸分水嶺が公園内を随所に走っている点が挙げられます。これにより、山脈を境に、西側の水は太平洋へ、東側の水は南下してメキシコ湾へと注ぎ込み、東西で異なる水系を形成しています。

歴史

1932年 6月30日、世界で初めて国際平和公園法に基づいて選定され、国際的な協力と平和の象徴となりました。その後、1995年には、その卓越した自然美と生態系の価値が認められ、ユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。

生態系

公園内は、標高によって異なる3つの生態系に区分されます。

高山地帯（標高2,250m以上）: ツンドラと矮性植物が見られます。
亜高山帯（標高1,680～2,250m）: クルムホルツ（低木）や森林が広がり、アメリカシロゴヨウ、タカネカラマツ、エンゲルマントウヒ、ミヤマバルサムモミなどの樹種が生育しています。
山岳地帯（標高1,280～1,680m）: 乾燥草原と混合林が見られ、アメリカヤマナラシ、ベイマツ、フレキシマツ、コントルタマツなどの樹種が特徴的です。

山麓にはウシノケグサ属の草地とヤマナラシ類の林が広がり、その周辺にはプレーリーが展開します。これらの環境には、ミュールジカ、オジロジカ、ワピチ、ヘラジカなどの草食動物が生息し、高地にはビッグホーンやシロイワヤギ、クズリなどの動物が見られます。また、ブルトラウトなどの魚類に加え、オオカミ、ピューマ、アメリカグマ、ヒグマ（ハイイログマ）、カナダオオヤマネコなどの大型肉食動物も生息しており、豊かな生態系を支えています。

秋には、カモ、ハクチョウ、ガンなどの渡り鳥が、公園内の湿地や湖沼に飛来し、その多様な自然環境を彩ります。

生物圏保護区

米国のグレイシャー国立公園は1976年に、カナダのウォータートン・レイク国立公園は1979年に、それぞれユネスコの生物圏保護区に指定されました。これにより、両公園は生物多様性の保全と持続可能な利用を促進する国際的なネットワークの一部となっています。

世界遺産登録基準

ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園は、以下の世界遺産登録基準を満たしていると評価されています。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの: 氷河によって形成された地形、湖沼、森林が織りなす壮大な景観は、他に類を見ない自然美を誇ります。
* (9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの: 標高によって異なる植生帯や、多様な動物種が生息するこの公園は、生態系の進化と発達を示す上で重要な場所です。

これらの理由から、ウォータートン・グレイシャー国際平和自然公園は、自然の驚異と国際協力の象徴として、世界的に重要な場所とされています。

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