ウクライナとロシアの関係

ウクライナとロシアの関係は、中世にまで遡る長い歴史を持ち、両国間には複雑な歴史的経緯が存在します。ソビエト連邦時代には、ウクライナはウクライナ・ソビエト社会主義共和国としてソ連の構成国でしたが、1991年のソ連崩壊後、独立したウクライナとロシア連邦の間には、領土問題や政治的対立が絶えません。2014年のロシアによるクリミア併合、そして2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、両国関係の深刻な悪化を象徴する出来事です。

歴史的背景

中世

両国の関係は、9世紀にキエフ大公国（ルーシ）という国家がウクライナの地を中心として成立したことに始まります。12世紀にキエフ大公国の北東部が分離し、モンゴル帝国のルーシ侵攻後にモスクワ大公国が形成され、これが後のロシアの原型となりました。一方、ウクライナは、キエフ大公国の滅亡後、ハーリチ・ヴォルィーニ大公国として存続しましたが、14世紀末にポーランドとリトアニアによって分割統治されることになります。ウクライナの諸侯やコサックは、ポーランドやリトアニアの支配下で、東欧の覇権を争うロシアとの戦いに参加しました。

近世

1648年、ウクライナ・コサックは、民族的・宗教的弾圧を理由にポーランドからの独立戦争を開始しました。ポーランドと戦うため、1654年にロシアと同盟を結びましたが、1667年にロシアはポーランドと単独講和し、アンドルソヴォ条約によってウクライナを分割します。コサック国家は分裂し、その東部はロシア帝国内の自治国として18世紀末まで存続しました。18世紀末、ロシアはシーチの廃止、ポーランド分割、クリミア汗国の併合を進め、西部を除いてウクライナの全域を支配下に置きました。ウクライナの自治は廃止されましたが、多くのウクライナ人はロシア帝国の運営に参加することを許されました。しかし、ロシアはウクライナでのロシア化政策を推進し、ウクライナ人のコサックや農民をシベリアや中央アジアなどの植民地化に利用しました。

近代

1918年、ロシア革命後、ウクライナ人はウクライナ人民共和国として独立を宣言しましたが、ロシア赤軍によって鎮圧され、1922年にはウクライナ・ソビエト社会主義共和国としてソ連に組み込まれました。1920年代から1940年代にかけて、ソ連共産党はウクライナの重工業化、集団農場化、共産化を進めました。これにより、ウクライナの伝統的な生活様式や多くの文化財が破壊され、1932年から1933年にかけては、ホロドモールと呼ばれる人為的な大飢饉が発生し、多くの犠牲者を出しました。ソ連時代には、ウクライナ人の多い地域がロシアに併合されたり、逆にロシア人の多いクリミアがウクライナに譲渡されるなど、領土の変動も起こりました。

ソ連崩壊後

1991年、ソ連が崩壊し、8月24日にウクライナは独立を宣言。12月5日にはロシアがウクライナの独立を承認しました。しかし、ソ連崩壊後、両国関係は必ずしも良好とは言えず、緊張状態が続いています。

ウクライナは独立国家共同体（CIS）の結成条約には調印しましたが、CIS憲章は正式には承認していません。
ソ連の財産継承を巡る問題は未解決です。
1997年以降、クリミア半島のセヴァストポリには、ロシアの黒海艦隊基地が所在しています。

独立後の対立

2003年には、トゥーズラ島をめぐる国境問題が発生し、未解決のままです。2004年のオレンジ革命では、ウクライナ大統領選挙にロシアが介入。親露派候補が敗北したため、両国の情報戦が激化しました。また、2005年から2009年にかけて、二度のガス紛争も発生しました。2008年のロシア・グルジア戦争では、ウクライナはグルジアを支援しました。

2010年には親露派のヤヌコーヴィチが大統領に就任し、ロシアとの関係正常化を試みましたが、ガスをめぐる問題は解決しませんでした。2010年末には、ロシア国内のウクライナ人団体が解散させられ、ウクライナ文学図書館も閉鎖されました。2011年には第三のガス紛争が発生し、2012年には乳製品輸出をめぐる「チーズ戦争」も起こりました。2014年のウクライナ騒乱と、それに伴うクリミア危機は、両国関係を決定的に悪化させました。2022年にはウクライナのNATO加盟構想に対して、ロシアは強く反発しました。

その他にも、歴史認識の問題（ホロドモール、第二次世界大戦におけるウクライナ蜂起軍の評価）、ウクライナにおけるロシア語の公用語化問題、ロシアにおけるウクライナ人の同化問題、NATO、EU、関税同盟へのウクライナ加入問題など、多くの未解決な問題が残っています。2013年には、ウクライナ経済が低迷し、対露依存が強まりました。同年11月、ウクライナはEU加盟への第一歩となる連合協定の締結作業を停止し、ロシアからの巨額の経済支援を受けましたが、これに反対する大規模なデモが起こりました。

2014年ヤヌコーヴィチ政権崩壊とクリミア危機

2014年1月、デモ隊と警察の衝突が激化し、2月には多数の死者が出ました。ヤヌコーヴィチ大統領は野党と危機回避の合意文書に署名しましたが、最高会議は大統領弾劾法案を可決、ヤヌコーヴィチ政権は崩壊しました。これにより、ウクライナは東西分裂の危機に直面しました。最高会議は、ロシア語の公用語法を撤廃し、ウクライナ語のみを公用語としましたが、東部住民やロシアからの反発が高まりました。ロシアは、ウクライナへの経済支援を凍結した一方で、ウクライナの新体制に疑問を呈しました。また、ロシアは国境付近で軍事演習を開始し、クリミア半島での親露派デモも拡大しました。

2月27日、クリミア自治共和国議会は、ウクライナへの帰属を問う住民投票の実施を決定し、ロシア系武装集団が空港を占拠しました。3月1日、ロシアのプーチン大統領は、クリミア半島への軍事介入を議会上院に提案し、承認されました。国連安保理では、ロシアの介入を巡り激しい応酬が繰り広げられました。ウクライナは総動員令を発令し、アメリカやEUに支援を求めました。

ロシア軍はウクライナ軍に投降を呼びかけましたが、ウクライナは拒否しました。クリミア自治共和国最高会議は、ロシアへの編入を問う住民投票を前倒しで実施することを決定し、ロシアへの編入を求める決議を行いました。3月16日、住民投票の結果、圧倒的な賛成多数でクリミアはロシアに編入されることになりました。

2022年 ロシアのウクライナ 侵攻

2021年11月頃から、ロシアはウクライナ国境付近に大規模な軍隊を集結させ、緊張が高まりました。ウクライナ国防相は、ロシアが2022年1月にも軍事侵攻を計画している可能性があるとしました。アメリカのバイデン大統領はロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナ侵攻に踏み切れば、経済的代償を払うことになると警告しました。ロシアの行動の背景には、ウクライナのNATO加盟構想への反発がありました。

2022年2月21日、ロシアは「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認しました。2月22日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの国交断絶を検討すると述べました。2月24日、ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始し、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの断交を発表しました。ウクライナは総動員令を発令し、18歳から60歳までの男性が国外へ出ることを禁止しました。

2月27日、ウクライナはロシアを国際司法裁判所に提訴し、ロシアの軍事行動の即時停止を求めました。3月16日、ICJはウクライナの要請をほぼ認め、ウクライナでの軍事行動を即時停止することなどを命じる暫定措置命令を下しましたが、ロシアはこれを拒否しています。

外交使節

在ウクライナ ロシア大使

レオニード・ヤコヴレヴィチ・スモリャコフ（1992～1996年）
ユーリー・ヴラディーミロヴィチ・ドゥビニン（1996～1999年）
イヴァン・パヴロヴィチ・アボイモフ（1999～2001年）
ヴィクトル・チェルノムイルジン（2001～2009年）
（臨時代理大使）フセヴォロド・ヴラディーミロヴィチ・ロスクトフ（2009年）
ミハイル・ユーリエヴィチ・ズラボフ（2009～2016年）
（臨時代理大使）セルゲイ・ルヴォヴィチ・トロポフ（2016年）
（臨時代理大使）アレクサンドル・ペトロヴィッチ・ルカシック（2016～2022年）

在ロシア ウクライナ大使

（情報は省略）

外部リンク

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