エドアブラザメ

エドアブラザメについて

エドアブラザメ（江戸油鮫、学名: Heptranchias perlo）は、サメの仲間の中でも特異な存在です。カグラザメ目カグラザメ科に位置付けられており、エドアブラザメ属はこの一種だけからなります。その特徴的な点は、世界の深海に生息し、7対の鰓裂を持つ珍しいサメの一つであることです。この鰓裂の構造は、エドアブラザメとエビスザメの2種類のみが持ち合わせており、非常に独特です。

生息地域と分布

エドアブラザメは、北東太平洋を除く世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布しています。具体的には、西大西洋では北カロライナ州からメキシコ湾、キューバ、さらにはベネズエラからアルゼンチンまで見られます。東大西洋では地中海を含むモロッコからナミビアにかけて分布しており、インド洋ではインド南西部沖やアルダブラ環礁、モザンビーク南部、南アフリカといった場所で見つかります。また、太平洋では日本から中国、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、チリ北部にまで確認されているのです。2019年にはイタリアの海岸で死骸が報告されたこともあります。

このサメは主に水深300から600メートルの底魚やその近くに生息しつつ、時には水面近くやさらに深い1,000メートルでも観察されることがあります。大陸棚や大陸斜面の上部に多く見られ、海山の周りにも集まることがあります。

形態

エドアブラザメは通常全長60から120センチメートルで、最大で1.4メートルに達することがある小型のサメです。体は細長く紡錘形で、狭く尖った頭部が特徴的です。目は非常に大きく、活きた個体では緑色に輝きます。口は狭く湾曲しており、上顎には9から11本、下顎には5本の歯があります。上顎の歯は細く鉤状で、下顎の歯は幅広い櫛状であるという独特の形状です。また、エドアブラザメの特徴的な点として、7対の鰓裂があります。第一鰓裂は最大で、後の鰓裂は次第に小さくなります。

背鰭は小さな一基のみ腹鰭の後方に位置し、前縁は直線的で、先端は丸みを帯びています。胸鰭は小さいですが、外縁がわずかに凸状になっています。臀鰭も小さく、ほぼ直線的です。尾柄は長く、背鰭の起点から尾鰭までの距離は背鰭基部の2倍以上に達します。尾鰭は上葉が長く、欠刻状の形をしています。

体の色は、背面が濃い灰色または灰褐色で、腹側は白いです。また個体によっては、体に暗い斑点や、ヒレの後縁が明るいものもあります。幼魚は暗色の斑点があり、背鰭や尾鰭には黒色の斑点が見られます。

生態

エドアブラザメは比較的小型ですが、エコシステム内では頂点捕食者として重要な役割を果たしています。特に大西洋東部においては、主に硬骨魚類や頭足類を捕食しており、小型の軟骨魚類を食べることもあると言われています。チュニジア沖では、甲殻類が主要な獲物の一つとなっています。また、オーストラリア沖では主に硬骨魚類を補食し、小型の個体はソコダラ科を、大型の個体はクロタチカマスやタチウオ科を好んで食べます。

このサメは非常に活発で、夜行性の一面も持っていますが、他の大型サメに捕食されることもあるため、警戒心も持ち合わせています。エドアブラザメには、アニサキスや線虫、条虫などの寄生虫が確認されており、健康管理も必要です。

繁殖は卵胎生であり、定期的な繁殖期はなく、雌は9から20尾の仔を出産します。出生時にはおおよそ26センチメートルの長さです。また、雄は75から85センチメートル、雌は90から100センチメートルで成熟するとされています。

人間との関わり

エドアブラザメは、その小型性と深海に生息する特性から、人に対し無害であると考えられています。しかし時折、深海漁業において延縄やトロール網で偶然に捕獲されることがあります。魚粉や肝油の原料として利用されることがありますが、肉質が良いとされる一方で、弱い毒性があるため、食用にはあまりされません。捕獲された際には活発に噛みつこうとしますが、その小ささから人間に脅威を与えることはありません。日本では時折飼育されることもあり、例えば静岡県の水族館では過去にも捕獲され飼育された記録があります。

保全状況

エドアブラザメは繁殖能力の遅さから、持続的な深海漁業が行われている地域では個体数が減少している可能性が示唆されています。そのため、国際自然保護連合によって近危急種と評価されています。ニュージーランドでは、近海の生息状況が「危険」とされており、他の地域では比較的安全と見なされています。これらを踏まえ、持続可能な漁業と生息環境の保護が求められています。

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