オートギヤシフト

オートギヤシフト（AGS）について

オートギヤシフト（AGS）は、スズキが開発した自動車用の有段自動変速機であり、手動変速機（MT）の操作を自動化する技術を取り入れています。このトランスミッションは、運転手がクラッチ操作や変速操作を行う必要がなく、オートメイテッドマニュアルトランスミッション（AMT）と呼ばれています。

基本構造と機能

AGSの基本構造はシングルクラッチのマニュアルトランスミッションですが、クラッチの制御や変速は電動油圧式アクチュエーターによって行われます。これにより、運転者は基本的に運転に集中できるため、オートマチック限定免許でも運転が可能です。また、AGSはオートマチックトランスミッション（AT）や無段変速機（CVT）のように、駐車場でのクリープ機能を持ち、基本的な操作方法はATやCVTに似ています。

AGSは、インド市場向けに発表されたスズキ・セレリオに初めて搭載され、その後、日本国内では軽トラックのキャリイに導入されました。このトランスミッションは、スズキの軽自動車やコンパクトカーに積極的に搭載され、近年ではストロングハイブリッド車の駆動システムとしても使用されています。

製造と導入の歴史

2015年には、マニエッティ・マレリとスズキが合弁会社を設立し、インドでAGSの製造工場を建設しました。日本国内では、2018年時点で最大9車種に搭載されていましたが、2020年代に入ると搭載車種は減少傾向にあり、最終的に2025年にはカタログから姿を消すこととなりました。

利点と欠点

AGSの最大の利点は、コンピュータで制御された電動油圧式アクチュエーターによって、シフトチェンジやクラッチ操作が自動で行われることです。これにより、運転手はMT車でよく起こるエンジンの空ぶかしやガソリン消費を抑えることができます。また、トルクコンバータ式のATとは異なり、クラッチを介して動力を伝えるため、伝達損失が少なく、結果的に燃費が向上することが期待されます。

一方で、AGSにはいくつかの欠点も存在します。例えば、変速ショックが大きく、運転に慣れないとギクシャクすることがあると報告されています。また、急発進する場合や、ギアがうまく入らないこと、作動油が無交換指定で故障時には高額なASSY交換が必要になるなどの問題があります。こうした変速ショックへの対応として、2速発進モードを備えたモデルも存在します。

採用車種の一覧

AGSが搭載された車種は、以下の通りです。

• - スズキ・セレリオ（2014年 - 現在）
• - スズキ・キャリイ（2014年 - 2022年）
• - スズキ・アルト（2014年 - 2021年）
• - スズキ・エブリイ（2015年 - 2024年）
• - 三菱・ミニキャブ（2015年 - 2019年）
• - 日産・NV100クリッパー（2015年 - 2024年）
• - マツダ・スクラム（2015年 - 2024年）
• - マルチスズキ・ワゴンR/スティングレー（2015年 - 現在）
• - スズキ・ソリオ（2016年 - 2020年、2022年 - 2025年）
• - 三菱・デリカD:2（2016年 - 2020年）
• - スズキ・イグニス（2016年 - 現在）
• - スズキ・スイフト（2017年 - 現在）
• - スズキ・エスプレッソ（2019年 - 現在）
• - スズキ・バレーノ（2022年 - 現在）
• - スズキ・ビターラ（2022年 - 現在）

このようにオートギヤシフトは、運転の楽しさと便利さを融合させた革新的なトランスミッション技術として、多くの車種に採用されています。

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