カスピ海沿岸低地

カスピ海沿岸低地

カスピ海沿岸低地は、カスピ海北岸一帯に広がる広大な低地です。その面積は約20万平方キロメートルに及び、日本の本州とほぼ同じ広さです。

概要

この低地は、ロシアとカザフスタンにまたがって広がっています。平坦な地形が特徴ですが、所々に台地も見られます。主要都市であるロシアのアストラハンやカザフスタンのアティラウは、これらの台地上に位置しています。

年間降水量が300mmに満たない乾燥した気候のため、洪水は稀です。カスピ海の海面は-28mで、湖岸から100～200km以内は海面下となっています。最も低い地点は-130mに達します。水捌けが悪いため、塩分が堆積し、岩塩層を形成しています。また、石油や天然ガスなどの資源も豊富に埋蔵されています。

気候

気候は地域によって差があり、1月の平均気温は北部で-14℃、南部で-8℃です。7月の平均気温はそれぞれ22℃、24℃となっています。年間の降水量は150～300mm程度です。

風土

この地域は、過去に地球が温暖化するたびに何度も湖底になった歴史があり、砂や粘土の堆積物が豊富に見られます。

沿岸部

ヴォルガ川とウラル川の三角州地帯には湿地が広がっており、特にヴォルガ・デルタは重要な生態系を形成しています。主な植生は、セイヨウシロヤナギやセイヨウタチヤナギの河畔林、スゲ類が生えるタマリクス・ラモシッシマとオオナワシロイチゴの低木林、そしてヨシとホソバヒメガマが優占種のヨシ原などです。

この地域は、ハスの生息の北限としても知られており、ニシハイイロペリカン、アオサギ、ダイサギ、コブハクチョウ、マガモ、シマアジなど、多くの水鳥にとって重要な繁殖地、越冬地、中継地となっています。ヴォルガ・デルタ一帯は1976年にラムサール条約登録地となり、1984年にはユネスコの生物圏保護区に指定されました。カザフスタンのウラル・デルタと周辺のカスピ海岸も、2009年にラムサール条約登録地となっています。また、河口よりやや上流部のヴォルガ川とアフトゥバ川に挟まれる氾濫原には、草地やヨーロッパナラなどのオークの樹林があり、2011年にユネスコの生物圏保護区に指定されています。

東部地域

東部地域は、5～6月に吹く「スホベイ」という熱風の影響で、特に乾燥が著しい地域です。低地に流れ込む小さな川は途中で涸れてしまうことが多く、水に含まれる僅かな塩分が濃縮し、土地が塩化しています。そのため、アシ原が広がる以外には特筆すべき植物群は見られません。放牧も行われていますが、生産性は高くありません。工業は、エンバ川流域での石油の産出と、バスクンチャク湖やエリトン湖などの塩湖での食塩採取が主に行われています。バスクンチャク湖を中心としたボグド・バスクンチャク自然保護区一帯は、2021年にユネスコの生物圏保護区に指定されました。

西部地域

カルムイク共和国のマヌィチ・グジロ湖を含む地域には、草原と養魚池が広がっており、ニシハイイロペリカン、カリガネ、アオガン、カオジロオタテガモ、サイガなどの動物が生息しています。この地域は「黒い土地自然保護区」を形成していましたが、かつてユネスコの生物圏保護区に指定されたものの、2021年に登録が撤回されました。

ウラル川、ヴォルガ川、テレク川などの大河が流れており、豊富な水資源を利用して果樹や野菜などの栽培が盛んに行われています。また、人口も比較的多い地域です。

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