カピュス

カピュスについて

カピュス（古希: Κάπυς, Kapys, ラテン語: Capys）は、ギリシア神話に登場する複数の人物の名前です。主に以下の3つの異なる人物が知られています。

1. アッサラコスの子のカピュス
2. アイネイアースの部下のカピュス
3. アイネイアースの子孫のカピュス

以下にそれぞれのカピュスについて詳しく解説します。

1. アッサラコスの子のカピュス

このカピュスは、トロイア王トロースの息子であるアッサラコスと、河神シモエイスの娘ヒエロムネーメーの間に生まれました。彼は、イーロスの娘テミステーとの間にアンキーセースをもうけ、アンキーセースはアプロディーテーとの間にアイネイアースをもうけました。また、一説には、トロイアの神官ラーオコオーンの父であるとも伝えられています。このカピュスの存在は、トロイア王家の系譜において重要な位置を占めています。

2. アイネイアースの部下のカピュス

このカピュスは、トロイアの人であり、トロイア戦争において、ギリシア軍が残した木馬が罠であると見抜き、木馬をイーリオス（トロイア）に運び込むことに反対しました。しかし、他のトロイアの人々は彼の意見を聞き入れず、木馬を城内に運び込み、結果としてトロイアは陥落しました。その後、カピュスはアイネイアースに従ってイタリアに渡りましたが、ルトゥリー人の王トゥルヌスとの戦いで戦死しました。このカピュスの死は、トロイアの英雄たちの苦難を象徴する出来事の一つです。

また、カプアという地の名前は、このカピュスに由来すると伝えられています。カプアは古代ローマ時代の重要な都市であり、その名前の由来がトロイアの英雄の一人であるカピュスに結び付けられていることは興味深い事実です。

3. アイネイアースの子孫のカピュス

このカピュスは、アイネイアースの子孫であり、アルバ・ロンガの王アテュスの子です。彼はカペートゥスの父にあたります。古代ローマの歴史家ティトゥス・リーウィウスによると、アイネイアースの子アスカニオスから始まり、シルウィウス、アエネーイス・シルウィウス、ラティヌス・シルウィウス、アルバ、アテュスと続き、その後にカピュスが生まれたとされています。カピュスの子がカペートゥス、そしてティベリーヌスへと続く系譜は、ローマ建国の神話における重要な要素です。

まとめ

このように、ギリシア神話におけるカピュスという名前は、複数の異なる人物を指し示しています。トロイア王家の血筋、アイネイアースの部下、そしてその子孫という、それぞれのカピュスは、神話の中で異なる役割を担い、物語に深みを与えています。特に、アイネイアースの部下であるカピュスが木馬の罠を見抜いたにも関わらず、その意見が受け入れられなかったエピソードは、神話における悲劇的な側面を浮き彫りにしています。また、アイネイアースの子孫であるカピュスは、ローマの建国神話において重要な役割を果たしており、その系譜はローマの歴史を語る上で欠かせない要素となっています。

これらのカピュスたちの物語を通して、ギリシア神話の多層性と複雑さを垣間見ることができます。彼らはそれぞれ異なる時代と場所で活躍しましたが、その名前は神話の中で永遠に語り継がれています。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
ウェルギリウス『アエネーイス』岡道男・高橋宏幸訳、京都大学学術出版会（2001年）
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照夫訳、講談社学術文庫（2005年）
ホメロス『イリアス（上・下）』松平千秋訳、岩波文庫（1992年）
リーウィウス『ローマ建国史（上）』鈴木一州訳、岩波文庫（2007年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

関連項目

* カペス

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