カホクザンショウ

カホクザンショウ（花椒）詳解

概要

カホクザンショウ（学名: Zanthoxylum bungeanum、英名: Sichuan pepper）は、中国原産のミカン科サンショウ属に分類される落葉低木です。日本産のサンショウとは近縁種ながら別種で、独特の痺れる辛さが特徴です。中国では古くから香辛料や生薬として利用され、特に四川料理において欠かせない存在となっています。本記事では、カホクザンショウの歴史、特徴、利用方法、薬効、そして文化的な側面までを詳細に解説します。

名称と歴史

一般的に「花椒」と呼ばれ、これは熟した実が花のように見えることに由来します。日本語では「はなしょう」または「かしょう」と読みます。中国語読みは[xwátɕjɑ́u]（拼音: huājiāo）で、「ホアジャオ」とも呼ばれます。「四川赤山椒」「四川山椒」「中国山椒」「中華山椒」といった呼び方もあります。

歴史を遡ると、漢代の『爾雅』には「檓（き）」や「大椒」の古名が見られます。前[[漢]]の医書にも薬用として記載されており、後[[漢]]代の『神農本草経』には「秦椒」や「蜀椒」の名で登場します。『本草綱目』には、秦嶺山脈を原産地とする「秦椒」と「蜀椒」が記載され、産地名を冠した様々な呼び名が紹介されています。これらの呼び名は、地域差による名称や品種の差異を示唆している可能性があり、現代の「秦椒」はトウガラシを指す場合もあります。

形態と特徴

カホクザンショウは雌雄同体で、樹高は約7メートルに達します。枝には鋭い棘が2本ずつ対になって生えています。葉は奇数羽状複葉で、5～11対の小葉から構成されます。花は黄緑色で、直径4～5ミリメートルほどです。果実は直径4ミリメートル程度で、最初は緑色ですが、7～10月頃に赤く熟し、裂開して黒い種子がこぼれ落ちます。サンショウ属の植物はアゲハチョウの幼虫の食害を受けることがあるため、栽培には注意が必要です。

分布と栽培

カホクザンショウは東アジア原産で、中国では黒竜江省から広西チワン族自治区まで広く分布しています。主産地は四川省、河北省、山西省、陝西省、甘粛省、河南省などです。近年では、日本の山口県や大阪府泉佐野市でも栽培が試みられています。

同属異種

サンショウ(Zanthoxylum piperitum)は日本原産で、カホクザンショウと近縁です。他にフユザンショウ、イヌザンショウ、ツルザンショウなど多くの同属異種が存在し、中には果皮が香辛料として利用されるものもあります。イヌザンショウの果実は「青椒」「青花椒」と呼ばれ、薬用にも使われます。

利用方法

食用: カホクザンショウの果皮は、爽やかな香りや痺れるような辛味を持つ香辛料として、四川料理、貴州料理、雲南料理、西北料理などで広く利用されています。麻婆豆腐や担担麺などの代表的な四川料理は、花椒の痺れる辛さと唐辛子の辛さの組み合わせが特徴です。花椒の乾燥粉末や花椒油が料理に使われ、花椒塩や五香粉といった調味料にも加工されます。「怪味」と呼ばれる複雑な風味のタレにも花椒は欠かせません。

薬用: 花椒の果皮は生薬として「花椒」「椒紅」と呼ばれ、健胃、鎮痛、駆虫作用があるとされています。大建中湯や烏梅丸などの漢方薬にも配合されます。種子も「椒目」と呼ばれ、水腫や子宮出血などの治療に使われてきました。ただし、日本薬局方ではサンショウの果皮のみを山椒として規定しており、カホクザンショウは使用できません。

文化

中国では古くから花椒の実は子孫繁栄の象徴とされ、『詩経』や『西都賦』などにも記述が見られます。「椒房」は皇后の部屋を指し、子孫繁栄の願いが込められています。

まとめ

カホクザンショウ（花椒）は、独特の辛味と香りを持つ香辛料であり、中国料理、特に四川料理に欠かせない存在です。長い歴史の中で、食文化や薬用、さらには文化的な象徴としても重要な役割を果たしてきました。その多様な利用方法や歴史的背景を理解することで、花椒の魅力をより深く知ることができるでしょう。

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