キナバル自然公園

キナバル自然公園：ボルネオ島の至宝

キナバル自然公園は、マレーシアのボルネオ島、サバ州に位置し、キナバル山を中心とした広大な山岳地帯を保護する目的で設立された自然公園です。その豊かな自然環境から、2000年にはユネスコの世界自然遺産に登録され、2023年にはユネスコ世界ジオパークにも指定されました。この公園は、多様な動植物が生息する貴重な場所であり、世界中から多くの観光客や研究者が訪れています。

キナバルの名の由来

「キナバル」という名前は、マレー語の「キナ（Kina）」が「中国」、「バル（Balu）」が「寡婦（未亡人）」を意味するとされています。この名前には、中国人の男と先住民の寡婦に関する伝説がいくつか残されています。また、先住民カダザン・ドゥスン族の言葉で「死者の聖地」を意味する「アキ・ナバアル（Aki Nabalu）」が転訛したという説もあります。

多様な生態系

ボルネオ島のジャングルは、世界最古の熱帯雨林の一つであり、アマゾンやコンゴ盆地と並ぶ世界三大熱帯林の一つに数えられています。キナバル自然公園内には、特有の動植物が数多く生息しており、特に世界最大の花として知られるラフレシアや、食虫植物として有名なウツボカズラは必見です。公園内には、様々な標高に応じた多様な生態系が広がっています。

低地熱帯雨林：標高約1200メートルまで広がり、樹高50メートルにも達するフタバガキ林が見られます。ポーリン温泉もこのエリアに位置しています。
下部山地林：標高約1200-1800メートルに位置し、ブナ科やクスノキ科の樹木が多く見られます。公園本部周辺の樹木は、約20メートルほどの高さです。
上部山地林：標高約1800-2700メートルに広がる雲霧林で、コケやシダ、ランなどの着生植物が繁茂しています。
亜高山帯林：標高約2700-3500メートルに位置し、蛇紋岩地帯にはフトモモ科やマキ科などの低木が見られます。
高山帯：標高3500メートル以上で、森林限界を超え、花崗岩が露出しています。植生は少なく、小低木や草本類が岩盤の間隙に生えています。

気象と地質

キナバル自然公園の年間降水量は標高によって異なりますが、公園本部付近では平均2380ミリメートルから2700ミリメートルとされています。雨量は10月から1月にかけて多く、2月から5月にかけて少なくなります。公園本部の月平均気温は約20度で、昼夜の気温差は7-9度程度です。キナバル山頂部では気温が4度まで下がり、稀に降雪することもあります。

キナバル山は、約1500万年前にマグマの貫入によって形成された花崗岩が、約100万年前に隆起したものです。山頂部には、最終氷期の氷冠による氷食地形が見られます。

動植物の宝庫

キナバル自然公園は、動植物の多様性の宝庫です。維管束植物は推定5000-6000種が自生し、ランは約700種、シダ類は621種に及びます。また、シャクナゲ類、イチジク類、ヤシ類、ブナ科の樹木も多種多様です。

ウツボカズラは、固有種であるオオウツボカズラ、ビロードウツボ、ヒョウモンウツボなどが自生しており、キナバルウツボカズラはビロードウツボとオオウツボカズラの自然交雑種です。ラフレシアは、ケーシーラフレシアとプリセイラフレシアの2種が確認されています。

鳥類は約300種が確認されており、アカガシラシャコなどの固有種も生息しています。哺乳類は123種が記録されており、キナバル固有種としてクロジャコウネズミが生息しています。両生類はカエルが多く75種を数え、爬虫類は80種、昆虫はチョウが290種、アリが125種など、様々な動物が生息しています。

歴史と保護活動

キナバル山は、1851年にイギリスの博物学者ヒュー・ローによって初めて登山が記録されました。その後、1961年の調査結果を踏まえ、1962年にサバ国立公園の条例が可決され、1964年に州立公園として指定されました。

その後、公園面積の増減を経て、1984年には75,370ヘクタールとなり、ASEAN遺産公園に指定されました。2000年にはユネスコの世界遺産に登録され、現在はサバ州公園局によって管理されています。

近年の保護活動では、キナバル国立公園とクロッカー山脈国立公園の生態系を繋ぐ「キナバル・エコリンク」事業が進められており、分断された森林を再生させることで、生態系の連結を目指しています。

利用案内

キナバル自然公園は、公園本部、ポーリン温泉、マシラウなどの施設があり、登山やトレッキング、自然観察など様々なアクティビティが楽しめます。公園内の宿泊施設は、民間企業のステラサンクチュアリロッジが運営しています。なお、マシラウの施設と登山路は、2015年のサバ地震による災害以降閉鎖されています。

世界遺産としての価値

キナバル自然公園は、以下の世界遺産の登録基準を満たしています。

(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であること。
* (10) 生物多様性の本来的保全にとって、最も重要かつ意義深い自然生息地を含んでいること。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれること。

キナバル自然公園は、その多様な生態系と貴重な動植物、そして豊かな自然環境から、世界的に重要な自然保護区であり、訪れる人々を魅了し続けています。1000文字以上1400文字程度。

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