クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウス

クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウス（紀元前130年頃 - 紀元前63年）は、共和政ローマの軍人、政治家であり、カエキリウス・メテッルス家という、当時最も有力なプレブス（平民）の家柄の出身でした。紀元前80年には執政官を務め、さらに最高神祇官にも就任しています。

生涯

ピウスは紀元前109年に始まったユグルタ戦争において、当時の執政官であった父に従い、ユグルタ王との戦いに参加しました。しかし、父と配下の武将であったガイウス・マリウスとの間に確執が生じます。紀元前108年、マリウスはローマへ帰還し執政官に当選、ユグルタ戦争の司令官としてヌミディアへ遠征します。その一方で、ピウスの父は戦争長期化の責任を問われ、更迭されることとなりました。

その後、ローマでは閥族派と民衆派の対立が激化し、閥族派に属していた父は、民衆派のリーダーであったマリウスと対立、紀元前102年にはローマから追放されてしまいます。ピウスは父のローマ帰還を人々に訴え続け、紀元前99年、その努力が実り父は帰還を果たすことができました。ピウスという尊称は、この時の彼の行動を称えて贈られたものです。

紀元前89年、ピウスは法務官に就任し、同盟市戦争で一軍を率いました。しかし、紀元前87年、スッラとの政争に敗れたマリウスがローマを占拠すると、ピウスはアフリカへ亡命します。後にマルクス・リキニウス・クラッススも合流しますが、ピウスは彼とも仲たがいし、アフリカからも離れることになります。マリウスの死後、紀元前83年に第一次ミトリダテス戦争から帰還したスッラに合流、翌紀元前82年のスッラのローマ帰還に尽力しました。スッラ政権下では、紀元前81年に最高神祇官に就任、紀元前80年にはスッラと共に執政官に当選しています。

スッラの死後、ピウスは民衆派の残党征伐のためヒスパニアへ向かい、クィントゥス・セルトリウスが起こした反乱の鎮圧にグナエウス・ポンペイウスと共に当たりました。紀元前72年にセルトリウスが部下に暗殺されたため、翌紀元前71年にローマへ帰還、紀元前63年に死去しました。死後、最高神祇官の職はガイウス・ユリウス・カエサルが引き継ぎました。

家族

ピウスはクィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ヌミディクスの息子であり、クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウス・スキピオ・ナシカを養子に迎えました。ルキウス・コルネリウス・スッラの妻カエキリアや、政治家・美食家として知られるルキウス・リキニウス・ルクッルスは従兄弟にあたります。

ルキウス・リキニウス・クラッススの娘リキニアと結婚しましたが、子供に恵まれなかったため、スキピオ家からスキピオ・ナシカを養子に迎えました。スキピオの父プブリウスとピウスは又従兄弟の関係にあり、母リキニアがクラッススの娘であったため、スキピオはピウスの甥にもあたります。

大おじ：クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・マケドニクス
いとこおば：プブリウス・コルネリウス・スキピオ・ナシカ・セラピオ (紀元前111年の執政官)の妻、養子の祖母
祖父：ルキウス・カエキリウス・メテッルス・カルウス、紀元前142年のコンスル
父：クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ヌミディクス
養子：クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウス・スキピオ・ナシカ
おじ：ルキウス・カエキリウス・メテッルス・ダルマティクス
従姉妹：カエキリア・メテッラ・ダルマティカ
従姉妹の婿：ルキウス・コルネリウス・スッラ
おば：カエキリア・メテッラ・カルウァ
従兄弟：ルキウス・リキニウス・ルクッルス

参考文献

フィリップ・マティザック著、本村凌二監修、東眞理子訳『古代ローマ歴代誌』創元社、2004年。

関連項目

共和政ローマ執政官一覧
* メデジン（南米・コロンビアの都市。クィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ピウスのメテッルスにちなんで命名）

もう一度検索