クィントゥス・ポンペイウス・ルフス

クィントゥス・ポンペイウス・ルフス：共和政ローマの政治家

クィントゥス・ポンペイウス・ルフス（ラテン語: Quintus Pompeius Rufus、生年不詳 - 紀元前88年）は、共和政ローマ後期に活躍した政務官であり、紀元前88年には執政官（コンスル）を務めました。彼の生涯は、当時のローマ社会における政治的変動と深く関わっています。

出自

ルフスは、プレプス（平民）であるポンペイウス氏族の出身です。この氏族が歴史に登場するのは紀元前2世紀になってからであり、ポンペイウスという名前はカンパニア地方の都市ポンペイに由来すると考えられていますが、氏族と都市との直接的な関係は明確ではありません。

ポンペイウス氏族から最初の執政官が出たのは、紀元前141年のクィントゥス・ポンペイウスの時代です。キケロによれば、ポンペイウス家は「取るに足りない、あまり知られていない家系」であり、彼は先祖の功績に頼ることができませんでした。彼の父親がフルート奏者であったという噂もあり、典型的なノウス・ホモ（新参者）でした。

カピトリヌスのファスティによると、ルフスの父と祖父の名前はそれぞれクィントゥスとアウルスであり、紀元前141年の執政官クィントゥスが彼の父親である可能性があります。もしそうであれば、ルフスには妹がおり、その息子が「クァエストル（財務官）で死んだ」ガイウス・シキニウスであると考えられます。また、紀元前102年の護民官アウルス・ポンペイウスも親戚かもしれません。

さらに遠い親戚には、紀元前89年の執政官グナエウス・ポンペイウス・ストラボがおり、その息子が、ガイウス・ユリウス・カエサルやマルクス・リキニウス・クラッススと第一回三頭政治を行ったグナエウス・ポンペイウス・マグヌス（ポンペイウス）です。

経歴

早期の経歴

ルフスが最初に記録に登場するのは、紀元前100年末のことです。当時、ローマでは元老院とエクィテス（騎士階級）が、ポプラレス（民衆派）の護民官ルキウス・アップレイウス・サトゥルニヌスに対抗していました。サトゥルニヌスは反乱を起こし、殺害されます。オロシウスによれば、護民官カトとポンペイウスが、サトゥルニヌスによって追放されていたクィントゥス・カエキリウス・メテッルス・ヌミディクスの追放を解除する法案を提出しました。このポンペイウスはルフスであると考えられています。

この提案は元老院議員から支持を受けましたが、護民官プブリウス・フリウスの反対により実現しませんでした。プルタルコスとオロシウスは、フリウスの背後にガイウス・マリウス（大マリウス）がいたとしています。最終的にヌミディクスはローマに戻ることができましたが、ルフスはオプティマテス（門閥派）と見なされるようになりました。

紀元前91年、ルフスはプラエトル（法務官）に就任し、最も位が高いとされるプラエトル・ウルバヌス（首都担当法務官）を務めました。彼は護民官マルクス・リウィウス・ドルススの改革を支持し、騎士階級の権力強化に対抗しました。しかし、この改革は強い抵抗に遭い、ドルスス自身も殺害されました。ルフスは首都担当法務官として、悪行を重ねていたクィントゥス・ファビウス・マクシムス・アッロブロギクスの息子に対して、父親の財産を使うことを禁じました。

執政官就任

紀元前89年末の執政官選挙に、ルフスは立候補しました。当時、ローマはポントス王ミトリダテス6世との戦争（第一次ミトリダテス戦争）を始めており、紀元前88年の執政官の一人がその指揮を執ることになっていたため、選挙は激戦となりました。ルフスは同盟市戦争で活躍し、カエキリウス・メテッルス家の支援を得て、スッラと組んで選挙に臨みました。両者の関係を強化するため、ルフスの息子とスッラの娘が結婚しました。

選挙には、現役執政官のグナエウス・ポンペイウス・ストラボや、既に6回執政官を務めたガイウス・マリウスも立候補したとされています。しかし、ストラボの立候補は誤りである可能性があり、マリウスについても見解が分かれています。他の立候補者にはガイウス・ユリウス・カエサル・ストラボ・ウォピスクスがいましたが、護民官プブリウス・スルキピウスとプブリウス・アンティスティウスが、法務官の経験なしに執政官になることは認められないとして、彼の立候補に反対しました。結局、スッラとルフスが当選しました。

ローマ内戦

執政官就任後、ミトリダテスとの戦争はスッラが担当することとなり、ルフスはローマに残りました。しかし、スルキピウスが提案した法案に両執政官が反対したことから、対立が始まりました。スルキピウスは、追放された人々の帰還、元老院からの追放、同盟市戦争で新ローマ市民となったイタリア人を全てのトリブスへ登録すること、を立法化しようとしました。ポンペイとスッラはこれに強く反対し、暴動が発生しました。ルフスの息子が殺害され、ルフスとスッラはフォルムから脱出しました。その後、スッラは軍を率いてローマに進軍し、ルフスもこれに加わりました。市街戦の結果、スッラとルフスが勝利し、マリウスとスルキピウスはローマから逃亡しました。

最期

ローマ占領後、プロコンスル（前執政官）としてイタリア北部にいたグナエウス・ポンペイウス・ストラボが解任され、その軍をルフスが引き継ぐことになりました。しかし、ルフスは到着したその日に兵士に殺害されてしまいました。ストラボは誰も罰せず、指揮権を継続しました。この事件には、ストラボがルフスの殺害を組織したという説があります。

子孫

ルフスの息子はスッラの娘と結婚しましたが、父の存命中に殺害されました。しかし、この結婚で男子一人と女子一人が生まれています。息子クィントゥスは紀元前52年に護民官を務めました。娘ポンペイア・スッラはカエサルの二番目の妻となりました。

評価

キケロはルフスを「二流の弁論家」と評しています。歴史学においては、ストラボの取るに足らない親戚程度の人物として扱われることが多いようです。

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