クナーファ

クナーファとは

クナーファは、中東地域で広く愛されている伝統的なペイストリーです。その特徴は、小麦粉を原料とした細い麺状の生地にあります。この生地は、水と小麦粉を混ぜて作られ、網目状の型を通して熱した鉄板に押し出すことで成形されます。地域によっては「クナーフェ」「クナフェ」「ケナーフェ」などとも呼ばれます。

さまざまなクナーファ

クナーファは、その地域や文化によって様々なバリエーションが存在します。基本的には、クナーファ生地でチーズ、ナッツ（クルミやアーモンド）、濃厚なクリーム（カイマクなど）を挟んだり包んだりして焼き上げ、シロップをかけて食べます。

形状も2種類あり、クナーファ生地でフィリングを挟んだものと、クナーファ生地でフィリングを巻いたものがあります。前者は、大きな浅いトレーで調理されることが一般的です。また、チーズやクリームを使ったクナーファは温かい状態で、ナッツを使ったものは冷やして食べることが推奨されています。

さらに、クナーファ生地を揚げたり焼いたりした後、蜂蜜をかけ、その上にクリームや刻んだナッツをトッピングしたものは「クナーファ・ビル・アッサル」と呼ばれます。レバノンでは、チーズのクナーファをゴマ付きのパンに挟んで朝食として食べることもあります。

クナーファの歴史

クナーファの起源はファーティマ朝に遡るとされています。13世紀半ばのアイユーブ朝時代末期には、アラビア語の料理書にもその記述が見られます。また、「千夜一夜物語」にも登場するなど、その歴史は非常に古いです。イスラム教のラマダーン期間中には、特に好まれるデザートとして、カターイフと共に広く知られています。

クナーファとカターイフは、かつて同じ生地を使い、鉄板で調理されていたため、名称が混同されることもあります。

各国でのクナーファ

クナーファは、地域によって様々な形や名前で親しまれています。

エジプト: ナッツやレーズンを加えたものや、カスタードクリーム、クリームを包んだクナーファがあります。
イラク: ナッツを巻いたものは「バクラヴァ・シャアリーヤ」、焼き色をつけないものは「バクラヴァ・バッルーリーヤ」と呼ばれ、チーズやクリームを挟んだものは「クナーファ」と呼ばれます。
モロッコ: 薄い生地でアーモンドとアーモンドミルクのソースを挟んだデザートを「ケネッファ」と呼びます。
トルコ: クナーファ生地を「カダユフ」と呼び、菓子クナーファは「キュネフェ」または「カダユフ・ドルマ」と呼ばれます。カダユフをパンで代用した「エクメク・カダユフ」というデザートも存在します。
ギリシャ: クナーファを「カタイフィ」と呼び、カスタードクリームやナッツを包んだものが一般的です。
ブルガリア: 生地も菓子も「カダイフ」と呼ばれ、ナッツを包んだものが親しまれています。
アルメニア: ナッツを包んだ菓子は「テル・カダイフ」または「クナフェ」、チーズを包んだ菓子は「バニロフ・テル・カダイフ」と呼ばれ、それぞれ異なるトッピングがされます。
フランス料理・イタリア料理: クナーファ生地を「カダイフ」と呼び、デザートだけでなく、魚や肉を包んで調理することもあります。

世界記録に挑戦したクナーファ

パレスチナでは、ナーブルスの名物として知られる「クナーファ・ナーブルシーヤ」が有名です。2009年には、このクナーファを使って、ギネス世界記録に挑戦しました。

日時: 2009年7月18日
場所: パレスチナ自治区ナーブルス
企画者: ムハンナド・アル・アラビ
動員数: 100,000人
サイズ: 幅105-110cm、長さ74m
重量: 1,765.011kg
材料: セモリナ粉700kg、ナーブルスチーズ600-700kg、乳脂肪分360kg、ローズウォーター、砂糖300-400kg、ピスタチオ40kg
製作人員: 170人の菓子職人
製作費用: $15,000（$30,000という説も）

この巨大なクナーファは、多くの人々の注目を集め、世界記録として認定されました。

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